第26話 夜会(裏)
小吉の部屋に行けない。
いつもならとっくに、寝てるはずの小吉の布団に潜り込む時間なのに、龍見姉妹と歌に捕まってるせいで行くことができない。
しかも、捕まってるだけなら良かったんだけど、ご丁寧に縄で縛られて畳に転がされている。
縛られるのは修行でなれてはいるけど、どうしてあたしがこんな扱いをされなきゃいけないの?って思うと、悪感情がどんどん蓄積されてくわ。
「え~では第一回、小吉お兄ちゃんを狙う女子による意見交換会を開催いたします。お三方、異論はありませんね?」
「オレは構わねぇぜ」
「私も構いません。小鬼はもちろん、歌さんとも白黒ハッキリさせておきたかったですから」
「あたしは……」
「はい、では始めます」
あ、そう。
あたしの意見は無視どころか、聞く気もないわけか。
酷いわ。
あたしは歌をコイ敵として認めてるし、歌もあたしを対等だと認めてくれてるんだと思ってた。
なのに、どうしてこんな酷いことするの?
旅館に小吉を担い……でたのはジュウゾウか。
とにかく、戻ったその日に、歌は龍見の口が悪い方と仲良くなってて、無駄に髪が長い方とも、あたしより気さくに話してる。
あたしを縄で簀巻きにして、まともに話も聞いてくれないのに。
それがなんだか、小吉と一緒にいる時に感じる感情以上に初めてで、なんと言うか、モヤモヤする。
「まずは、小吉お兄ちゃんが目を覚ましてからのここ数日。私たちの態度が酷すぎることについてなんだけど……」
「ああ、確かに酷ぇな。歌なんか脱兎の如く逃げるし、姉ちゃんは悲鳴上げるもんな」
「地華は殴るでしょうが。さも、自分は問題ありませんみたいに言うのはやめなさい」
「だって怖ぇじゃん!うちにある練習用の
練習用のハリカタって何?
話の流れ的に、男のナニを型どった物かしら。
でも、それを使って何の練習をするんだろう。
振り回すの?
それとも、あたしがアンタらの目の前でやって見せたように、叩いて遊ぶの?
「まあ、態度は各々改めるとして、龍見家って、その……そんな練習もするの?」
「当たり前だろ?歌」
「婿殿には頑張ってもらわねばならないのですから、悦ばせる
「ぐ、具体的にはどんな練習を?」
「そりゃあお前、舐めたり咥えたり挟んだり撫でたり……言わせんなよ恥ずかしい!」
え?そんな事をしなきゃいけないの?
じゃあ、あたしが小吉とそういう事をするようになったら、小吉のアレを舐めたり咥えたり挟んだり撫でたりしなきゃいけないってこと?
無理じゃない?
舐めたり撫でたりはまあ……できるけど、咥えるとか不可能でしょ。
口が裂けちゃうわ。
それに、挟むってどこに?
股で良いのかしら。
でも、それにどんな意味があるのよ。
「あ~……確かに地華や天音さんの胸なら、余裕で挟めそう」
胸に挟むの!?
なんで!?
ああでも、悦ばせるための練習って言ってたから、男はそれをされると嬉しいってことよね。
う~ん、胸に小吉のアレを……。
あたしの胸でできるかしら。
歌よりはぜんぜんあるけど、龍見姉妹と比べたら微々たる物だしなぁ……。
「歌は、あの母ちゃん娘だろ?だったら心配しなくても、小鬼よりはでかくなるさ」
「ホント!?私、大きくなる!?」
「ええ、私も大きくなると思います。それでも心配なら、龍見家秘伝の育乳法をお教えしましょう」
秘伝って、軽々しく教えて良いのかしら。
だいたい、育乳法って何よ。
龍見家って、変な事ばかり伝えてるのね。
は、置いといて、なんだか胸が大きければ小吉が
「小吉は、幼女趣味の変態ぞ?」
だから、胸が大きいのは好みじゃないんじゃないかしら。
そう思って忠告したら、龍見姉妹は寝耳に水と言わんばかりに驚き、歌は「やっぱりこのままで良いや」と、言いながら目をそらした。
「お、おい小鬼。そりゃあ本当か?」
「本当。なんなら歌にも聞いてみりゃあええ」
「歌さん!嘘ですよね!小鬼が口から出任せを言ってるだけですよね!」
「いや、そのぉ……」
ちょっと歌、龍見姉妹に詰め寄られたからって、目であたしに助けを求めないで。
助けられないわよ?
