第42話 視察します
説明会は和やかな雰囲気のまま終わった。
一同はその後、実際に現地を見て回ることにした。まずは説明会場に近い旧領主邸を訪ねる。
「ここが旧領主邸ですか。落ち着いた感じの良いお屋敷ですね」
エリスが感嘆の声を上げる。旧領主邸はレンガ造りの二階建てで重厚な雰囲気を醸し出していた。門を抜けると、今は枯れているが中庭に噴水が設置されている。
「この場所に露天風呂を造りましょう。それとお屋敷の一階部分には内風呂を何ヵ所か造って、サウナも欲しいですね。二階部分には休憩所を造りましょう。遊技場とかもあると良いですよね」
エリスはどんどんアイデアを出していく。一同は感心しながらただ耳を傾けている。
「じゃあ次はホテル用地を見に行きましょう」
山の麓までは遠いので、一同は馬車に乗って向かうことにした。メインストリートを馬車で走っている最中、街の区画整理担当者がエリスに話し掛ける。
「エリス様、温泉の水源から水道管を伸ばすとなると相当な距離になると思いますが大丈夫なんでしょうか?」
「えぇ、それは問題ありません。強度を高めにして造りますから」
「先程、メインストリートの地下を通すと仰っておられましたが、さすがにこの距離を一瞬で地下に埋めるというのは無理があるように思われますが?」
「そうですね、確かに一瞬というのは誇張し過ぎました。5分いや10分あればイケると思います」
「それは...もう一瞬と言っても差し支えない時間かと」
担当者は引き攣った苦笑を浮かべた。
「通行止めにするタイミングは後で相談させて下さい」
「分かりました。行政担当者に連絡しておきます」
◇◇◇
馬車でしばらく走るとホテル用地に予定している山の麓に到着した。
「ホテルはこの辺りに建てましょう。朝日が差し込むように東向で。お土産物屋はこの辺りに軒を連ねる感じですかね。牧場はどっちになります?」
「ここからちょうど真東ですからこっちですね」
牧場関係者が指差す。
「なるほど。ではこの辺りから遊歩道をスタートさせましょうか」
エリスはテキパキと決定していく。
「人手が要りますね。木を切り倒して土地を整地しないと」
土木担当者がそう切り出すとエリスは、
「あぁ、結構ですよ。私一人で十分です」
と事も無げに言い切った。
「えっ? で、でも切り倒した木材とかは...」
「全部ストレージに収めますから問題ありません。あぁでも、整地する時に誰か付いて貰った方が良いですかね。監督官として。一人か二人くらいで良いですよね?」
「そ、そうですね...」
担当者は呆気に取られて頷くしかなかった。
「では整地する時に連絡しますね」
「分かりました」
こうしてこの日の予定は全て終了した。
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