第一部 双鐗の好漢

第一部あらすじ

  第一回から第十三回までのあらすじ


 晋が崩壊してはや二百年。天下は北朝の周・北斉、南朝の陳にわかれていた。

 周の将軍・楊忠と楊林の兄弟は北斉へと攻め込み滅亡させる。このとき、北斉の将軍であった秦彝は楊林との激闘の末に戦死した。秦彝の妻・寧夫人は息子太平郎を連れて難を逃れる。

 楊忠の死後、息子の楊堅は周を乗っ取り、隋を建国した。楊堅はさらに次男の楊広を大将として陳を征伐し、これを併呑した。また、北方の燕山に強大な勢力をほこっていた軍閥・羅芸も、楊林との戦いののち隋に帰順。かくて隋による天下統一がなったのである。(第一回~第二回)


 いっぽう、太平郎は山東の民間で成人し、秦瓊という名、叔宝という字をつけてもらった。侠士として遠近に名を知られるようになった秦叔宝だが、いつまでもニートを続けるわけにもいかず、友人の樊虎の推薦で捕り手の役目を与えられる。

 秦叔宝は山西・潞州へ流刑の犯人を護送していく途中、覆面の強盗に襲われている一団に助太刀し救出した。この一団は唐公・李淵の一家で、楊広のうらみを買ったため襲撃されたのであった。李淵は秦叔宝の恩義に深く感謝した。(第三回)


 潞州で公務を果たした秦叔宝だが、潞州知事の返書をもらうのに手間取り、そうこうしているうちに宿泊費が尽きて身動きがとれなくなってしまう。にっちもさっちもいかなくなった秦叔宝はやむなく愛馬を売ることを決め、二賢荘の単雄信を訪問する。秦叔宝はボロボロになった身なりを恥じて偽名を使ったので、単雄信は相手が名高き秦叔宝とは気づかない。(第四~第五回)


 馬を売って路銀を得た秦叔宝はさっそく帰途につくが、疲れがたたって道中で発病し倒れてしまい、道士の魏徴に救われる。亡き兄の法事のために魏徴のもとを訪れた単雄信は、再び秦叔宝と出会い、二賢荘での看護をひきうける。

 病が治ってやっと帰途につく秦叔宝。ところが単雄信が餞別にしのばせた大量の銀のため、道中で強盗と疑われ、揉め事の末に旅籠の主を死なせてしまう。処罰は燕山の羅芸のもとへの配流と決まった。羅芸の妻は秦彝の妹・秦勝珠であった。めぐりあわせから叔母夫婦と邂逅した秦叔宝は、いとこの羅成とともに燕山での生活を楽しむが、長らく顔を見ていない母のことが気になって仕方がない。羅芸夫婦は秦叔宝を山東に帰らせることを決める。(第七回~第九回)


 秦叔宝は山東に帰還し、羅芸の推薦で節度使の唐璧に仕えることになった。唐璧は越国公楊素の誕生祝を秦叔宝に護送するよう命じる。都・長安への道中、秦叔宝は友人の王伯当とその兄弟分である斉国遠・李如珪、李淵の娘婿である柴紹と出会い、旅をともにする。楊素へ祝いの品を届けた後、秦叔宝らは長安で元宵節のお祝いを見物して楽しむが、楊広の片腕宇文述の四男・宇文恵及が婦女暴行をはたらいているのを目にし、宇文恵及を殺してしまう。宇文恵及の甥・宇文成都により追い詰められる秦叔宝たちであったが、楊素の客分であった李靖の助けで難を逃れる。柴紹は李淵のもとへ、王伯当らはもとの拠点へ、秦叔宝は山東へもどる。(第十回~第十三回)



主要人物


主人公

・秦瓊(秦叔宝)

北斉の将軍・秦彝の遺児。小孟嘗・賽専緒とあだなされる山東の侠士。捕り手の役目につく。双鐗の使い手。ランキング16位。


・単通(単雄信)

山西の二賢荘に住む緑林の大親分で大富豪。槊の使い手。秦叔宝の人柄を敬愛する。李淵により兄を殺されたため深く恨む。ランキング18位。


・王勇(王伯当)

文武双方の科挙で及第したエリートだが、世に絶望して官途を去る。秦叔宝・単雄信と共通の友人。弓の名手。


・羅成

燕山公羅芸の息子で秦叔宝の母方のいとこ。若いが槍の名人。ただし軽薄なところがある。ランキング7位。



山東

・樊虎・連明

山東・済南の捕り手役人。秦叔宝の友人。


・唐璧

山東の節度使。羅芸の友人の息子。秦叔宝の上官となる。


・寧夫人

秦叔宝の母親。



山西

・王小二

潞州の旅籠の主人。路銀がつきて宿泊費が払えなくなった秦叔宝につらくあたる。


・蔡建徳

潞州の知事。まともな人だが秦叔宝にとってはなにかとめぐりあわせが悪い人物。


・金甲・童環

潞州の護送役人。秦叔宝を燕山まで護送する。



燕山

・羅芸

燕山に強大な勢力をほこる軍閥。


・秦勝珠

秦叔宝の叔母で羅芸の妻。


・張公謹

羅芸の配下で単雄信の友人。当初、燕山に配流されてきた秦叔宝の面倒をみる。


・伍魁

羅芸配下の先鋒官。秦叔宝をねたみ勝負をいどむ。



・楊堅

文帝。晋の崩壊後、分裂していた天下を統一する。


・楊広

楊堅の次男で晋王。陳征伐の総大将。李淵を恨む。のちの煬帝。


・楊林

楊堅の叔父。圧倒的な武勇をほこる隋の柱石。秦叔宝にとっては父の仇である。ランキング8位。


・楊素

隋の越公。楊姓だが楊堅の親族ではない。文帝の信頼の厚い大臣。楊広と手を組む。


・宇文述・張衡

楊広の懐刀。謀略を得意とする。


・宇文成都

宇文述の孫、宇文化及の息子。都の警護役。騒動を起こした秦叔宝らを追う。ランキング2位。



・李淵

隋の唐公。楊広に恨まれて襲撃されるが秦叔宝に救われる。単雄信の兄を誤って殺してしまう。


・柴紹

李淵の娘婿。



北斉

・秦彝

武衛将軍。済南を守って楊林と戦うが敗れて戦死。秦叔宝の父親。



・陳叔宝

陳の後主。聡明だが政治に興味がない。名前は叔宝だが秦叔宝とは別に関係がない。


・張麗華

陳後主の寵姫。楊広は彼女を手に入れようとはかるが、李淵は陳を滅ぼしたのは彼女だとして殺してしまう。

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