第38話 作物を増やします
買い物を終えたエリスとカイは農場に戻って来た。
「エリス、それって例の盗聴用の魔道具?」
部屋に着くなりエリスが取り出したのは、クズの部屋を盗聴していた魔道具だった。
「そう。これってチャンネル切り替えが出来るのよ。もうあのクズは盗聴する必要がないから、一個を町長さんに渡してあるの。こうすると通信機みたいな使い方が出来るのよ。一方通行だけどね」
「あぁ、例の説明会の日程が決まったら、これに連絡が来るってことだね?」
「正解。それまでは暇だから、農場の改革をしようかなって思ってる」
「改革? どんな?」
「芋畑を削って小麦を植えようかなって」
「小麦? パンを作るつもり?」
「うん、せっかく炭焼き用の竈があるのに使わないのはもったいないかなって。火力を調整すればなんとかならないかな?」
「う~ん...どうなんだろう...やったことないからなあ...」
「私もパンは焼いたこと無いのよね。あの娘達にも聞いてみるけど、出来無いとなれば人を雇うことを視野に入れないと」
「さすがにゴーレムでは無理?」
「私が教えられないからね。パンの焼き方、焼き加減の調節とか細かい作業は難しいわね。単純な農作業と違って職人芸が求められるから」
「なるほど、確かにそうだね...ねぇ、エリス。良かったら僕が街のパン屋さんで修行しようか?」
「えっ!? カイはダメよ。私と一緒に街へ移るんだから。ここにずっと居る人が覚えないと」
「あ、そうか。一緒に行くんだ」
「そう、ずっと一緒に...」
自分で言って恥ずかしくなったのか、エリスは真っ赤になってしまった。
「と、取り敢えず畑を変えてくるわね」
そう言って逃げるように去って行ったエリスだった。
◇◇◇
「私達もパンを焼いた経験は無いですねぇ」
夕食の席で従業員の彼女達に聞いてみたが、同じ答えだった。
「やっぱりそうよねぇ」
「でも小麦を植えてパンまで作る必要あります? お芋があれば十分なんじゃ?」
「それじゃダメよ。栄養不足になるわ。あくまで芋は非常食用だから。あなた達が食べる分だけは作るけど、主食にするのはダメ。やっぱり主食はパンかお米じゃないと」
「お米はどうなんです?」
「あなた達、脱穀や精米が出来る?」
「無理です...」
「でしょう? まだ小麦を小麦粉にする方がマシよ?」
「そうですね...」
「あなた達、街に知り合いとか居ない? パン作りに慣れていて、職を探している人に心当たりがあれば助かるんだけど」
「う~ん...すぐには出て来ないなぁ...両親にも聞いてみますね」
「お願いね」
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