第221話 事後処理、そして
翌々日。
私はリビング内に横になった状態でヒイロ君、カトル君、ウーフェイ君3頭を同時使用して雑草取り。
雨のあとは雑草がよく伸びるなあ、なんて事を思いながら。
何とか豆の畑一面分を終えた頃、人の気配が近づいてくるのを上空視点の偵察魔法が捉えた。
この付近はまだ他に移住してきた人はいない。だから近づいてくるのは新規移住者か、さもなくばうちに来る人だ。
魔力反応を確かめて後者だと判断。カレンさんとミメイさんだ。
「リディナ、お客様。カレンさんとミメイさん。あと
リディナは同じリビング内で調理中。
「ありがとう。それじゃ準備するね。あとセレスを呼んで貰っていいかな」
「わかった」
シェリーちゃんをアイテムボックス内で起動。
偵察魔法でセレスの居場所を確認。池の近くだ。アレアちゃん達を放牧したついでにマスコビーの様子を見ている模様。
シェリーちゃんをセレスの近く、家側の通路上に出す。
『お客さんがまもなく来る。カレンさんとミメイさん』
「わかりました。戻りますね」
私も草刈り中の3頭のゴーレムを収納し、アイテムボックス内で整備。畑の作業後は泥がついているので水で丁寧に洗い流す。洗ったら魔法で乾燥させ、更にシェリーちゃんも収納して注油作業。
セレスが身体強化した上で走って戻ってきた。私もゴーレム整備を中断。外に出て出迎え体制。
すぐに2人がやってきた。この前と同じゴーレム馬に乗っている。ただ今回はあの縮地のような魔法は使っていない。
家の手前で2人ともゴーレム馬を降りる。
「先日のお礼に伺うのが遅れまして申し訳ありません」
戦いがあったのは一昨日だし遅くはないと思う。でもカレンさん的にはその場で対応できなければ遅いという事になるのだろう、きっと。
「いえ、お仕事お疲れ様です。どうぞ中へ」
カレンさんは家を見上げる。
「この家も久しぶりです。使って頂いているんですね」
「ええ。使いやすいですしこの家が一番落ち着きますから」
お家の中へ入って、カレンさんは一度立ち止まって周囲を見回す。
「懐かしいですね。アコチェーノで泊まらせて頂いた時以来です。そう言えばラツィオでお会いした後、アコチェーノに行かれたそうですね。イオラから手紙がありました。便利なものを作って頂いたそうで」
「いえ、イオラさんにはお世話になりました。ずっと森林
話をしながらリディナはテーブルにお茶セットを出す。今回は定番のチーズケーキと、蜜柑の葉を発酵させて作ったすっきりした味のお茶だ。
「それにしても一昨日はありがとうございました。いきなりミメイが訪問した後、詳しい説明もなくフミノさんに海岸まて来て頂いて。更にリディナさんやセレスさんにもお手伝い頂いた上、結局フミノさんにあの魔物を倒して頂きまして。
領主に代わりまして心より御礼申し上げます」
「いえ、あんなのが来たら此処も大変ですから。それで街や他の場所は問題は無かったでしょうか」
「特に問題はありませんでした。天候のせいで船も出ていませんでしたし、早いうちに戦闘場所をあの海岸付近に決めて、騎士団が一般の方を近づけないようにしましたから。
雨天でしたので元々外を歩いている人もほとんどいませんでした。魔物に気づいたのも街では冒険者ギルド職員やC級以上の冒険者十数人といったところです。
ですのでほとんどの住民はあの魔物が出たことすら知らない状況です」
なるほど、あの悪天候がむしろいい方に作用した訳か。
なお今のところリディナとカレンさん2人で会話は進んでいる。ミメイさんや私は話す方では無いし、セレスはリディナほどカレンさんと親しい訳では無いから。
「ところであの魔物退治の恩賞は何がいいでしょうか。A級の魔物ですので冒険者ギルドの方から褒賞金が
おっと、そんな話になったか。しかしなあ……
私達3人はお互い顔を見合わせる。うん、リディナもセレスも無さそうだ。
「いえ、こちらはごらんの通り開拓も順調ですから。冒険者ギルドからそれだけ褒賞金を貰えれば充分以上です」
うんうん、リディナの台詞の通りだ。
「褒賞金だけでも充分過ぎる気がします。
セレスも同意見、いや
「あの魔物が上陸すれば街は壊滅的な打撃を受けた事でしょう。それに騎士団の攻撃はほとんど通じていない状態でした。それを考えても領主として何か御礼をすべきだと思うのです」
理屈はわかる。しかしお金は充分あるし、開拓も順調。素材関係は魔法金属も含めアコチェーノで大人買いしたので在庫ばっちり。
うーん……強いて言えば……思いつかない……
こっちを見たリディナに私は首を横に振る。
リディナは頷いてカレンさんの方を向いた。
「騎士団の攻撃のおかげで魔物が街に近づかなかったのは事実です。
それに私達の開拓は順調ですし、家畜も畑も現状で3人で出来るほぼ目一杯状態です。お金もローラッテの鉱山の件やその前の討伐等である程度貯めていますから」
「やはりそう言われてしまいましたか」
どうやらこっちの意見、カレンさん達の予想の範囲内だったようだ。
「わかりました。恩賞は後ほど思いついたらという事にしましょう。地位や役職等で良ければある程度は自由に出せるのですが、フミノさん達はそういったものを望まれないでしょうから。
あとは連絡事項です。何時でもいいですので冒険者ギルドにあの魔物の死骸の提出を御願い致します。褒賞金の方は準備が出来ています」
「わかった」
回収してそのままアイテムボックスに入れっぱなしだ。あ、でも待てよ。
「かなり大きいけれど、大丈夫?」
「ええ。ここの冒険者ギルドの裏庭はかなり広いですから。ああいった特殊な魔物は研究対象として王都の研究所に送られます。ですので出来るだけそのまま出して頂けるとありがたいです。特殊自在袋で、魔力担当を複数人つけて運びますから」
自在袋は容量が大きすぎると魔力を消耗する。だから一般的には
しかし魔力の大きい魔法使い何名かで共有状態で使用すればそれ以上に容量が大きな自在袋を使用する事が出来る。ただその場合は魔法使いが5~6名は必要だ。だから特殊な場合以外、まず使われることはない。
つまりは特殊自在袋を使う準備も出来ているという事なのだろう。
「わかった。今日中には行く」
「ありがとうございます。宜しくお願いいたします」
「あと私とスリワラ家騎士団工房からの要望。フミノにゴーレムを見て欲しい。騎士用の馬代わりのゴーレムを作ったけれど、フミノならまだ改良点を思いつくと思う」
これはミメイさんから。もちろんOKだ。私としても是非見せて欲しい。
「わかった。いつでも」
「ありがとう」
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