第7話 変質者≠変態







 「セイは何か質問はあるかい?冒険者じゃないから知らない事が多いだろう?」

 「何がわからないのかが分からない状態なんで・・・」

 「セイは俺らに常識的な事教えて欲しいっつってたから、そんなもんだろうな。知りたいことに気付いた度に俺に聞けよ?」

 「ありがとう、兄貴」

 「私にも聞いてよ〜?」

 「あぁ、頼むな」


お前には教材に載ってそうな事だけな、とブレない気持ちを心で呟く。


 「そういえば俺らがダンジョンで見た怪しい奴がお尋ね者の変質者なんですか?」

 「魔物を召喚したのなら間違いないだろうな」

 「魔物を召喚したらみんな変態なんですか?」

 

ギルド長がきょとんとした表情でこちらを見ている。アクスもミラも同じ様な顔をしている。あれ?なんで?俺結構普通の質問したよ??こういうの心配になるからマジでやめて。



 「変態??」

 「でも俺が変質者に間違われたのは宝箱のシロを抱き締めて頬擦りしてたからなんじゃないんですか?」

 「うんっ!!引食い箱を召喚したんだと勘違いしちゃって・・・ごめんね?てへっ⭐︎」


上目遣いで自分の可愛く見えるベストを熟知したポーズでミラが謝ってくる。裏の顔知らなきゃ騙されるだろうが、お前の裏の顔ばかりしか見ていない俺には一切通じないぞ?まだバレてないとか思って無いよね?


 「キミが何を思い違いしているのか分から無いが、変質者とは『魔物と通ずる者』を指している。ダンジョンの中で自然に発生する魔物とは違い、魔素の多い場所ならダンジョン以外でも呼び出す力を持っている」

 「あ・・・変態じゃ無いんですね・・・。え?あれが外で出てくる可能性があるんですか!?めっちゃヤバいじゃ無いですか!!盗賊とか心配していたのにあんな強い魔物が出るなら旅、無理じゃん!!」

 「近年この国以外にも外で魔物が現れた報告が頻繁にされるようになった。今回の変質者を生捕りにして、仲間を吐かせる気であったんだけどAランクの冒険者でも捕まえる事が出来ないかも知れないな・・・国と他のギルドに報告しておかないとね」


 「セイ、冒険者になってレベル上げすんだろ?俺達のパーティーに入んねーか?」


 「・・・え・・・?」


1番選択肢に無い事をアクスに言われ思考が停止した。Dランクの冒険者4人揃って5年もかかってCランクになんとか上がったパーティー・・・残りの2人もヤバそうなメンバーなのは嫌でも分かる。コツコツ、シロと足跡ダンジョンで鍛えようと思っていた。アクスだけに誘われたらすぐ一緒に組んだんだろうけど・・・他が博打打つレベルでヤバすぎる。平々凡々のステータス・性格なら当たりの内だ。恐らく残りの2人のメンバーもそうでは無いだろう。

悩んだ末結果を先送りする選択肢を選ぶ事にした。明日冒険者ギルドで残りの2人がどういった人物か調べてからでも遅くは無いだろう。取り返しのつかない選択肢は選ばない『持ち帰って検討します』は大事だ。


 「誘ってくれて嬉しいんだけど、少し考えたいから明後日の返事でもいいか?」

 「あぁ!検討してくれ!!」


アクスは俺の先延ばしの返事に破顔した。うっわ〜そんなに嬉しそうにされたら断り難くなんじゃん・・・。ーーとか思っても、ちゃんと調査してからじゃ無いと返事はせん!!!俺、貧乏くじ引く気ねーし。7:3で断る気持ちが大きいんだけどね。3はアクスと冒険は楽しそうだってだけなんだけどね。


