09話.[いいはずなのに]
「大手くんのばかっ」
それは唐突だった。
十一月後半の寒い夜の中、これから南と合流して帰ろうとしていたときだった。
「な、なんで俺は罵倒されたんだ?」
「なんでってそんなのは単純だよっ、あれだけ私からのお礼を受け取ろうとしなかったのだって結局は南ちゃんがいてくれるからってことでしょ!?」
「仮にそれでも問題はないだろ? 隆明とはまだ付き合えていないようだけど順調に仲良くできているんだから」
まーだ言っているのかと流石に呆れた。
本命と仲良くできるとなったんだから気にしなくていいはずなのに。
「……迷惑だろうから言わなかったけど、私もっ――」
「まあ待て待て、隆明が来てるぞ」
もう言っても仕方がないことだ。
南もそんな隆明と歩いてきているところだったから久しぶりに四人で帰ることに。
「隆明、春原さんが不安になっているぞ」
「え、あー、ちょっと慎重になりすぎたところは確かにあるかもしれない」
「頼むぜ、そのせいで八つ当たりをされるのは――」
「八つ当たりじゃないよっ、悪いのは大手くんだからっ」
「ほらな? こんな感じになっているからさ」
これをどうにかできるのは隆明だけ。
俺がいまなにかを言ってもこの前みたいになるか、いまみたいになるだけ。
だから頑張ってもらうしかなかった。
「行広」
「分かった、南」
「うん」
「大手くん!」
もう一度隆明に頼むと言ってから別れる。
「よかったの?」
「ああ、隆明が相手をしてくれるから大丈夫だ」
もうそんなことはどうでもよかったんだと思わせてやってほしい。
普通に戻ったらまた話をしたり、みんなで遊びに行くのもいいかもしれないな。
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