第14話 長い物には巻かれたいけど物分かりは良いとは限らない









 「え?4年も続いたってそれって結成してからほとんど活動してなくないか!?」





話の大半を聞き終えたセイが思わずツッコんだ。



 「うん。僕たちほとんど活動してないんだー。この1年も戦いの調子を取り戻すために週一くらいで再開したの。新しいギルド長さんは僕らの事信じてくれているんだ」

 「それで活動再開したのか・・・。週一でCランクに上がったんなら凄くないか?平均1年半だろ?」

 「まぁ、元々腕は皆んな良い方だからな」

 「才能あんのにとんでも無いクズに目をつけられたって訳か」

 「まだ、全然元には戻れないけどこのままじゃアイツらの思う壺だって思ったの・・・。だから少しづつ進むことにしたの。・・・中々上手くいかないけど・・・。」



性格異常パーティーかと思ったけど、原因作ったクズがいる事が分かっただけでもスッキリした。



 「なんであのクズパーティー放置してんだ?いくら領主の息子でも流石に領主の耳にも入るだろう?もしかして、親も同類なのか?」



皆無言であるという事はそういう事なのだろう・・・。変質者とこのパーティーがヤバいだけだと思っていたのに、それ以上にヤバい奴がいるという事実は心折るわ。しかも俺喧嘩売った後だし。思わず深いため息を吐いた。


あーあ、俺の異世界ライフってチートも無いし、ろくな奴にしか絡まれないし酷くね?元の世界で犯罪犯した訳でもないし、当たり障りなく生きてきたのにこんな仕打ちって・・・神様いるならゲームでもしながら片手間程度で仕事してんじゃね?



 「まぁそういう事で人数揃わない事多くてさ、それでミラと2人でダンジョンに潜っている時にセイに出会ったんだ」

 「セイさんは私達の事知らないみたいだったし、宝箱連れてて面白いし、なんか久しぶりにパーティーで冒険するのが楽しくなっちゃって一緒に冒険したくてリーダーとユリアナに話して勝手にパーティーに入れちゃったの・・・本当っごめんねセイさん」



いつものミラらしくなく神妙に謝ってきた。まぁ金の亡者になった原因も分かったし、俺らと一緒に冒険したいと思ってくれているなら悪くは無い。楽しくやりたいと思っている事が重要なんだよな。

ギスギスしたパーティーとか嫌すぎる。そんなの仲が大して良く無いクラスメイトで組む羽目になった修学旅行位地獄だもんな。バスの時点で帰りたくなるわ。



 「そういう事なら俺も遠慮なくこのパーティーに入るわ。俺あのクズに喧嘩売ったしもうどこのパーティーにも入れなくね?けど俺はこのままこのパーティーをギリギリCランクに留めるつもりないから。取り敢えずAランク目指すぞ!!」



 「えっ!?セイちょっと待てAランクってこの領に2パーティーしか居ない位の強さだぞ!?」

 「ヘェーソウナンダー?ーー問題ない!!俺らなら行ける!俺は微力だからみんなよろしく!!」


実力が無い俺はみんなの補助しかしないけどな。無理に活躍しようとはしない、そこは弁えてる。根性論とか才能ない奴には限界越せないからな。



 「Aランクっていったら相当お金貰えるよ!!私頑張る!!」

 「ミラは上位の回復魔法覚えような?お前なら出来る!!」

 「うん!私なら出来るっっ!!」

 「Aランクになれば金も地位も名誉も手に入る!!はいっ一緒にっ!!」

 「Aランクになれば金も地位も名誉も手に入る!!」

 「Aランクになれば金も地位も名誉も手に入る!!はいっ一緒にっ!!」

 「Aランクになれば金も地位も名誉も手に入る!!」



金で動くのはちょろいなと思いながら褒め、どっかの進学塾の様に鼓舞する。ミラはお金に釣られてしっかり乗ってくれた。実力がつけばその内、心に余裕も出来てくるだろう。



 「そういやマリアは今どうやって戦っているんだ?」

 「僕はカルトに剣を持たせて戦っているんだー」



黒猫のぬいぐるみカルトを見せてきた。身体が剣士らしく無い理由とエドワードを忘れたく無いから敢えて剣を使っているんだという事を理解した。


 「そっかー、カルトが剣で戦っていたのかー!凄いなぁ!!ぬいぐるみを操るって事は呪術師とかなのか?」

 「うんっ!!僕呪術師!!でもねーカルト介して魔法も撃てるんだよー凄いでしょー褒めて褒めてー」

 「それは凄いなっっ!!マリアはなんでも出来るお利口さんだなっ!!」



マリアを抱きしめ頬にキスをしながら褒める。・・・ご機嫌で何よりだ。



 「兄貴は新しい魔法銃に慣れることからかな〜・・・。一緒にダンジョンに潜ったり狩りに出かけよう!!俺レベルめちゃくちゃ低いから一緒に強くなろうよ兄貴!!兄貴と一緒に冒険できるのすごく楽しみだっ」

