学校に於いては塩対応ですが、エッチ中は別人。どうやら幼馴染のおうち時間が発動したようです。

雲川はるさめ

第1話

俺の名前は山吹シンジ。現在高校二年生。

夏のある日のことだった。

部屋でゲームしてたら父親がノックもなしに部屋に入って来て言う事には。


「シンジ、実はな、父さん...

再婚しようと思っていて」



俺はゲーム機から顔を上げた。


「え...」


「相手はお前もよく知る女の人なんだけど...」




「これからその、お前の新しいお母さんと、

その、えーと、なんだ、義妹になる子が家にやって来るんだ」


「今から!?」


「うん、まぁそうだな。それで、言いにくいんだけど...父さん...」


「何?」


「あ、いや、待って。あとで顔合わせした、そのときに

話すことにする」


「はぁ!?」


俺がこんな会話を父さんとしてたとき。

ピンポーンと呼び鈴が鳴った。


「あ、ふたりが来たみたいだ」


父さんは、俺の部屋をあとにした。


自分の部屋に一人残された俺は焦燥感に苛まれた。

俺の母さんは俺が小さい時に乳がんで他界した。


父さんは今、43歳。


まぁ、男ひとりで寂しいのも解るから

再婚しようと思う、と言い出したのは百歩譲って

許せるとしても、部屋に入って来ていきなし、再婚の話、それから直ぐに呼び鈴が鳴って、ふたりが来たみたいだとか言われても、話が早過ぎて付いていけねーよ。


「父さんのバーカ」

俺が部屋で悪態をついていると、

トントン...。

ドアをたたくノックの音がした。

粗雑な父さんは基本的にノックはしない。

もしかして。その例の、さっきの父さんの話にでてきたふたりが。


俺の部屋のドアを遠慮がちにトントンと

たたいているのかもしれなかった。


俺はごくりと唾を飲み込んだ。

父さんは再婚相手のことを。


俺のよく知る人物だと話したが。


果たして誰だ...?




俺の部屋のドアの向こう側から。


「入ってもいいかな...?」


綺麗なソプラノボイスが聞こえてきて、

俺は、

「はい」と返事をした。


やがて。

ドアが開き、遠慮がちに足を踏み入れた妖艶な女性。ぼんきゅっぽんのスタイル。

茶髪の長い髪の毛、巻き髪にしてハーフアップにしてた。滅茶苦茶美人な女の人。

服装は滅茶苦茶派手。胸の大きく開いた赤いトップス。

下は、黒のタイトスカート。見るからに、

キャバ嬢のおねえさん、て感じ。

てか、水商売やってんだよな、このひと。

銀座のとあるクラブのホステスでNo. 1。

俺はそれを知っている。


それから、その女性の娘が、遠慮という言葉など一切彷彿とさせない所作で、俺の部屋にドカドカ足を踏み入れた。


「シンジ、おじゃま!」




父さんの再婚相手は。


最悪中の最悪。


受け入れ難いのは、

再婚相手の娘が、俺の幼稚園時代からの幼馴染の真島マヒロだということだ。



仕草、口ぶり、俺への態度のデカさからして。


大嫌いな奴なんだ!!


「父さん!!」


ドアの陰から、ひょっこりと顔を覗かせた

父さんに向かって、俺は嫌な感じを込めてそう呼びかけた。


父さんは至極、申し訳なさそうに、

顔を半分、此方に見せながら謝罪してみせたんだ。


「すまん、シンジ。非常に言いにくいんだが、

もう籍入れちまってな。今日から、てか、今日、このときから4人で住むから。宜しく頼む」


「はぁ!?」


「そんな急な話、飲み込めるわけねーよ!!」


あまりにも急だった。

俺は反論したが、

大嫌いな幼馴染マヒロとある日突然、一緒に住むことになった。親父は幼馴染の母親と再婚した事をずっと黙っており、俺に反対されたら面倒だと思ったのか、その辺は不明だが、

もう籍を入れてしまったという。


「それがな、シンジ。新型ウィルスのせいで

水商売を始めとしたサービス業が相次ぐ経営難でな。マヒロちゃんのお母さんも勤務先のクラブが閉店に追いやられて、仕事がなくなり、

家賃が払えなくなっちまったんだ」


「だから、俺たちと一緒に住むことにしたんだよ」


「.....っ!!」


「ごめんね、シンジくん。

本当に急で...私達、困っているの...」


この時。

マヒロは強がっているのか、唇をきゅっと

噛み締めていた。


「そういう事情なら仕方ないです...」


「ありがとう...」


こうして、俺は渋々、マヒロ親子の同居を認めたわけだが、良いこともあったんだ。

夕飯時、

マヒロのお母さんが肉じゃがを作ってくれ、

その味に感激した。


「う、うまい...!」


「ほんとー?良かったぁ!!」


でも、嫌なこともあった。

マヒロと醤油差しを取ろうとしたら

手がぶつかり、マヒロにめちゃくちゃ嫌な顔された。


「ちょ、シンジ!気安く私に触らないでよ!」


「な... !お前がぶつかってきたんだろ..」


「まぁまぁ、落ち着いて二人とも」


美人なマヒロママに宥められ、

事なきを得たが、

折角の夕飯の時間が喧嘩っぽくなっちまってた。

俺は美味い手料理に舌鼓をうって上機嫌だった。


しかし、直ぐに事態は暗転した。

俺は機嫌が悪くなる。

父さんの一言が聞き捨てならなかった。


「あのな、シンジ..」


「何?」


箸を置き、ご馳走さまでした!と言わんとしてる俺に父さんは神妙な顔して俺に言ったんだ。


「お前の部屋、綺麗だったよな?」


「俺の部屋?」


「うん、お前の部屋」


「あ、まぁ、俺的に部屋の中の整理整頓は心がけているってゆーか」


「我が家が狭いのは知ってるだろ、シンジ」


「うん、部屋数ないよね」


「父さんの部屋と俺の部屋、それから

リビングにキッチン、それから物置部屋しか

ないね...」


「だからな...」


「だから?」


「お前、今夜から、マヒロちゃんと一緒に

寝てくれ」


「はぁ!?」


ガチャン...!と俺はテーブルを叩き、

立ち上がった。


続けて言った。


「嫌だよ、俺!ぜってー、そんなの!

