第194話 久しぶりの移動
南へ行くにはテラーモ経由が本当は最短。
しかしずっと山間部にいると海が恋しくなる。そんな訳で私達が向かったのは東、サンデロント方面だ。
これは以前アコチェーノを出た時と同じルート。しかし今は歩きではなく、ゴーレムもライ君になっている。だから圧倒的に速い。
10の鐘過ぎに出たのに昼3の鐘の前にパスカラまで来てしまった。
「こうやって来てみると懐かしいです」
「秋になる頃だったっけ、この辺にいたのは」
久しぶりの海鮮等を含め食材を各種購入し、以前のんびり滞留したあの廃道先へ。
「そろそろ暖かくなってきたし、あの方法でまた魚とりをしたいよね」
「釣りって楽しいですよね。たまに大きいのもかかりますから」
ただ時間がそこそこ遅いので釣りは明日から。以前とまったく同じ場所に3階建てのお家を出して本日は終了だ。
「明日はフミノも出た方がいいよ。アコチェーノにいる間、ほとんど身体を動かしていなかったよね」
それはわかっている。否定できない事実だ。肯定するしか無い。
「わかった」
「お家をしまって皆であの入り江まで行ってもいいですね。向こうでお家を出して」
「そうだね。あの場所、色々捕れて面白かったし」
うう……大丈夫だろうか。
あの時はリディナ達についていくのがやっとだった。しかし今はその時以上になまっている。
身体強化系の魔法で誤魔化せるだろうか。それともリディナ達に追いつくためだけに縮地を使う羽目になってしまうか。
まさか動けなくなった結果ライ君に乗馬状態となったりは……
ああ明日が怖い。
「少しゆっくりして、それから豪華な夕食を作ろうか。フミノのお仕事も終わったし、そのお祝いを兼ねて」
よし、今はそちらに本格参戦しよう。明日の事を少しでも忘れる為に。
幸い今回は食材が揃っている。いつもと少し異なった料理を作れそうだ。
「今日は私も作る。甘いの予定」
チーズケーキは以前リディナが作った記憶がある。だがプリンはいままで見たことがない。だから多分かぶる事はないだろう。
卵と牛乳は購入済み。あとはフルーツもある程度購入済みだ。
どうせならクリームや果物でデコレーションしてプリン・ア・ラ・モード風に作ろうかな。
いや待てよ。そう言えばレーズン漬けの酒なんてのもあった。ならあえてこんなのも食べたい気がする。
よし、クッキーを焼くところからはじめよう。
プリンを作らない訳では無い。プリンも作るしレーズンウ●ッチもどきも作る。甘い物は別腹だ。それにデザートは単独で食べてもいい。だから作りすぎても構わない。
作りすぎてもいい、ならば……
甘い物つながりで思い出した。以前リディナが買ったレシピ本を読んだ時、簡単に作れて美味しそうなものあるなと思った事を。
レシピは簡単だったから覚えている。ならばついでだ。作ってしまおう。こういう機会でも無いと私が料理を作る事は無いから。
◇◇◇
3人で好き勝手に作った結果、和風洋風その他ごっちゃまぜな料理になった。
まとまりがまるで無い。しかし美味しそうな事は美味しそうだ。
リディナが作ったメニューは、
○ お刺身、和風とカルパッチョ風
○ メルランというイワシサイズの白身魚のフライ
○ 鯛っぽい魚を甘辛のタレに漬けたものを焼いたもの
○ 魚のアラ等で出汁をとってトマトやジャガイモ、ハーブを入れたスープ
「久しぶりだからついお魚に偏っちゃったかな」
だそうである。
セレスは
○ オーク肉のカツレツ風特製ソース付き
○ 鹿肉シチュー
○ 角兎肉と野菜のチーズグラタン風
○ スティックサラダ、ソース5種付き
「討伐でお肉の在庫が増えたので、少し贅沢に使ってみました」
だそうだ。
私も予定より少しばかり頑張ってしまった。
○ 固めのカスタードプリン、水飴シロップ漬けの果物を添えて甘いクリームをかけたプリン・ア・ラ・モード風
○ レーズンウィッチ風のクッキー。バターとドライレーズンの酒漬けを使っているので味はかなり本物風
○ リンゴのカトルカール風。つまりはリンゴケーキ、今回はパウンドケーキ風に四角く仕上げている
「本当に甘い物ばかりね」
「公約通り。後悔はしていない」
反省はしているかもしれない。太るぞと言う意味で。
これらのメニューにパンやご飯、ラルド等いつもの主食等も出して夕食開始。
この辺が揃っていると、私としてはやっぱりご飯と刺身から。
ここ3ヶ月間山間部にいたから生魚が嬉しい。
勿論時々は魚も夕食に出てきてはいたけれども。
ここはやっぱり禁断の食べ方だな。
ご飯の上にラルドと刺身をのせ、魚醤で作った漬けタレとホースラディッシュのすりおろしを混ぜ混ぜして上からかける。
うん、やっぱり美味しい。ついでにフライに味変してもいいし、なにげにカツレツも無茶苦茶美味しい。スティックサラダは箸休めに最高。
私だけでない。リディナやセレスも食べまくっている。その結果は……
「……明日はゆっくり出ようね」
「……その方が良さそうです」
つまりリディナもセレスも別腹までしっかり目一杯以上食べてしまっている。私もだ。2人より胃袋容量が小さめな分、ダメージも大きい。
残った料理を整理して食事用の自在袋にしまって夕食終了。
動けないので現状説明を兼ねて報告。
「少し此処で休んでから寝る」
「私もそうします。今は動きたくないです」
「明日は歩くからいいよね、これくらい」
セレスとリディナも同調。そしてリディナの台詞で思い出す。明日、あの大変なコースを歩くことを。
大丈夫かな……しかし悩んでもどうしようもないしな……
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