敵が誰だかわからない?

じろー

第1話 あなたが誰だがわからない

「え?」

気がつくと辺りは真っ白な空間へと変わっていた。

目の前にはいかにも女神っぽい人がいた。

「あ、あのぉ...」

「おや、あなたが、佐藤大翔さんが選ばれし勇者ですか...ですよね?」

「いや、俺に聞かれても困ります。」

何だこの人は。

見た目が大体高校生くらい女性が急にそんなことを言ってきた。

「てゆうか、なんなんだよここは!俺どうしちゃったの?死んじゃったの?転生しちゃったの?それとあんたは誰なんだよ!」

「お、落ち着いてください!ここは選ばれし勇者が死後、神様の力によって運ばれてくる場所です。ですが...」

取り乱した俺を止めようとする少女は黙り込むと、

「あなたは死んでないのに運ばれてきちゃいましたね。」

「...は?」


この子が言うには、普通は神様が若くして死んでしまった者をここへ送って、女神がその勇者かどうか見極めるそうだが、俺は神様のミスで生きてたにも関わらず、ここへ連れられたと...。

「なめんな」

おかしいだろ。

現実世界では俺がどうなっているのかを聞くと、苦笑して何も言い返さずに異世界の説明を始めた。

「私があなたを送ろうとしている世界は魔王の手により、このままでは人類は滅んでしまうのです。実は1代目の魔王が前回の勇者によって倒されたのですが、2代目の魔王が現れたのです。しかもその魔王はなかなか頭が良く、前回の勇者がやられてしまったのです。なので新しい勇者を送り出し、魔王を倒すのを目標に頑張って欲しいと思い、神様が人間をここへ送り始めたのです。」

最初は驚いたけどなんだかワクワクしてきた。

とうとう俺も異世界転生か!

隠れオタクだからラノベでこういうのはよく読むけどまじで転生できちゃうとは...。

てことはチート能力も...?!

「ありません。」

「へ?」

「ありません。」

「チート能力がないってどういうことだよ!普通こういうのは魔剣とかチート能力とか色々貰えるやつだろ!」

「神様が面白いからって装備は与えないようにしてるんですよ...で、でも大丈夫です!あなたたち日本人は才能がある人が多いです。この世界は魔法でほぼなんでもできるので安心してください!」

ほんとに大丈夫なのか?

まぁいい、せっかくのチャンスだし行って損はないか。

「気になることが1つあるんだが、俺はその選ばれし勇者だったのか?」

「はい、私の見た感じそんな気がします!そろそろ時間がないので送らせてもらいますね。」

高校三年生にして初の異世界デビューか...。

「あ、ありがとうございます!」

「それでは、行ってらっしゃい!」

そうすると俺は、白い光に包まれ目を開けると、

「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!」

雲よりも高い位置に転送された。

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