第19話 ちみっことヒロイン その3

 アタシがお助けキャラって...



「ちょっと待って。そんなに似てるの!?」


「うんうん、似てる似てる。ツインテにして妖精の羽根付けたらそっくり」 


「ツインテって...」


 以前、マリーがツインテにしようとしたのを全力で止めたの思い出したよ...これ以上子供っぽくされたら敵わんからね!


「だからさ、この学園で初めてミナを見た時、思わず凝視しちゃったよ」


 あぁ、あの視線はそういう意味だったのね。


「でもそれって続編のキャラなんでしょ?」


「うん、でもさ、もしかしたら無印版の方にも似たようなキャラが追加されたのかなって思っちゃったんだよね。攻略を手伝ってくれるのかなって」


「まあ確かに気持ちは分からんでも...」


「だってさあ、私が編入した初日の挨拶でさ、聖属性持ちだって話した時の皆の反応がさ『へぇ~ そうなんだ~』だったんだよ? 私ヒロインのはずなのにその薄い反応なに? 私『星の乙女』になるはずなのにおかしくない? ってなるじゃん?」


「あぁ、それは...キツイね...」


「そりゃそうだよね。だって私よりもっとぶっ飛んでる『精霊の愛し子隊』なんてものが既に存在してるんだもん。私の存在霞むよね~」


「それはその...大変申し訳ない...」


「最初聞いた時『え? ナニソレ? ダサッ! どこの戦隊モノ!?』って思ったよ」


「アハハハ...」


 アタシは笑うしかなかったよ...やっぱりネーミングセンスがなぁ...


「オマケにさあ、王子と悪役令嬢はなんか仲良さげだし。ずっとミナの話ばっかしてるんだよ? ミナのどこがどれだけ可愛いかとか、ミナが昨日あんなことした、こんなことしたとか、まるで娘を愛でる親バカ夫婦みたいなんだもん」


 あんのバカップル! なんてこっ恥ずかしい真似を!


「私も混乱しちゃってさ、でも取り敢えず行動を起こさないと何も変わらないと思ってね」


「あぁ、それであの謎行動を?」


「うん、まずはルート確認をと思って。王子ルートのはずなのにクラス内模擬戦もまだやってないって言われてね。なんで? って思ったのが最初」


「あぁ、確か王子ルートだと一年目の最初の頃に起きるイベントだっけ?」


「そうそう、次に学年対抗戦、二年目に学園選抜戦、三年目に王国の四天王戦と徐々にレベルアップしていくベタなパターン」


「まあ、ある意味王道ではあるよね」


「そのイベントが起こってないってことは、もしかして違うルート? って思ってさ、それでまずはエリオットの前であんなベタな行動を...」


 あぁ、ルート確認してたのか...迷走させちゃって申し訳ない...


「シルベスターの時も同じ?」


「うん、取り敢えず確認だけはしとこうと思ってね。でもホントのこと言うとね、どのルートでもないってことは薄々気付いてたんだよ」


「というと?」


「まず、エリオットルートなら既に隣国の『ヴェガート獣王国』との間で小競り合いが起きてるはずだし、シルベスタールートなら既にダンジョンでスタンピードが起きてるはず。どっちも起きてないもんね」


「あぁ、確かに...ん? それにしては何度も繰り返してような? 特にエリオットの前で」


「......」


 アリシアが沈黙しちゃったよ。ん? 少し顔赤くない?


「アリシア? もしかして?」


「...うん、エリオットが私のイチオシだった...」


 やっぱりかぁ~ 顔赤らめてるアリシアは年相応に見えて可愛いね!


「そうだったんだね...まぁ、その気持ちは良く分かるよ。私はシルベスターがイチオシだったから」


「ミナはシルベスター推しかぁ~ 良かった、被らなくて...」


「で? 告白とかすんの?」


「こ、告白って! ...それはまだ検討中...み、ミナは!? ミナは告白する?」


「私はこんなナリだし、恋愛とか諦めてるよ。シルベスターだって迷惑だろうし」


 中身はおばちゃんだしね~


「そんなことないと思うけどな...」


「まぁ、今の私は恋愛よりこれからどうするかの方が先決だから。あ、でもアリシアのことは応援するからね? 私に出来ることがあれば何でも言って?」


「うん、ありがとう...」



◇◇◇



「さて、これからどうするかなんだけど」


 アタシは三杯目の紅茶を入れながら切り出す。


「うん、ミナの話だと『星の乙女』は、これからの戦いに必ずしも必要じゃないってことだよね? 私の存在意義って...」


「それなんだけどね、先代の『星の乙女』であったミコトさんって人は、闇の精霊と戦えるくらい強かったって精霊王様が言ってた。だからアリシアにもその素質があるんじゃないかって思うんだけど、どうかな?」


