第142話 気分はリ●ーかゼロ●クス?
風呂に入るとつい偵察魔法で周囲の魔物や魔獣を索敵してしまう。
しかしこの付近、反応はかなり少ない。どうやらリディナ達が狩りまくった模様。
おかげで私の風呂時間は短時間で終わってしまった。いい事だ。今日はこの後やる事が結構あるから。
風呂を上がって自室の机へ。さて、まずは複写機魔法の開発だ。
コピー機の原理なんて私は知らない。だからコピー機そのままの動作ではなく、結果としてコピー機と同じになるような手順を考える。
まず私が書いた翻訳を左に、白紙を右に置く。複写しろと単純に念じてみる。駄目だ、魔力が上手く働かない。
なら次に翻訳の上に白紙を置く。この世界の紙は日本のものより厚い。だからあまり透かして見えない。
偵察魔法の要領で白紙の下の翻訳を見る。これで白紙の下に翻訳を書いた紙が透けて見えるようになった。
さてどうするか。そう思ってある方法を思いついた。
用意するのは薄い銅板。勿論薄板なんて最初から持っていない。だから銅のインゴットを使って作る。
必要量を切って、熱で延ばした後、踏み固め魔法で平らに。全てをアイテムボックス内でやれば音も振動も外に漏れない。夜中に作業するには便利で宜しい。
さて、こうして出来た平らな銅板を翻訳を書いた紙の上に置き、その上に白紙を置く。
これでも偵察魔法を使えば下の翻訳が透けて見える。
さて、次の工程、うまくいくか。見える文字をなぞるようにして、上の紙が高熱になるように熱魔法をかける。文字部分が黒くなり、かつ燃え出したり穴があいたりしない程度に。
銅板を置いたのは万が一熱魔法が失敗した際の事を考えてだ。銅は熱伝導率がいい。だから多少の熱なら周囲に逃がしてくれる筈。
おし、少し黒色が薄目だけれどコピー出来た。
複写機魔法、完成だ!
あとは簡単。銅板の上に白紙を置き、監視魔法で1枚下の紙を見て、文字等の黒い部分の白紙が黒く焦げる程度に熱をかける。
よしよし。複写機魔法、上手くいっている。時々銅板を冷やしてやる必要があるくらいだ。
白紙を置いて魔法を繰り返す事約200回。めでたく大事典の魔法部分の翻訳、複写原稿が完成した。この魔法、便利でいい。後でリディナやセレス、ヴィラル司祭にも教えてあげよう。
さて次は教材だ。これも前回作った分の複写から開始。
あとコピーが出来るなら文字練習帳なんてのも作れるな。計算のドリルも。
原稿さえ作ればヴィラル司祭が複写できるだろう。複写機魔法を教えれば。
紙が無いなら大量に買ってある分を寄付すればいい。私達はまた街で買えばいいだけだ。
とりあえず小学校1年生用、文字を読み書きする練習分と、20までの足し算引き算、位取りについては完成させるぞ。
◇◇◇
「フミノ、フミノ……」
誰だ私を呼ぶのは。名を名乗れ。
「フミノ、フミノってば……」
何事だ。私は寝ているのだ。そこまで思って気付いた。これはリディナの声だ。しかも夢の中の声ではない。
非常に眠いが目を開ける。
「あ、リディナ、何かあった?」
「あ、良かった。魔法で見て異常はなかったけれど、あまりに起きてこないから心配になって」
窓の外は明るい。光の加減からして日の出とかそういう時間ではない。眠っていた脳がやっと状況を理解する。
「ごめん、寝坊した」
あわてて飛び起きる。おっとしまった、私は寝る際は服を着ない主義だった。まあ相手がリディナだから別にいいけれど。
「着替えて下に行く」
「わかった」
セレスを待たせてしまったかなとふと思う。今朝、出来上がった教材を渡すつもりだったから。
教材は4組用意してある。タチアナさん達一家用に3組、ヴィラル司祭に渡す1組だ。大事典翻訳魔法分も2部作った。タチアナさん達一家用とヴィラル司祭用。
なおこれらはタチアナさん達用、司祭用でそれぞれ木箱に入っている。木工は得意だし好きなのでつい作ってしまった。おはじき等もあるし、箱がある方がいいだろうから。
箱には他に白紙と、あと司祭用には複写機魔法で使用する銅板も入れてある。この辺も必要かなと思ったから。
とりあえず服を着て、顔を濡らした布で拭いて、髪をブラシで整えて下のリビングへ。
「ごめん、遅くなった」
「今日は何もないから大丈夫だよ。それに遅くまで何かやっていたんでしょ。何かガッチャンガッチャンって言っていたけれど、あれって何かの呪文?」
しまった。複写機魔法を使う際、コピー機の気分でついついそんな効果音を口で言ってしまっていた。
どうやらそれを聞かれてしまった模様。リディナの部屋は私の隣だ。聞こえて当然ではある。
「呪文ではない。それより新しい便利な魔法を思いついた」
「それじゃ朝ご飯を食べながら聞くね」
偵察魔法で見る太陽の位置から判断して、朝食の時間はいつもより1時間くらい遅い。
「セレスごめん。遅くなった」
「体調は大丈夫ですか? 何か私のお願いで無理したんじゃ」
「問題ない。単に新しい魔法を考えてただけ」
半分は本当だ。複写で複数組つくってしまったのも複写機魔法をノリで使いまくってしまったせい。がっちゃんがっちゃんと言いながら。
「食べ終わったら昨日約束した教材と魔法の翻訳を渡す。セレスに渡すのはタチアナさん達が自分達で使う分。開拓団全体用は別に作って私が渡しておく」
「ごめんなさい。まさかそんなに書き写したんですか。それで朝まで……」
早朝までやったのは確かだが書き写した訳では無い。
「便利な魔法を開発した。本等に書いてある事を白紙に同じように写す魔法。後で教えるから」
「それがさっき言っていた魔法?」
リディナに頷く。
「それじゃまず、朝ご飯にしましょ。教会の文字勉強はお昼1の鐘の後だって言っていたから、それまでにその辺の用事はすればいいしね」
その辺も既に聞いてくれたようだ。リディナありがとう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます