おうち時間
弱腰ペンギン
おうち時間
「今日はパパ、一緒に居るからねー」
我が家には可愛い娘と、自慢の妻がいる。
娘は6歳で、ホントは幼稚園にいっているはずなんだけど、ちょっと風邪をひいてしまって、お布団で寝ている。
妻はリビングで仕事中だ。
「今のうちにパパもお仕事を片付けてくるからねー」
娘の頭をなでるとリビングに向かう。
リビングでは疲れてしまったのか、妻がテーブルに突っ伏していた。
「ママ。疲れたならお布団で休むかい?」
どうせリモートなのだし、今日の仕事を終わらせてしまえばあとは自由時間なのだ。
体調が悪いなら先に休んだってかまわないだろう。仕事的にも効率は良くなるはずだ。
「……」
妻の返事が無いのでちょっと心配になってきた。
ゆすってみても反応が無い。頭に手を当てて熱を測ってみたが、特に異常は見られない。仕方がない。娘と一緒に寝かせよう。
「ママ。お布団に運ぶからねー」
妻を娘の隣に寝かせると、娘がそっと妻の手を握った。
風邪をひいて心細いのと、ママを心配してのことだろうか。
相変わらず天使だ。
この間の運動会では転んでしまって怪我をしてしまった。その時、うちの天使を心配した体で駆け寄った男子どもの顔、絶対忘れない。
まだお付き合いは認めませんからね!
リビングに戻ってパソコンを見てみると、どうやら仕事は進んでいなかったようだ。
娘のことが心配で一日中起きていたから、眠かったんだろう。昨日は俺が仕事でいなかったから、一人で看病させてしまった。今日くらいはゆっくりしててもらってもいいかな。
「さて、俺も自分の仕事を始めるか」
パソコンを開いてメールボックスを開く。いくつか資料をダウンロードして、今日の仕事を確認する。
仕事を進め、お昼ごろになったので昼食を取る。ここら辺はきっちり出来るのがリモートの良いところだ。
昼食を取っていると、大家から電話が来た。
近隣から水道のにおいがきついという報告があり、近々点検の業者が入るそうだ。
困ったな。家では妻がリモートだし、娘も幼稚園がお休みだ。
……あれ、幼稚園?
あぁそうだ。幼稚園がお休みなんだ。
だから小学校に連れて行かなきゃいけないんだけど、風邪が長引いてしまっているからなぁ。
業者さんに入ってもらうのも、大変だし、まぁ、うん。その時は2人はホテルにでも泊まってもらおうかな。
きっと『家で仕事したいんだけど!』とか言われる気がするけど。有給使ってもらおう。
俺はそうだな。業者さんをお出迎えしないと。というか家に入れる以上誰かいないと。
考え事をしながら仕事を片付けていたら、夕方になっていた。
「しまった。ご飯を作らなきゃ」
今日は2人分のご飯が必要だ。人が来るから。
娘と妻にもあってもらって、一緒の家族になれたらいいなって思ってる。大事な人だ。
髪がとてもつややかで、キレイな人で、きっと妻とも気が合うよ。
リビングを、少しきれいにしておかなきゃな。汚い家だって思われたら、妻が可哀そうだ。
簡単に掃除を終わらせてテーブルの下を覗く。
「おっと忘れてた」
ちゃんと掃除をしたと思ったけど、テーブルの下だけやってなかったみたいだ。
妻の足の小指が落ちていた。骨の先が少し欠けてしまっているが、大丈夫だろう。
寝ている妻の布団の中に小指を入れると、娘の様子を確認する。うん、変わりない。
「それじゃあ、パパは新しいお嫁さんを迎えるから、おとなしくしててね」
娘に語り掛けていると、チャイムが鳴った。
「はーい」
娘と妻とママが眠る寝室を後にすると、新しいお嫁さんを迎えに行く。
「いらっしゃい」
お嫁さんの手を取り向かい入れる。
「あれ、何か臭いません?」
「そうかな? 一人暮らしが長いから、その臭いかも。気づかないから」
今日から君も一緒に暮らすんだよ。骨になるまで。
おうち時間 弱腰ペンギン @kuwentorow
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