「う~ん...どうなんだろ...確かに身体強化は出来るけど、戦えるかって言われるとちょっと自信ないかなぁ~」


「でも階段から飛び降りても無傷だったし、私の攻撃もへっちゃらだったじゃん?」


 アタシはニヤニヤしながら言った。


「それは言わないで~! 迷走した挙げ句の黒歴史~! あの時の私を殴ってやりたい~!」


 アリシアは頭を抱えてしまった。やっぱり攻略に拘った結果のなせる業だったんだね~


「いやぁ~ あの時のアリシアは可愛いかったなぁ~」


「お願いだから、もう許して~!」


 アリシアが真っ赤になって顔伏せちゃったから、この辺りで勘弁してやろう。


「分かった分かった、もう言わないから。でもさ、あんなことしなくても、私に直接言えば良かったのに」


「だ、だって、ミナの周りには必ず誰か居るんだもん...特にエリオットとかさ...」


 あぁ、アタシって基本一人になれないからね~ それは申し訳なかった。 


「あれ? 私のことを敵視してたのってもしかして?」


「うん...ミナに嫉妬してた...」


 いやぁ、それは重々申し訳なかった...


「それにもし、ミナがお助けキャラだったら、ミナの方から何か言ってきてくれるのかなって思ってたりしたからさ」


「あぁ、だから今日素直に来てくれたんだね」


「うん、やっと何か動き出すのかなって期待してね」


 それじゃ期待に応えないとね。


「ねえアリシア、聖属性の魔法って身体強化と今張って貰ってる遮音結界だけじゃないよね?」


「うん、回復と状態異常の解除も出来るよ」


 良し、ここからが本題。


「アリシア、私達と一緒に強くなってみない?」


「え? どういう意味?」


「私達、今度の夏休みにレベルアップの為、未調査のダンジョンに挑む予定でね、アリシアにヒーラーとして一緒に来て貰えないかと思って」


「え? でも他にヒーラーは居るんじゃないの?」


「水魔法使いが二人居るけど、専門のヒーラーが居てくれた方が安心だもん。ダメかな?」


「でも私、精霊の加護も無いよ? 仲間に入れるの?」


「そこは私が説得するよ。大丈夫、任せて」


「う~ん...でもなぁ、私の謎行動を皆に見られてる訳だし、恥ずかしいっていうか...」


「仲間になれば夏休みの間中ずっと、エリオットの側に居られるよ?」


「......」


 良し良し、あと一押しかな。


「それと精霊の加護に関してだけどさ、一度精霊王様に聞いてみない?」


「え? なにを?」


「ミコトさんは光の精霊の加護を受けたって話だからさ、同じ聖属性持ちのアリシアにも可能性あるんじゃないかと思うんだよね」


「ミコトさんって転移者だったっていう人だっけ? う~ん...まぁ聞くだけなら...」


「じゃ決まりね。精霊王様~!」


「......」


 ありゃ? また寝てるのかな? 最近は寝てる時多いんだよね。普段、静かなのは助かるけどさ。


「精霊王様~! 起きて下さ~い!」


「...おぉ、ミナか。ふわぁ~ どうした?」


 まだ少し寝惚けてるな。


「あのですね、この娘のことなんですけど」


 と言ってアリシアを指差す。


「フムフム、ん? これはっ!? なんとお主、聖属性持ちかっ!」


「は、はい。あの私、アリシアって言います」


「アリシアか、フムフム、その容姿といいミコトを思い出すの~」


 あぁ、そうだよね。アリシアも黒髪黒目だもん。


「それで精霊王様、このアリシアにも精霊の加護を頂くことは可能でしょうか?」


「フム、待っておれ。今、光の精霊を...おい、レム。ちょっと起きろ」


 精霊王様がそう言うと、虹色に光る球体が現れた。キレイ...


「...眠い...なに?...」


 するとこちらも眠そうな女の人の声がした。これが光の精霊レムか。


「こちらのアリシアにお前の加護を与えられるか?」


 虹色の球体が点滅する。


「...まだ無理、レベルが足りない...レベル上げてきて...」


 そう言うと消えてしまった。


「残念じゃがまだ加護を与えるレベルに達しておらんようじゃ。試練を乗り越えてからまた呼ぶが良いぞ」


 そう言って精霊王様もまた沈黙した。良し、アリシアはこれから修行だね!


「てな訳でアリシア、一緒にレベルアップしようね?」


 アタシがニッコリ微笑むと、アリシアは


「マジですかぁ~!」


 と叫んだのだった。


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