第2話 凸凹コンビ
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「・・・ねぇっ!ねぇってばっっっ!!先輩っっ!」
「ーーあぁん?小せぇ声で聞こえねぇんだよっっ!!なんだぁ?闇トカゲの群れでも居たのかぁ?」
通称足跡ダンジョンと呼ばれるダンジョンがこの2人の男女の今いる場所である。女は優等生かとでも言う様なキッチリと結った銀髪おさげの可愛い少女で、男の方は長身で金髪をポニーテールに結ったイケメンの部類に入る様な容姿で雰囲気は完全にヤンキーである。
「今日は魔法使いと剣士が用事で休みってのにテメェが経験値稼ぎしてぇとか言いやがったから来たのによー、結局ヒーラーのテメェは戦う訳じゃねえから大変なの
「しーーーっっっ!!静かにっっっっ!!!この角曲がったところに宝箱抱いて話し掛けてるヤバい奴が居るんだってば!!最近ダンジョンに出る変質者ってアイツのことなんじゃ無い!?」
女は怠そうに床に座り込む金髪の男を手招きで呼ぶ。ちょっと気になったのか金髪の男も重い腰をやっと上げ後ろから覗き込んだ。
2人の目線の先には床に座り、抱き抱えた宝箱を気持ち悪いくらい頬擦りする男が居たのだ。
「うっわ・・・なんだありゃ・・・めちゃくちゃヤバい奴いんじゃん・・・。間違いなくあれが噂の変質者だな」
「・・・どうする?私達で捕まえられるかな・・・?」
「魔法使いが居ねーから俺の魔法銃で雷魔弾ぶち込んだらイチコロだろ」
「殺しちゃダメだよ!変質者は殺人は犯していないらしいし手配書には生きたまま捕らえる事って書いてたよ!殺したら私達が冒険者ライセンス取り上げられた上に牢屋に入れられちゃうよ〜」
「ちっ!仕方ねぇな。威力弱めるのは得意じゃねぇがやるしかねーな」
金髪の男はライフル銃の形をした魔法銃を静かに構えた。男が引き金を引く時女の自身のおさげの先端にある毛束が手に触れ、緊張していた為に正常な判断が下せず虫が手に登って来たと勘違いし驚いて慌て振り払おうとした彼女の手が魔法銃にぶつかった。
「あ、やべぇ」
金髪の男の口から漏れた言葉と共に大きな閃光を放った魔法銃の銃口から、暗かったダンジョン内が外にでもいるかの様な明るさになり宝箱を抱き抱える男目掛けて一直線に光が走った。
この時金髪の男は冒険者ギルドになんと説明しようか考えていた。おさげの女は当たらない事を祈った。
ーーードォォォーンンッッッッッ!!!
直後祈りも虚しく轟音と共に男に命中した。直撃した煙がダンジョン内に充満し真っ白になった。そもそもこの雷魔法の魔法銃は威力と範囲が広く狭いダンジョン向きの攻撃では無い。
普段は剣士と魔法使いが中心となって攻撃し、
煙がだいぶん収まった辺りで2人は恐る恐る遺体の確認に向かった。
ーーごふぉごふぉっっっ!!
「「!?」」
「じろ゛ぉぉぉ・・・じろ゛ぉぉぉ・・・ごふぉっごふぉっ!!じろ゛ぉぉぉ・・・」
煙が消えて現れたのは先程狙った男だった。
「お、お前生きてたのか!?俺が言うのもなんだが生きてて良かったぜ!!」
「良かったぁぁ〜・・・」
「お前らか・・・?俺のシロを殺したのはお前らか・・・?」
男は幽鬼の如く恐ろしく恨めしい顔でふらふらと2人に近寄って来る。
「ちょっちょっと待て!!なんの事だ!?俺はお前を狙って打ったし、お前以外に居なかったじゃねーか!!俺じゃねぇ!!」
「・・・俺を狙って撃った?ーーーーやっぱりお前らかぁーーーーーーーーっっっっっ!!!」
男の手には刃物が握られている。殺意を感じ2人は急いで戦闘の準備を行うが、ライフル型の魔法銃は近接戦闘向きでは無いので構える前に男が刃物を振りかざした。
ーーがたがたがたがたがたがた!!
ーーばこんばこんばこんっっ!!!
どこに今まであったのか男が抱いていた宝箱が自身を主張するかの様に、ガタガタ身体を揺らしアピールしている。その不思議な光景に2人は目を見張り固まってしまう。
「じろ゛ぉぉぉっっっっっっっっっっ!!!!!!い゛ぎでいだのがぁぁぁぁっっっっっっっ!!!!!!ごめんよぉぉごめんよぉぉぉぉっっっっ俺を庇ったばっかりに・・・痛かっただろぉぉぉ・・・もう大丈だからな、俺が守るからぁぁぁぁ・・・」
男は号泣しながら宝箱を抱きしめていた。
「せ、先輩・・・?一応謝った方が良く無いですか・・・?彼は怪我しませんでしたけど、何やら大切なものを攻撃したのは間違いないみたいですし・・・」
「テメェが言うな。元はと言えばテメェの所為だろ。威力を落とすのは調整が難しいのに邪魔してきたのは誰だ?あぁん?」
おさげの女は手を後ろで組んで知らん顔し、金髪の男のこめかみに青筋が立つ。
「おいっっ!!アンタ名前はなんだ!!」
宝箱と再会の抱擁を交わしていた男は自分に話しかけられている事に気付いた。
「俺の名前は・・・セイ、この宝箱は愛犬のシロだ」
男の本当の名は『緑樹 誠 (みどりぎ まこと)』外国の人に馴染みのない発音の仕方の名前である。男・・・緑樹 誠は名を音読みで名乗る事にした。親切と言うより名前の説明の件がめんどくさかったからだ。
愛犬と言って宝箱に名前を付けて紹介された事に2人は一瞬怯んだが、もし手配書の人間だとしても今は謝るべきだと金髪の男は判断した。
「俺はCランクの冒険者で
「アクス痛い痛い頭潰れるっっっっっ!!!」
アクスと名乗った男がミラと言う名前らしい女の後頭部を押さえつけながら、深く頭を下げた。
「ミラも謝れ!!!」
「はいぃぃぃぃっっっっっ!!!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃぃっっっっっ!!!」
鷲掴みにされた頭を押さえながらミラが泣きながら謝罪し始めた。演技で無い余りにも痛そうに悶える少女の様子にセイは引いている。
「・・・シロも怪我していないみたいですし、もういいっスよ。次はこんな事がない様に気を付けてくださいね?・・・あっ!!お詫びしてくれますよね?」
「あ?あぁ。こっちが悪ぃからな、でも無理難題は勘弁してくれ」
「えぇっっっ!?先輩何勝手に許可してるんですかぁ!!絶対とんでもない事求められるじゃないですかぁっっ!!私初めては好きな人とって決めているんですからっっっっ!!」
再び泣きそうに目を潤ませながら訴えるミラを、セイとアクスはシラけた目で見ていた。
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