第54話 穴の手

廃墟の波板に開いた穴。

ある日そこから手が生えているのを見た。

先輩も何度か目にしていたらしく、しかし怯えた様子なくあれは無害だと言う。

ただ、


「それにここは飛び降りの目撃例はあっても実際に死体が見つかった事ないんや、凄いやろ」


等と無邪気に続けたので、もうあの道は通らない。

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