異変
何たることか。明子がマフラーをしていないのである。奈緒は久しぶりに明子の顔の全面を労苦なく見た。唇が言葉に合わせて動くのを明瞭に見た。それは、奈緒に晴れやかな笑顔を浮かべさせた。そして同時に、どこかすっとしない、ぎこちない予感めいたものを与えた。
「どうしたの、何か雰囲気違うくない」
何気なさを装い、そう尋ねると明子は、少し視線を上にさ迷わせ、うーんとうなった。それは決して不快な逡巡ではなかった。このわずかな動作の間に、明子の中に負の感情は見当たらなく、むしろ、逆であった。明子はその変化を、前向きに捉えているように感じた。
奈緒の心に一抹の希望がわく。このまま明子が戻ればいいのに、そう思った。
しかし、どうにも奈緒のその独白には、妙な後味の引く余韻があって、奈緒自身それに首を傾けた。
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