世界最強(物理)がヒロインなラブコメ
胡蝶の夢
プロローグ
衝撃的な出会いって、なんだろうか。
ジャンル問わず小説にありがちな展開?
初対面、あるいは再会した男女の間に発生する、運命の大奔流の起点?
まぁ、特に何か定義がある言葉ではないというのはその通り。
でももし巷でテレビだかなんだかの取材にあって、「衝撃的な出会い」とやらの実例を一つ求められたとしたら。
「世界最強系(物理)な転校生少女の登場の仕方」なんて、どうだろうか?
静かな教室にやけに響く、チョークの擦れる音。
「アイシャ・アブドゥラー・エブラヒムです」
小鳥が囀るような、心地よい声。
黒板に綺麗に縦書きされた、白いカタカナ。
「日本の名前と違って苗字に該当する部分がありません。なので名前で、アイシャ、と呼んでくださったらいいと思います」
自然に紡がれる日本語。
彼女の日焼けした、彫りが深い顔とはあまりにも相対的で、違和感を覚えずにはいられない。
「いろいろ事情があって、正式には明日から登校になるそうです。今日は挨拶だけですが、せっかくですので顔を見せにきました」
グローバリゼーション華やかなりし二一世紀。有体に言えば、彼女もいわゆる海外からの転校生というやつである。
…まぁ、もし彼女がそれだけだったら、非日常ではあるだろうが、そこまで驚くような部分はない。
彼女の登場が「衝撃的」たる所以は、その服装にあった。
「実は制服もまだ用意できていなくて。私服でこの場に立つことを許してください」
そう言って胸に手を当てる彼女の装い、上下ともに、濃緑・濃紺・茶色がふんだんに使われた独特の模様が施されている。
いわゆる、迷彩柄、というやつだった。
「これからよろしくおねがいします。では今日は、これで」
迷彩服を着た外国人転校生という、盛られた設定が過多な少女は、自己紹介の最後をそう締めくくった。
教室にいた誰もが呆然とするなか、宣言通り本当に挨拶だけをして彼女は、廊下へ通じる引き戸へと歩いていく。
その途中でふいに、彼女は立ち止まった。
肩まである短い茶髪をふわりと浮かせ、身を翻す。教室をゆっくり見渡した後、ある一点に向けて、彼女は淡い笑みを浮かべた。
「久しぶりですね、ユウ。また会いましょう」
それだけ言って、今度こそ彼女は本当に廊下へと姿を消した。
しばらく間をおいて、教室は日頃の喧騒を取り戻す。
ざわめくクラスメイト。集まる視線。
――転校生、このへん見てたんじゃない?
――アイシャさん、だっけ。ユウ、って呼んでたよね?
ユウ、って響きが一部でも名前にある生徒は、残念ながらこのクラスには一人しかいない。
さらに彼女が微笑みを浮かべた、その時の視線の先を探れば、もう偶然とは片づけられなくなってしまう。
「今日は早退しようかな」
俺――真崎優は、ため息をつきつつ、この後の戦略的撤退について模索し始めた.
世界最強(物理)がヒロインなラブコメ 胡蝶の夢 @skygoldofmash
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