 「そっそうだな!!!俺はお前の兄貴分だからなっ!!ビシバシ鍛えてやるからしっかり付いてこいよ!!」


うわー、厳しい言葉とは裏腹にめちゃくちゃ嬉しそうな顔隠せてないよアクスの兄貴。


ーー全員5年目でやっと両足だけで立てた状態なんだろうな・・・。



 「みんなの苦しみを理解は出来ないだろうけど、俺はこのパーティーを信じるし事件を風化させる気はさらさら無い。みんながもう諦めて呑み込んだ奴がいるなら悪いが、関係なかった俺だけが許せて無いのかも知らんけど俺はお前らの心と4年間に影落とした某四天王や領主派のギルド職員・冒険者・自警団にどれだけの歳月をかけても見返す気だから」


ーーぱこんっ!!



シロも同意しているのか反応した。今まで色んなゲームやって来たから、その中の色んな方法を試してみようと思う。最強に早くなれる攻略法がどこかにヒントがある可能性がある。それを見つけ出してこの1年以内にAランクに上げる!!



 「見返すって具体的には何すんだ?」

 「ーーそれはやっぱり冒険者ランクを最上位ランクにする事だろ」

 「私達にできるかなぁ〜?」

 「出来る出来る。なんて言うのかな〜・・・んー・・・ゲームで選択出来るレベル1のキャラの中から選んだ時『コイツらが1番最強なんじゃね?』って最終的にゲーマーがたどり着くメンバーに選ばれるって感じなんだけど分かんねーよなー・・・」

 「あぁ。全然意味分かんねー」

 「んー僕らはパーティーとして強いって事?」

 「まぁそんな感じだな。問題はユリアナって魔法使いの事なんだよなー・・・魔法使いって結構使い勝手悪かったりするから出来ればステータスチェックしたいんだけど・・・」



頭に柔らかいものが当たり、後ろから艶かしい腕が俺を包む。なんか良い香りがする。



 「てめぇっ!!どこ行ってたんだよ!!今日は冒険者活動するって言ってただろーがっっ!!!また知らない男と寝ていたとかぬかすんじゃねーだろーなぁ!?」


 「違うわよー失礼しちゃうわね。新しい仲間がどんな男なのかベッドに忍び込んだんだけど色々確かめてたら、うっかり寝ちゃったのよー。それから急に頭を何かで押さえつけられて痛かったから、痛みを止めるためにこの子の香りのするベッドで寝てたのよ」


何を確かめたのかはスルーしよう。耳元で『ね?』と囁いて俺の顔を指先で妖艶に撫でてくる。ーーーん?



 「あ、お前は今朝俺のベッドに全裸で寝てた痴女か?」


 「ひどいっっっ!!!痴女だなんてっっ!!」

 「痴女以外に・・・あ、変態か・・・。」

 「もう!!セイくんって見かけによらず奥手なのかしら?」



やめろ上から服の中に手を入れんなや。マリアが俺の膝に座ってんの見えねーの?子供の教育に悪いだろ!!マリアの耳が赤くなってんじゃねーか!!



 「見かけによらずってのが良く分かんねーけど、・・・女と付き合った事は無いな」


手を服から抜き取ると、また入ろうとするので軽く手の甲を叩いた。


 「いやーんっっっ!!セイくん私の彼氏になりなさい」

 「え、嫌だ」

 「私の全部見せてあげるから♡」

 「それよりステータス見せろよ」

 「そうだよーユリ、セイさんにステータス見せてあげて」

 「早くしろや!!こちとらとっとと今後の方針決めなきゃなんねーんだ。てめぇのしょうもねー欲情に付き合ってる暇はねーんだからなっ!!」

 「・・・セイくん見てもいいわ」

 「ありがとう」



俺の首に顔を埋めて小さく返事をしたユリアナの頭を撫でて礼を伝えた。一瞬ユリアナの身体がビクッと動いたから、驚かせてしまったかもしれないので申し訳なく思う。


一緒にみんなのステータス確認を早速行うことにした。



  




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