第22話 従業員寮を作ります
カイと別れたエリスは、引っ越しの手伝いをするため、まずユリの部屋へ向かった。
「へぇ~ ここがユリの部屋なんだ~ 可愛い部屋だね~」
「は、恥ずかしいんであんまり見ないで下さい」
ユリの部屋は女の子らしく可愛いぬいぐるみで溢れていた。
「じゃあ、ぱぱっとやっちゃおうか」
エリスがそう宣言すると、ユリの部屋の物が瞬く間にストレージへ収納されていく。そう、まるでブラックホールに吸い込まれるように。その光景は圧巻だった。あっという間にユリの部屋から全ての物が消えた。
「エリス様の魔法は本当に凄いですね...」
物が全て無くなった部屋を呆然と眺めながらユリが呟いた。
「よおし、それじゃあ次行ってみよ~!」
この調子で他の三人の部屋を回り、全てを収納したエリスは、四人と共に意気揚々と山へ向かった。
山道を登り始めてしばらく経った頃だった。
「ここから傾斜がキツクなるから付与するよ。みんな集まって」
『エンチャント』
エリスが呪文を唱えると、四人の体が光に包まれた。
「うわっ! 体が軽くなった!」「凄いっ! 力が漲ってくる!」
皆口々に初めての付与の感想を述べる。というより感動している。
「みんな、最初は今までの感覚と違って戸惑うだろうけど、慣れれば平気だからね。じゃあ行こうか」
急な斜面をみんなで登り始める。すると、
「エリス様、全く疲れません! これ凄いですね!」
ユリが興奮している。無理もない。今までの彼女だったら、この斜面を半分も登れないだろうから。
「体力が上がっているからね。それと筋力も上がっているから、力加減に注意してね。リンゴを握り潰したりしないように」
「は、はい。気を付けます。それでこの効果はどれくらい持つんですか?」
「いつまでも」
「へっ?」
ユリが間の抜けた声を発する。
「だからずっと。一度付与したら私が解除するか、私が死ぬまで続くよ」
「......」
もうユリは呆気に取られて言葉も出ない。エリスの魔力はどこまで規格外なのだろうか。
◇◇◇
「さあ着いたよ。ここがあなた達の職場」
カルデラに到着した彼女達から「うわぁ」という感嘆の声が上がる。一面に広がる畑には、青々とした葉を着けた芋類の花が咲いている。その間を沢山のゴーレムが農作業のため動き回っている。先にエリスから話は聞いていたが、これ程の規模の農場だとは思っていなかった。
「こ、これをエリス様がお一人で?」
「一人じゃないよ。ゴーレムがほとんどやってくれたし、途中からはカイが手伝ってくれたし」
「でもそのゴーレムもエリス様が作って動かしているんですよね...」
ユリはもう諦観の境地だ。今日1日だけでどれだけ驚いたことだろう。
「さあ、あなた達の従業員寮に案内するから着いて来て」
そう言ってエリスが四人を案内したのは、温泉を挟んでちょうど小屋から反対方向にある何も無い空き地だった。
「あの、ここですか?」
「うん、そうだよ。じゃあ今から造るから」
そう言ってエリスは小屋を増築した時のように、土を固めて煉瓦を作り、どんどん家を構築していく。
「四人だから二階建てにして、一階に二部屋、二階に二部屋だね。リビングと台所とトイレは一階に作るから。部屋割りは自分達で決めて?」
そしてあっという間に従業員寮が完成した。もう四人は笑うしかない。部屋割りは上がスズとラン、下がヒメとユリに決まった。各々の部屋にストレージから荷物を取り出したエリスは、
「悪いけど、部屋の模様変えは後回しにしてくれる? 説明しておきたいことがあるから」
そう言ってエリスは全員をリビングに集めた。
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