第93話 食生活の充実?
私の対人恐怖症もだいぶましになっている。リディナと出会った頃と比べると段違いといってもいい程だ。
最初は状態異常として対人恐怖(5)がついていた。それがアコチェーノにいた頃には対人恐怖(3)まで下がった。スキルの恐怖耐性(2)を使えばかなり耐えられる状態だ。
しかしここサンデロントくらい賑やかな街にいるとやはり消耗してしまう。恐怖耐性(2)で耐えても精神力がごりごりと削られていくのだ。
限界に達する少し前に街を脱出。
現在は買ってきたテイクアウトの昼食を食べながら論評中だ。
「どっちのお店も美味しいけれど、個人的には
「私は
テイクアウト探しは半ばリディナの趣味だ。新しい街で買い物をした時は必ずその辺の人に聞いて『このあたりで一番美味しいテイクアウト』を買い込む。
この趣味、美味しいし楽しいしいざという時に役に立つ。食事をゆっくりとれない時なんてのは案外あるものだ。疲れてきちんとした料理を食べられないなんて時もあるし。
それに人に配ったりする時も楽でいい。それもあってこの前、元デゾルバ男爵領の皆さんにほとんど食べられてしまった。だから補充の為にも買いまくった訳だ。
今回購入したのは2店舗。どちらも基本は
ただし仕上げはそれぞれ異なる。
一方
食べ物の好みとしては私は軽めで甘めのものについ惹かれてしまう。パンザロットの林檎味は生地の中にバターを効かした焼林檎がたっぷり入っていて私好み。
バター入りの何処が軽めだなんてツッコミは無しの方向で。
一方リディナはがっつり系が好みだ。
確かに美味しいけれど私にはちょい重い。
「でもこの上でおにぎりをある程度作っておけば当分は大丈夫かな。そう言えば新しい調味料を作るって言っていたよね。どんな感じ?」
そうだ、マヨネーズを作るのだった。正確にはツナマヨ入りのおにぎりを。
ただその前に試してみたい事がある。思ってもいなかったものが手に入ったのだ。
「調味料の前に試してみたいものがある。うまくいくかはわからないけれど」
「それって市場で買ったあのカサカサの黒っぽい奴? マウロとかいうみたいだけれど」
「そう」
乾燥させた海藻で、西海岸の南の方で食べられているらしい。使い方はスープに入れたりサラダに入れたり。
だが私の目にはこの海藻、岩のりに見えたのだ。ならば日本人として試してみねばなるまい。板海苔が出来るかを。
板海苔の作り方って確か、簀子に薄く広げて乾燥させればよかったのだろうか。しかし簀子なんてものはここには無い。代わりに魔法を使おう。
金属製のバットに水で戻した岩海苔を出来る限り薄く均一に、穴が出来ないよう伸ばす。
金属製のバットだから当然そのままでは綺麗に乾かない。だから魔法だ。水属性レベル2の水分除去、つまり乾燥魔法で丁寧に乾かす。
さて剥がれるか。大丈夫、綺麗に剥がれた。しかも思ったよりいい感じの出来だ。よしよしこれは量産決定。
「その黒い紙みたいなの、料理に使うの?」
「そう。おにぎりや寿司の必需品」
そう言って思いつく。そうだ、太巻きを作ろう。それも刺身や他の具材をたっぷり入れた豪華な奴を。日本にいた頃、節分に馬鹿高い値段で売っていたような。
その為にもまずは板海苔を量産だ。広げて乾かし剥いでと……
「フミノ、ゴーレムを操縦しながらで大丈夫? やり方がわかったから私が作るよ」
少し運転がよたったのがバレてしまった模様だ。周囲に人がいないとつい運転もいい加減になる。
ここはリディナにお任せして安全運転に専念するとしよう。
「お願い」
「買ったマウロ、全部この紙みたいなものにしていいの?」
ちょっと考える。海苔のお吸い物も欲しいかな。
「今日はとりあえず10枚でいい」
「わかった。作っておくね」
さて、作るべきはおにぎりと握り寿司と太巻き。ついでに細巻きもリディナにお願いしようか。
魚系の具材は刺身に漬けにネギトロにツナマヨにと。マグロはなかったけれど鰹っぽいいい感じの魚が手に入った。
他にも新鮮な魚はたっぷり購入している。ぶりっぽいのとか鯖っぽいのとかマトウダイに見える奴とか。
魚以外の具材は何がいいかな。まず厚焼き玉子は必須だろう。きゅうりっぽいのとアスパラっぽいのは購入したから是非使いたい。
かんぴょうは流石に無かったが似たような瓜は買ったので今度レッツ自作だ。でも次回かな使うのは。
あとマヨネーズも作らないと。まずは日本風のを作ってからリディナに相談してみよう。
ひょっとしたらこの国にも同じようなものがあるかもしれないから。
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