 「よしっ!受付で肉と討伐証明部位を売って山分けすっか!」

 「やったーーーーーっっ!!今日はご馳走だっっっっ!!」

 「遂に2人の金でタダ飯食える時が来たんだな」

 「あ・・・お、覚えてたよぉ?」


ミラが「あの店まだ開いてたかな」という小さな声を拾った。お前絶対安い店連れて行く気だろ・・・。


 「今回の情報料として私がご飯をご馳走しましょう」

 「やったぁぁぁぁぁっっーー!!!無駄金落とさず済んだぁぁっっ!」

 「ーーギルドの食堂に伝えておきますので」


オブラートに包めよ。ギルド長めっちゃ苦笑いやん、羞恥心捨てて生まれてきたの?羨ましいわ。周りは可哀想でしか無いけど。


 「セイ、なんか悪ぃな。俺らが責任取って奢るはずだったのによ?」

 「いや、俺はただで食えるなら別に良いよ。気にしてくれてありがとう兄貴」


やっぱ、苦労を爆買いする人間は出来が違うね。アクスの爪の垢丸めて卵位の大きさの団子にして食うぐらいじゃ無いとミラは変わらないだろうな。いや・・・食っても変わらんわ、きっと。

早速俺達は討伐報酬を貰い、ギルド内にある食堂で食事をする事にした。


俺はこの世界の文字が読めないので酒とオススメを頼んだ他、アクスのオススメも頼んだ。アクスは酒以外はつまみを頼んだ様だ。タダ飯食えるからってたくさん頼まないとか品が良すぎだろ。ミラは狂気のドジっ子らしくタダ飯に乗じてアホの様に頼んでいた。店に迷惑かけんな。それ自分で食えよ・・・。

シロが食えるのか分からないので俺が頼んだものの中から、食べられそうな物をあげてみようと思う。もし食べられそうな物がなかったら、帰りに肉でも買って帰ろう。肉も食えるのか分からんが。


 「そういや2人のいるパーティーの名前って聞いてなかったけど?」

 「そういやそうだったな、うっかりしてたぜ」

 「私達のパーティー名は『無慈悲なる運命さだめ』だよ!!」

 「ヘェ・・・カッコイイネ」



     だっっせぇぇぇぇーーーーーっっっっっっ!!!!



何2人とも嬉しそうに照れてんだ!?この世界の多数派の思考が何か早急に知る必要が出て来たわ。

急に厨二病感が濃くなったな・・・。そりゃ、アクスの魔銃撃つ姿は厨二心をくすぐるけど名前はキツいわ。なんでこんな黒歴史になりそうな名前にしたんだ?1割も入りたくなくなったわ。恥ずかしくて死ねる・・・あ、羞恥心捨てて生まれて来たヒーラーと精神が正統派ヒロインなヤンキーがいるから意見する奴いないのか・・・。


 「えっと・・・リーダーって誰?兄貴?」

 「ん?俺じゃねぇよ。剣士のマリアって奴がリーダーだ。もう1人のメンバーは魔法使いでユリアナって奴がいる」

 「へぇ〜女3人に男1人とかハーレムじゃん」

 「え?違うよぉ?2・2だよ?」

 「は?今聞いた名前でどっちが男なんだよ」

 「マリアだ。マリアは洗礼名って言ってたな〜・・・」

 「いくつも名前持ってるよ?女性みたいな名前で嫌って言ってたけど、今はそれ使ってるんだって」

 「ヘェ〜・・・カワッテルネ」


もう既に一名がヤバそうな雰囲気が漂っている。ぶっちゃけ今すぐパーティー断りたい。何で明後日って言ってしまったんだっっ!!ここで断る勇気のない自分を殴りたい・・・そして返事を明後日って言ってしまった過去の自分の息の根を止めたい。




話している間に注文していた物が運ばれて来た。めちゃくちゃ美味しそうなんですけど!!!今は目の前の料理に集中する事にした。一口食べてみるとお肉が柔らかく煮込まれて大変美味しい。この世界の食事は当たりじゃん!!ご飯不味い世界に転生しなくてよかった!!!!

早速シロに食べたいか聞いてみる。



 「ほら、シロお前ご飯は食えるか?」



ーーーガタガタ



揺れただけで食べる気配はない。どうやら宝箱だと食べなくても問題はない様だ。大人しくしているので隣の空いた椅子に乗せみんなで食事と会話を楽しむ事にした。



ミラは結局食べ切ることが出来ず、残りはアクスが代わりに食べていた。もしかして・・・こういう事多い?だからアクスはつまみしか頼まなかったのでは・・・という気付きたく無い事に気付く。残飯処理係なの?報酬がいつも少なくてアクスがあまり頼まないから、ミラがわざと残しているのかとも思われそうだが今日はギルド長の奢り。そういう気遣いの必要性無いのにも関わらずやっていると言うことは、十中八九そういう事なのだろう。


アクスが不憫だ・・・。









 

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