第24話 温泉女子会です
従業員寮を出たエリスは小屋に向かった。
「お~い、エリス~」
小屋に着くと同時にカイが空からやって来た。両足に一匹ずつ魔獣の子供を掴んでいるようだ。
「カイ、お疲れ様~ 首尾はどう?」
「上々ってとこかな。これでウサギとイノシシが5匹ずつになったよ」
そう言いながらカイが小屋を開けると、隅の方に固まって震えている魔獣の子供達の姿が目に入った。
「この短時間でこんなに!? さすがカイだわ! 尊敬しちゃう!」
エリスが目を輝かす。
「いやぁ~ それほどでも~」
照れ照れのカイである。
「今捕って来てくれた子も含めて、一旦こっちに移しましょう」
そう言ってエリスは、小屋の隣に土で簡単な檻を作った。
「ウサギとイノシシの間に仕切りを作っておくわ。それと餌もあげておきましょう」
仕切りで隔てられた檻に入れ、餌の野菜を与えてみると、恐る恐るではあるが口に運んでいるようだ。
「うん、大丈夫そうね。カイ、本当にありがとう。疲れたでしょう? ゆっくり休んで?」
「いや、ちょうど野生の鶏が居る場所を見付けたんだ。まだそこに居る内に捕まえて来ようと思う」
「大丈夫? 無理してない?」
「大丈夫。まだまだイケるよ。そう言えば彼女達は?」
「自分達の部屋を模様変えしてるわ」
そう言ってエリスが指差す先には、出来たばかりの従業員寮がある。カイは苦笑して、
「さすがはエリスだ。じゃあ行って来るよ」
「ありがとう。隣に鶏小屋を作っておくから、捕まえた鶏はそこに入れて?」
「分かった」
飛び去っていくカイを見送ったエリスは、鶏小屋を作り餌の野菜をセットした。
「さて、こっちにも作っておきましょうかね」
そう言ってエリスはまず、小屋の中に従業員寮と同じように井戸を作り、更に温泉まで達する回廊を作った。
「良し、完了。向こうもそろそろ終わる頃かな?」
従業員寮に向かいながら見上げた空は、真っ赤な夕焼けに染まっていた。
◇◇◇
「みんな~? どんな感じ~?」
従業員寮に着いてエリスが声を掛けると、ユリを筆頭に全員が集まって来た。
「エリス様、全員終わりました」
「そう。お疲れ様。汗掻いたでしょう? 夕食前に温泉で汗を流しましょう。夕食はみんなの歓迎会を兼ねて豪勢にいくわよ!」
「「「「 やったぁ~! 」」」」
全員が破顔した。
回廊を5分ほど歩いて温泉に到着した。
「うわぁ、本当に温泉だぁ」「話には聞いていたけど実際に見ると凄いわね」「ちょうど良い湯加減だわ」
四人は口々に感想を述べ合う。
「あら? まだ入ってなかったの?」
そこに服を脱いだエリスがやって来ると、彼女達の時が止まった。
「どうしたの? 早く服を脱いで来なさいな」
「あの...失礼ですが、エリス様っておいくつでしょうか?」
「私? 15。あ、もうすぐ16」
彼女達は無言で自分達の胸元とエリスの豊満な双丘を交互に見詰め、深いため息を吐いた。
「えっ? そんなに釣書と差があったんですか?」
「えぇ、あのクズが送って来た釣書は、これいつの時代に書いたヤツよ? って思うくらい、今の姿とは似ても似つかないわ。別人を書いたんじゃないかしらと思ったほどよ。良かったら後で見せてあげる。笑っちゃうわよ?」
そう言ってエリスは苦笑した。
「本当に心の底からクズなんですね...」
「まぁそんなクズの天下も、もうすぐ終わるわ。いえ、終わらせるわ。もうちょっと待っててね?」
「「「「 はいっ! 」」」」
四人は力強く頷いた。
「そう言えば、カイ...様?...君? は、鳥の獣人なんですね? さっき飛んでるところを見ました。私、獣人を見たの初めてです。ビックリしました」
「あぁ、そういえば言ってなかったわね。その通りよ」
「どこで出会ったんですか?」
ユリが興味津々という体で聞いてくる。恋の話は女の子の大好物である。カイとの出会いのあらましをエリスが語ると、
「それって運命の出会いじゃないですか!」
「そ、そうかな?」
「絶対そうですよ! お二人はきっと結ばれる運命なんですよ! 今だって同棲してるんだし!」
「む、結ばれるって~!」
真っ赤になってしまったエリスは、年相応の女の子だった。
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