第165話 ちょっと話がそれたけれど
ようやく出口が見えた。認識出来る魔物はコボルトばかり5匹。リディナの魔法で一気に両断される。
「この辺で止めるね。このまま外に出たら魔物と間違われかねない気がするから」
リディナに言われてなるほどと思った。ライ君、早いし視界が高いし魔法も使いやすい。しかしいかんせん外見がこの世界的に違和感たっぷり。
私的にはなかなか便利かつ合理的な設計だと自負している。しかし残念ながら皆さんはそう思ってくれないようだ。
「わかった」
「あとバーボン君の方、解除しますね。こちらの収納もお願いします」
横も背後方向も魔物は一掃されている。最後に横から出てきた3匹はセレスが倒して今、私が収納したから。
だからバーボン君はもう必要ない。なのでアイテムボックスに収納。
「それじゃフミノ、ライ君交代お願い。私、先行して騎士団に話すから」
「私も一緒に行きます」
リディナとセレスがゴーレム車から出てライ君の前へ。私は乗ったまま2人の後ろ、
歩かせながらぼんやり考える。ライ君、外見的にも自信作なのになと。やはり
でも他にケンタウロスっぽくて無難なのが思いつかない。ベルセルクのロクス使徒形態はもっと魔物的だし。射手座の聖衣の着ていない時の形態は良さそうだけれど、残念ながら細かい部分をおぼえていない。
なんて下らない事を考えながら洞窟を出る。洞窟前は向こう側と同じように広場で、その先が検問所。
リディナが検問所のところに立っている騎士団の人と接触。二言三言話した後、こっちに向けて頷いた。
「この広場で止めて休んでいいって」
確かにここも向こう側と同じように広場になっている。ただ向こう側と違って洞窟の入口が流入土砂に埋まっていない。南北の洞窟入口も近いし出入りもしやすくていい。その分警備する騎士団の人は大変だろうけれど。
「あとフミノ、ついでだから中で倒したコボルト、ここで野焼きして魔石をとっておかない。どれくらい狩ったか見せた方が騎士団の人も安心すると思うから」
確かにそうだな。そう思ったので私もゴーレム車を降りる。本当は降りなくても出さなくても出来るけれど、ここはアピールしておくべきなのだろう。これだけ倒したぞと。
わざとらしく自在袋を操作するような真似をしつつ倒したコボルトを出す。
控えめにいっても地獄絵図。人型の魔物の死骸、それも首ちょんぱだの胴切断だので見た目からもう悲惨きわまりないのが200匹以上積み重なっている。
さっさと片付けてしまおう。熱魔法で一気に分解する。タンパク質が焦げるあの嫌な臭いの後、灰と魔石、その他槍などの金属の残骸が残った。
検問所に立っている騎士団の人達が呆けたような目でこの様子を見ていた。でも説明も面倒だし無視。魔石と金属の残骸を回収し、ゴーレム車に引っ込む。
「とりあえずお昼にしましょ。休憩しないと少し魔力が厳しいし」
「賛成です。
「確かにハードだったよね」
2人ともかなり疲れているようだ。なら今日の探索はここまでかな。
ラツィオで購入した薄焼きピタパンサンドと、毎度お馴染み甘い乳清飲料を出す。ピタパンサンドは鶏肉青菜炒めチーズ追加を2つ、挽肉トマトチーズを2つ、林檎バター水飴を1つ。甘いのは私用で他がリディナとセレス用だ。
「私も甘いのいいでしょうか。今は少し甘いのが食べたい気分です」
おっと、セレスも今回は甘いのか。ならという事で林檎バター水飴と苺バターを追加。
「疲れている時は甘いのが美味しいですよね。甘さが疲れに染みていく気がします」
「確かにそういう事もあるかもね。私はがっつり食べたい方だけれど。
今日の探索はここで切り上げた方がいいかな。魔力も余裕がないし、内部の探索図を描く作業もあるし。何なら一度街まで行ってあの魔石を提出した方がいいかもしれないね」
2人は限界が近いようだ。今日はこれで切り上げるのが正解なのだろう。一応一日のノルマ分以上は討伐しているし。
