第54話 見学します

 翌日、エリスとカイは町長が昨日言っていた魚の養殖場を訪れていた。


「この街の近くにこんな場所があったなんて知らなかったわ」


 そこは牧場から更に山の方に向かった所で、ちょっとした湿地帯になっていた。


「地下から水が湧き出してるのかな?」


「えぇ、恐らくそうね。この近くに川も湖も無いから」


 すると養殖場の職員がやって来た。


「エリス様、ようこそお越し頂きました。町長から話は伺っています。私がここの所長を務めております」


「ご丁寧にありがとうございます。こちらはカイ、私の連れです。本日はよろしくお願いします」


「こちらこそよろしくお願いします。では早速、施設をご案内します」


 養殖場は3つの池に分かれていた。それぞれ間仕切りがされてある。所長はその内の1つを指差し、


「ここはある程度育った成魚を入れる池になります」


 見ると確かに結構な数の魚が泳いでいるのが確認出来た。


「そしてこちらが稚魚を入れる池になります」


 もう1つの池には成魚より小さ目の魚が泳いでいる。


「最後がまだ孵化していない卵を入れる池になります」


 良く見ないと分からないが、目を凝らすとぼんやり卵らしきモノが見える。 


「なるほど...良く分かりました。問題点は水の濾過装置ですね?」


 その言葉に所長は目を丸くした。


「驚きました...仰る通りです。何故お分かりになられました?」


「簡単なことです。成魚と稚魚の池と、卵の池との透明度の違いです。排泄物の有無が違いを生むことはすぐに分かりました」


「さすがはエリス様です。まさにその点が悩みの種でして...水がキレイになれば、魚も元気に育つんですが、今の状態だと病気がちで長生きしません」


「そうでしょうね。では濾過装置を見せて貰えますか?」


「はい、こちらになります」


 濾過装置は巨大な円筒状になっていて、途中に仕切りが何ヵ所か入っている。


「仕切りごとに水を濾過するためのモノを入れてあります」 


「具体的には?」


「最初は砂、次に砂利、最後は小石と、3段階に分けて濾過しているんですが、中々キレイになりません...」


「炭は使ってないんですか?」


「炭...ですか?」


「はい、炭には浄化作用がありますので、是非使ってみて下さい」 


「そうなんですね...それは盲点でした。早速試してみます」


「それとここの水は地下水ですか?」


「はい、湧き水を利用しています」


「その水を池に流す時も炭を通して濾過する方が良いと思います。何か不純物が混じっているかも知れませんから」


「分かりました。ご指導ありがとうございました」


「また何かありましたら連絡して下さい」


「了解致しました」


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