どーして俺がマヒロと同じ部屋で寝なきゃ

いけねーの!?」


マヒロをチラリと一瞥すると、

唐揚げを頬張りながら機嫌が滅茶苦茶悪そうだった。


ぶすっとしてた。


幼馴染だが、犬猿の仲とも言える幼馴染

と一緒の部屋で寝るなんて、誰がどー考えても常軌を逸しているだろう...!


「一緒に寝てあげてもいいけど?」

ブスッとしながらマヒロが茶碗の上に箸を揃えてからそう返答したんだ。


「はぁ!?そこは嫌って言えよ。

私はリビングで寝ますって言えよ!!」


マヒロはボーイッシュ故、色気もへったくれも

ないが、一応、性別上はオンナ。

年頃の男女が部屋一緒に寝るとかダメだろ。

しかし、言い出しっぺの父さんは

完全に俺とマヒロの寝室を一緒にする気だった。



「お、マヒロちゃん。悪いな」


「シンジに襲われそうになったら、

叫べば、直ぐに飛んで行ってやるからな!」


父さんはふざけてそんな事を言ったが、

俺的に、だーれが、こんなオンナに

手を出すかよ、って所存だった。


だからハッキリ言ってやったんだ。


「父さん!ボーイッシュな女だぞ。

大丈夫だよ...!」


「うーん、そーかなぁ。マヒロちゃん、

ママに似て、巨乳だから、心配しているんだ」


た、確かに。


マヒロの奴は推定Hカップはあるだろう、

胸でか女だった。


だから、少なからず、

ショートカットで男みたいながたいの女子だが、


高校には、


マヒロのおっぱいに惚れ込んだ

男、

何人かに告られていたよーだった。


かくいう俺の親友の男も、


「マヒロちゃんの胸に顔を押し付けて

埋もれてしまいたい」


などと、馬鹿なことを言っていた。


結局のところ、俺はマヒロと俺の部屋で寝る羽目になった。

マヒロは床。俺はいつも通り、ベッドだった。


「シンジ!寝ぼけて私を、踏んづけたりしたら

承知しないからね!」


「それは大丈夫だろ、多分だけど!」


「それからさぁ、絶対、私の方に落ちてきたりしないでよ!!」


「シンジ、寝相悪そうだし!」


「いやいやいや、それはねーよ。

百パーセントない。俺はいつもベッド上で寝てて、床に落ちたことなんか、断じてないんだ」


「もう、電気消すぞ」


「おやすみ、マヒロ」


フッ、と電気が消えて。


カッチカッチ、という時計の音がやたらと

大きく聞こえてきて。


普段はどーでもいい物音が。


マヒロがそこそこ隣にいるせいか、

やけに俺は落ち着かなくて、

小さな機械音が耳に残って気持ち悪かった。


そんな矢先のこと。


ピカッ....ゴロゴロ...



急に部屋が明るくなった。


そして、すぐにまた暗闇に包まれた。


ガッシャーン!!



落雷のあと、

バシャバシャバシャバシャ...!


という強い雨音がして、

外は、酷い雷雨なのだと知った。


「し、シンジ...!!」


俺は背中に声を受けた。


「え?」


あまりに近くに聞こえたので思わず振り返ると、

マヒロがすぐ横で、両膝立ちしていた。


「い、一緒にねよ?」


「は、はぁ!?」


大慌て、俺は電気のスイッチを押そうとしたその手を、マヒロが制した。


「ちょ、私、かなり薄着になってて恥ずかしいから電気付けないで」


「えええ」


目が慣れて。


よくよくマヒロを見ると、たしかにかなりの薄着のようだった。


キャミソール一枚だった。



「な、なんだよ、おまえ、パジャマはどーした?」


「脱いだ。この部屋、蒸し暑いから」



「あー、えーっと。

それはいいとしてもな。どーしておまえ、

急に一緒に寝ようだなんて?」


「か、雷よ...」


「は?」


「雷が怖くて。シンジがそばにいて添い寝してくれたらきっと眠れると思うわ」


「ええええ」


「お願い、シンジ」



いや、その、目の前にデカすぎる胸があったら、色んな意味で何か間違いを、犯してしまいそーでこわいな。


俺は心の中でそのセリフを吐いたつもりだったが、


いかんせん、口から漏れてた。


あまりの幼馴染の変わりように、

油断したのかもしれなかった。



「いいよ。間違いを犯しても」


「私、叫ばない。

声を押し殺して、耐えちゃう」


「シンジのお父さんを呼んだりは、

絶対しないわ...」


その後。


ボーイッシュな幼馴染マヒロが。


本気出してきて。


もうね。


セクシー美女化して、俺のベッドに潜り込み、

俺の上パジャマに手を突っ込んできた。



「や、やめ、やめろ...」


「やめないよ?だって、シンジのこと、

物心ついた頃から大好きだったんだもん」


どーやら、マヒロは。


ツンツンした幼馴染だと思っていたけど。


実はデレデレも持ち合わせたツンデレ幼馴染だと、今宵、この瞬間に知ったのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学校に於いては塩対応ですが、エッチ中は別人。どうやら幼馴染のおうち時間が発動したようです。 雲川はるさめ @yukibounokeitai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