「わかった。食べ終わった後、中の地図を描いて、ギルドに提出した後今日は休憩。それでいい?」
「賛成です」
「私も賛成かな。それじゃフミノ、地図お願いしていい?」
「わかった」
それじゃ食べ終わったら地図描きだな。
そう思いながらピタパンサンドを食べる。
「うん、美味しい」
「美味しいですよね、これ」
セレスが同意してくれて気づく。思わず口に出てしまったようだと。
「そうそう、
「このお店はリディナさんが発見したんですか」
「ううん、ここは先輩から教えて貰った。かなり前の先輩から引き継がれている感じかな」
「学校って勉強だけじゃないんですね」
「そりゃそうだよ。あれもひとつの社会だから。だから馴染めない人も当然出てくるんだけれどね。貴族と平民とで仲が悪かったり、貴族同士でも家の派閥によってまたつるむ仲間だけでなく考え方や平民に対する態度なんかが違っていたりするし。
でもその辺も改革によって変わるのかな」
リディナ、その辺でも苦労をしていたようだ。
「あとリディナさん、何に対してもよく知っていますよね。学校に行くとそうなるんですか」
「必ずしもそうじゃないよ。学校で教わるのはあくまでも基礎だけ。全てを学校が教えてくれる訳じゃないし、学校が教える全てが正しいかどうかも確かじゃない。
私は単に興味あるから街に寄った際に号外紙を読んだりして、結果的にある程度の事に詳しくなっているだけ。
ただ学校で教わった事、基本的な知識が『知識等を知る為の道具とその方法』として役に立っているのは確かかな」
「学校でひととおりの知識を教えてくれる訳じゃないんですか」
「もちろん教えてくれる事も多いよ。ただその全てが正しいか、そのまま役に立つのかというと必ずしもそうじゃないと思う。現にエールダリア教会が教えていた魔法の知識は間違いだった訳だし。
最終的には個人の判断になっちゃうかな、教わった事をどう解釈してどう使うかは。信じる信じない、正しい正しくない、覚える覚えない含めて」
「でもそれじゃ学校の知識って結構無駄なんですか?」
おっと、予想外の展開だ。でもこれはこれで面白そうかな。何となく聞き耳をたててしまう。
「無駄な事は確かに多いかな。でもそんな知識でも教わった事そのものは無駄じゃないと思う。
魔法についてなんてまさにそうだよね。エールダリア教会の先生から教わった魔法についての知識は実は間違っていた。
でもね、ある程度教わったからこそ理解する事が出来るんじゃないかな。新しい知識がどう違って何が出来るようになるのかを。
たとえば国立図書館にはいろんな分野の本があるよね。だからあそこに行けば知りたい事は何でもわかるように感じる。自分でもわかるようになると感じるじゃない。
けれど実際はそうじゃない。たとえば知りたい事がある時にそれがどんな分野で、どんな事と関連しているのかわからないと調べるべき事が何処にあるのかすらわからない。
ただ調べようとした事に対して少しでも知っている事があればそれをヒントにして関連する本が何処にありそうか、少し考える事が出来るよね。
そういう意味で学校で教わる事っていうのはあくまでも材料や道具なんだと思う。
ただそういった最低限の知識をまとまった形で教わる場所としては便利だけれどね。学校の意義ってのはそんなところなんじゃないかな。私の考えではだけれどね。
もっとも実際は人によって学校に対して求めるものは違うよ。将来役人になるためにこの学校を出ることが必要なんて子もいたし、貴族だから卒業しないと地位的に恥ずかしいなんて人もいる。将来の為のコネや人脈作りなんて人もいたりね。
そんな感じかな。ちょっと話がそれてしまった気もするし、うまくまとまっていないけれど」
リディナ、どうやらこの辺にも一家言あるようだ。
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