第57話 お誕生日会です その2
お誕生日会も佳境に入ってきた。
酒が入ってますます盛り上がるユリ達お姉様方に、若干引き気味のエリスとカイの若人達という構図だ。しかもさっきから酒の肴とばかりに、二人を揶揄ってくる。
だからさっさと自分達のプレゼントを交換することにした。レディファーストということでエリスから。
「誕生日のプレゼントとしては相応しくないかも知れないけど...良かったら受け取って」
そう言ってエリスが取り出したのは、キレイにラッピングされた2本のナイフだった。
「エリス、これって...」
「ナイフが欲しいって前に言ってたでしょ?」
「言ってだけど、なぜに2本?」
「1本は獲物を倒す時に使う方で、もう1本は獲物を解体する時に使うんだって。どっちが良いか分かんないから、両方買ってきた」
「そ、そうなんだ...」
「ちなみに獲物を倒す方は、私とお揃いだからね」
「な、なるほど、嬉しいよ、ありがと...って、これって!?」
柄からナイフを引き出したカイは絶句した。
「も、もしかしてミスリルナイフ!?」
「そうだけど、どうかした?」
「どうかしたかもなにも...めっちゃ高いヤツじゃん!」
「大したことないわよ。気にしないで」
そう言われても...カイは後ろで「ヒューヒュー♪ 熱い熱い~♪」「愛されてるね~♪」などと騒ぐ酔っ払いのことを忘れてしまう程ビックリしていた。
これ1本で安い家が買えるくらいの金額だということを、きっとエリスは知らないに違いない。受け取っていいものか悩むところだが、ニコニコ笑ってるエリスをガッカリさせてしまうのも忍びない。
「あ、ありがとう、大切に使わせて貰うよ」
最終的には折れた。きっと勿体なくて使えないだろうなと思いながら...
「どういたしまして。喜んで貰えて良かったわ」
満面の笑みを浮かべるエリスに、これから自分が渡すプレゼントのことを思うと、カイは頭を抱えたくなった。なにせ魔獣の体から出てきた魔石だ。元手は全く掛かってない。渡すの止めようか? とも思ったが、期待に目を輝かせているエリスをガッカリさせる訳には...ええいままよ!
「え、エリス、良かったらこれを受け取ってくれる?」
さすがに石だけポンっと渡すのもアレなんで、キレイにラッピングした箱に入れてきた。
「開けていい?」
「と、どうぞ」
カイにとって、後ろで騒いでる酔っ払いどもの声が聞こえないくらい、緊張する一瞬だった。
「か、カイ、こ、これって!? 魔石!?」
「うん、この間仕留めた魔獣の体から出てきたんだよ。こんなもので申し訳ないけど、受け取って貰えたら嬉しいかな」
「いいえ、これは受け取れないわ」
「えぇ~! なんで!? やっぱり気に入らなかった!?」
「そうじゃなくて! カイ、あなたこの大きさの魔石がいくらするか知ってるの!?」
「へっ? い、いや? もしかして高いの?」
「高いなんてもんじゃないわよ! これ1個でちょっとしたお屋敷が建つ程なんだから! そんな高価なモノ受け取れないわよ!」
「えええっ~!」
カイの絶叫が響き渡った。
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