何か

傾向ペン

第1話 題のまま

 ある朝、私のスマホが無くなった。


 目の前から消えてしまった。


 充電コードに刺さっていない、カバンの中にもない、布団の中にもない、食卓の上にも、洗面所にも、トイレにも。


 もちろん、昨日寝る前までは使っていた。動画を見たり、SNSをチェックしていた。だから、どこか外に置いてきたなんてことはない。自宅、いやこの部屋中にあるはずだ。


 どうしてだ。どこにある。絶対にあるはず。


 ベットの下を懐中電灯を使って、見てみる。思い切って、タンスも動かしてみた。でも、無い。


 困ったなぁー。不便だなぁ。これからどうしよう。どうすればいいんだ。


 とりあえず、友達や会社に連絡しておきたいが、スマホがないと番号が出てこない。というか、今日のニュースも、SNSもまだ見れていない。スマホがないと。


 どうしよう。自分はこれから何をするべきだ、いや、まずスマホを探さなければ。


 大変だ。一大事だーーー




 そうこうしているうちに、外から、市役所のアナウンスが聞こえてくる。

 『テレビもラジオも聞けていない方に情報をお伝えいたします。皆さん、落ち着いてください。どうやら、世界中から、“スマートフォン”が消えてしまったようですーーー』

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