第55話 寄り道します

 魚の養殖場を後にしたエリスは、カイの背に乗って農場に帰るつもりだった。


 だが、牧場に差し掛かった時、


「カイ~! ちょっと牧場に寄っていかない?」


「クェッ!」


 エリスの急な提案で寄り道することになった。


「どうしたの急に?」


 牧場の手前に降りたカイが尋ねる。するとエリスは頬を染めながら、


「ゴメン...急に乳製品が食べたくなって...」


「なるほど、エリスらしいね。僕もちょうどお腹空いてたから行こうか」


 カイは破顔した。エリスも満面の笑みだ。


「あ、ありがとう~♪」



◇◇◇



「こんにちわ~!」


「は~い、どちら様...ってエリス様!? どうされましたか!?」


 応対に出て来てくれたのは、説明会に来てくれた牧場のオーナーだった。


「急にすいません。どうしても乳製品が食べたくなりまして...」


 するとオーナーはニッコリと微笑んで、


「そういうことなら、いつでも大歓迎ですよ。さあさあ、こちらへどうぞ」


「あ、ありがとうございます!」


 案内されたのは牛舎の隣の建物だった。


「ここは職員達の食堂になります。今、用意させますから、少々お待ち下さい」


「お忙しいところ、申し訳ないです...」


「とんでもありません。エリス様のためならなんでもしますよ」


「あははは...」


 エリスは恐縮しきりだ。自分の我が儘で振り回してしまって申し訳ないと思う限りである。


「お待たせしました。どうぞ召し上がれ」


 用意されたのは、絞り立ての牛乳、チーズ、ソーセージ、ヨーグルト、プリン、などなど。牧場気分を満喫できる食品ばかりである。


「「 いただきま~す! 」」


 二人は早速食べ始めた。


「「 美味しい~♪ 」」


 二人とも幸せそうな笑顔である。


「今、ステーキも焼いてますからね」


「お肉~♪」


 エリスが食い付いた。


「食後にはバニラアイスも用意してますよ」


「カイ、ここに住もうか!?」


「あははは!」


 場に笑い声が響いた。



◇◇◇



「そうですか、既にホテルと公衆浴場まで建ててしまわれるとは、さすがエリス様ですね! すると牧場までの遊歩道も?」


 食後、エリスは現状をオーナーに報告していた。


「はい、完成済みです。後でご覧になって下さい」


「分かりました。牧場見学ツアーが始まるのはいつ頃になりそうですか?」


「それはまだなんとも。決まり次第、すぐご連絡しますね」


「お待ちしております。そうだ! せっかくだから牧場の中をご案内しましょうか?」


「よろしいのですか? お邪魔では?」


「全然大丈夫です。さあ、参りましょう」


 こうして急遽、牧場見学が始まった。エリスとカイは初体験となる牛の乳搾りやチーズの製造工程の見学など、たっぷり楽しんで農場に帰った。お土産を沢山持って。

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