第393話 お世話になったから…

現場から帰ると妻が全身に字を書いていて、耳だけそのままだった。

刺激しないよう平静を装いつつ「み、耳なし芳一の仮装?」と訊ねる。


いや、よく見れば書かれているのは最近発掘した古文書に記された供物の呪文じゃないか。

妻は微笑む。


「お世話になったから、耳だけは貴方にあげるわね」

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