7

 遠くから聞こえてくる激しい銃声。まるで豪雨が屋根を打ちつけるように止まることなく響いている。所々から火の手の上がる駐屯地。


 そこから少し離れた場所の森の中。一際高い木の枝の上から、駐屯地の様子を伺う朝顔達の姿があった。


「ふへっふへっふへっ、あのガトリング銃ではないか……」


 望遠鏡から目を離した夕顔が嬉しそうな顔をして言った。そして望遠鏡を朝顔へと渡す。


「ほう……ひいふうみいよ……いつむうななやぁ……ここのつに十!! 十人おるのぉ、ガトリング銃に重厚な鎧。それに剣を持つ者もおるわ。これは手強そうじゃ」


「ふへっふへっふへっ。クランの対狂戦士用部隊かのう……あの鎧では下手なナイフ等では弾かれてしまうて。ふへっ」


 艶のない漆黒の鎧に身を包む兵士達。その鎧はほぼ隙間なく、ナイフを滑り込ませるのも難しく思われる。しかし、その様な重厚な鎧ではあるが兵士達はストレスなくガトリング銃や剣を扱い、身軽に動き回っている。世界的にも高い技術力を持つクラン帝国だからなせる代物であろう。


「ふへっふへっふへっ。何じゃぁ、あのド派手な女は……全身桃色じゃ」


 何か珍しい者を見つけた様子で、ふへっふへっっと笑いだした夕顔の手から、望遠鏡を奪い取るようにして取った紫陽花が望遠鏡を覗き込む。


「真に桃色じゃぁ……戦場で目立つであろうに。しかも、身の丈よりも大きな斧を背負っとる。余程の自信があるのじゃろう」


 紫陽花は投げる様にして望遠鏡を返すと、枝の上にごろりと横になった。


「暇じゃ暇じゃ……どうじゃ、もう少し近寄ってみぬか?」


 横になった紫陽花が朝顔と夕顔へと提案する。それを聞いた朝顔は何か思いついたのか、にたりと笑い夕顔と紫陽花を手招きした。


「そうじゃのう……いい事を思いついたぞ」


「何じゃぁ、朝顔?」


「どうじゃ、暇潰しに競争せぬか?」


「ふへっ、競争とは?」


 夕顔と紫陽花が興味を示して来たことに満更でもない様子の朝顔が、二人の顔を見ながら話しを続ける。


「誰が一番、あの兵士共を殺れるかの競争じゃ」


「ふへっふへっふへっ。面白そうじゃ面白そうじゃ……その話しに乗ったぞ、主はどうじゃ?」


 夕顔に振られた紫陽花もにやりとさも嬉しそうな顔をして、「乗った」と一言いうとぺろりと唇を舐めた。


「ガトリング銃を持っておるのが四人。剣を持っとるのが六人。ガトリング銃を殺ったら二点、剣は一点じゃ……合計点数が高い者が勝ち……それで良いな?」


 朝顔の提案に無言で頷く二人。


「それじゃあのぉ……正々堂々と競技開始じゃっ!!」


 朝顔の掛け声と共に、三人がそれぞれの方向へと散開して行った。

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