だってあたし、アンタら三人に簀巻きにされてるんだから。
「ど、どうするよ姉ちゃん。オレらじゃ、どう頑張っても幼女にゃ見えねぇ」
「まさか、胸に不自由している女が好みとは……。いっそ、
「削ぐのか?せっかく育てたオレらの胸を、削いじまうのか!?」
「小吉様のお心を掴むためなら、
あるわよ。
この姉妹ってもしかしたら、あたしよりも知識や常識が片寄ってるんじゃないかしら。
いや、浴衣の前を開いて胸をさらけ出し、本当に削ごうとしている龍見姉妹より、あたしの方がはるかに常識人だわ。
だったら、常識人として……。
「小吉は胸が小さい女が好きなんじゃのぉて、幼女が好きなんぞ?じゃけぇ、アンタらがなんぼ胸を削いでも意味なんぞないわい」
あ、言われて初めて気づいたみたいに、二人とも目をまん丸に見開いて驚いてる。
そっかぁ。
龍見姉妹って、常識がないだけじゃなくて阿呆だったのね。
「お、お前はどうして、そんなに冷静でいられんだよ。小吉の大将が幼女にしか興味がないんなら、お前だって対象外じゃねぇか」
「地華の言う通りです。あなただって、歌さんと比べたら大きいじゃないですか。そんなあなたの体に、小吉様が欲情するとお思いで?」
「お思いも何も、小吉はあたしの裸を見て毎朝しっかり起たせちょるし、胸も嬉しそうに揉んじょった」
「ちょっと待て。どうして毎朝、お前の裸を小吉の大将が見てるんだ?」
「だって毎晩、小吉の布団で寝ちょるもん」
もちろん、寝込んでた間もね。
小吉が寝込んでた間は、何故か歌が来なかったから寝やすかったなぁ。
掛け布団も、無理に引っ張らなくても良かったし。
「つ、つまり何ですか?あなたはその……小吉様とすでに関係を持っていると?あんなにも凶悪なモノを恐れずに
いやいや、あたしよりも大柄なアンタが無理だって言うモノが、あたしの体に入ると思う?
本当に思うんだとしたら、アンタらは致命的な常識知らずよ。
「騙されないで!ナナは単に、全裸で添い寝をしてるだけよ」
「歌、それ、本当か!?」
「ええ、私も何度か一緒に添い寝してたから、間違いないわ」
「おのれ暮石の小鬼……。曖昧な言い方で私たちを騙くらかすとは良い度胸です」
いやいやいや、あたしは本当の事しか言ってないのに、アンタらが勝手に勘違いしただけじゃない。
なのにどうして、二人は得物を抜いてにじり寄ってるの?
あたしを殺す気?
だったら、こんな茶番にはもう付き合わないわ。
「お覚悟を……って、小鬼は?小鬼はどこに!?」
「さっきまで確かにここにいたのに、縄しか残ってねぇ。あの野郎、逃げやがったな!」
そりゃあ逃げるわよ。
関節を外して縄を抜けるんなんて飽きるほどやらされたから、その気ならもっと早く逃げれてたわ。
本当なら一人くらい殺っちゃいたいところだけど、アンタらは小吉がわざわざ迎えに行った人たち。
と、言うことは、小吉にとって必要な人たち。
だから、気配を消して逃げるだけで済ませてあげたんだから、感謝してよね。
「さて、小吉のとこに行くかねぇ」
ああでも、今日って猛おじ様もいるし、ジュウゾウとチャーなんとかも小吉の部屋にいるのよね?
「まあ、いっか」
気配を消して小吉の傍にいよう。
猛おじ様がいるから、まず間違いなくお酒を飲んでるでしょうけど問題ない。
小吉が朝まで起きてたって関係ない。
だってあたしは、小吉の傍にいたいだけなんだもの。
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