天道の希望

E

プロローグ

 ー現在ー


 とある男が大きなホールで講演会を行っている。

「これは、私が経験した中で残酷な事件だったと思います。ある1つの悲劇が生んだ歴史的事件だと思います。」


 そう語るのは定年したばかりだという警視総監まで登り詰めたという。その名も「法隆寺賢亮」だ。


 スクリーンに映されたのは、ある女子高生の顔写真とその資料であった

「この方が、その事件の加害者であり、元死刑囚であります。」

 観客は大きくざわめく


「高校生が死刑囚になったんですか……」

 1人の観客がそう質問した


「その通りです」

 賢亮はその質問に答えた


 観客はさっきよりも大きくざわめいた



「皆さんにこれからお話するのは、日本犯罪史上最悪だとされたある女子高生が引き起こした残酷な復讐劇でございます。」


 そう言って、スクリーンを次の画面へと切り替えた


ー25年前ー


福岡市博多シティにて、大量の遺体が発見された


深夜の大雨の中、警察達は捜査を行っていた


時刻は午前1時をまわっていた


駐車場にやっと黒い覆面パトカーが現れた


停車すると、そこに法隆寺の姿があった


法隆寺は臨場した


「法隆寺一課長!こちらがご遺体でございます。」

1人の捜査員が案内してくれた


そこは、数十人のも遺体が並べてあった


「これは…先日に発生した連続殺人事件と類似している。」


そう法隆寺は呟いた


「やはり、そうみたいですね。」


部下で相棒の竹田がそう反応した


「一体、犯人は何が目的なんだ。」

そう言って、法隆寺は首を傾げた


「もしかしたら、先日起こった連続殺人事件と犯人が同一人物かもしれません。」

竹田がそう言って、手元の資料を見せた


「恐らく、そうかもしれんな。」

そう言って、法隆寺は遺体に向けて手をあわせた


「1課長!!」

1人の捜査員が走ってきた


「どうした。」と法隆寺は反応した


「現場近くにこういう物が……」

そう言って、捜査員がある物を渡された。それは、想像を遥かに越える意外な物だった


「まさか……」

法隆寺は大きく驚いた

「法隆寺さん……まさかですよね?」

竹田も思わず聞いてしまった



ー事件から1週間後ー

次は、福岡市博多区のとある商業施設で数人の女子高生の遺体が発見された


現場はパトカーに囲まれた


法隆寺らも臨場した


「一体何が起きているんだ。」

法隆寺はそう戸惑った。


今まで発見されてきた遺体は全て未成年者であった


警察は今回も同一人物として捜査を行った。


だが、手がかりは何も見つからなかった


最重要刑事事件として福岡県警は全国の都道府県警察に全面応援を要請した

それでも捜査は難航した。


福岡県警捜査一課長捜査会議


捜査一課の江田が説明している。


「現場に落ちていたリボンを指紋鑑定したが、何もみつかりませんでした。」


「つまり、指紋が付いていなかったという事ですか?」


刑事の山谷が質問した


「恐らくそう思われます。」

そう江田は答えた


「よって、このリボンは事件と無関係だと思われます。」

そう江田は結論を言った


「じゃあ、このリボンはたまたまそこに落ちていたという事なのか?」

尾池刑事部長が質問した


「はい、関係結果を見るとそうしか考えられないかと。」

江田はそう応えた


実際、そのリボンは事件現場1キロ離れた所に落ちてたため、事件とは無関係とされ、タダの落し物として処理された



手がかりは1歩も掴めず、現場近くの聞き取り調査を行っても目撃情報は得られなかった



ー事件発生から翌週後ー

時計はもうすぐ21時を回ろうとした


法隆寺は一課長室で作業を続けていた


どうやら資料整理のようだ


すると、ノックがかかった


「どうぞ」と法隆寺は応答した


「失礼します!」

入ってきたのは相棒の竹田だ。


「一課長!」


「どうしたんだ、まだ帰ってなかったのか。奥さんと子供が心配してるぞ!」

法隆寺は気をかけた


「そういう問題じゃないんですよ!!新たに北九州市で遺体が見つかったそうなんです。」

竹田はそう焦り声で言った


「なに!」


そう言うと一課長室の固定電話が鳴った。法隆寺は出た。竹田と同じ内容であった。


「わかりました!すぐ向かいます!!」

そう言って、準備に取り掛かった

「竹田!すぐパトカーだ。」


「はっ!」

竹田はすぐさま走った


その後ろで法隆寺も走って向かった



駐車場にあるパトカーのエンジンを起動させ、走り出た


行きは高速道路を使った



福岡県北九州市の事件現場に着いた頃には22時を過ぎていた


パトカーを降りた際には1人の捜査員が現場まで案内してくれた。


そこは、一軒家であった


「今回の現場は一軒家…」

法隆寺はそう呟いた


「こちらが現場でございます。」


そこには、その一軒家に住んでいた家族と思われる人々全員の遺体であった


「これは……一家殺人?」

竹田は恐る恐る呟いた


「あ…そうだろう。」

法隆寺は確信したように応えた


「これって、まさか……」

と竹田


「恐らく、そうだろうな。つまり同一人物って事だ。」

法隆寺はそう言った


すると……


「1課長!」

そこに捜査員が持ってきたのは1枚の手紙だった。


「これは……」

それは犯人が書いたとみられる手紙だった。


封筒は警察側に宛てた手紙とされる見出しであった


中身を開けると結構厚く便箋が入っていた。















 







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る