第26話 ジャワ沖、スラバヤ沖、バタビア沖海戦 前編

    晃司は大和艦橋に帰ると、渡辺安次参謀と

    将棋を指している、山本五十六のところに行った。


岡本晃司「お取込み中失礼します。岡本中尉ただいまもどりました」


山本五十六「もどったか晃司、お前明日出立だったな」


晃司「はい、長官、高橋中将への文面、書いてもらえたでしょうか?」


山本「うむ、出来ている、明日、出立前渡す。それよりこれを見てみろ、

   どっちが優勢だと思う?」


晃司「うーん難しいですねえ。にしても本当にお好きですねお二人。

   史実通りですね」


渡辺安次「岡本中尉、山本長官に勝ち越してるらしいじゃないか、

     やるなあ。君も一局どうだ?明日出立なんだろ?」


晃司「そうですね、渡辺中佐とはまだ指したことなかったですもんね。

   指してみましょうか。まあちょっと先に入浴させてもらいます」


      晃司は入浴をすませ、着替えて作戦室に戻った。


晃司「戻りました、明日出立なので一番勝負にしましょう、渡辺中佐」


渡辺「おう、それにしても長官が、一世紀もたたずに計算機が名人より

   強くなるっておっしゃるんだよ」


晃司「ええ、私もそう思いますよ中佐、将棋も囲碁もなんでも」


渡辺「ほんとかよ、そんだけ奇想天外な発想が出来るから大将までおなりに

   なったり、その若さで軍令部お墨付きで参謀の列に加われたり

   するんだなあ・・よし私の勝ちですね長官」


山本「くそぅ、晃司敵をとれ、横で見ておく」


晃司「じゃあ渡辺中佐、お手柔らかに」


渡辺「よし初手合いだな、まあ俺から行かせてもらうぞ。

   ・・うーん何か見たことない戦法だなこれ」


晃司「皆さんお強いですね、微熱が出そうですよ」


山本「まああれだな、藤井が一番強そうだな」


渡辺「そうなんですか?岡本中尉も、かなり強いですね。

   しかしまだ最後までわからないかこれ」


晃司「いやあ渡辺中佐もお強いですね、最後までもつれそう

   ですねこれ」


渡辺「どうだ、ん、それがあったか。ああ、くそっ負けたか。

   今度絶対負かしてやる」


晃司「いやあ皆さん負けず嫌いですね。渡辺中佐、申し訳ないですが、

   今日はこれで上がりますが、またやりましょう」


渡辺「おう、また今度な」


晃司「じゃあ長官、明日例の件をお願いします。それではお二方、

   お先させて頂きます」


山本「分かったやっておく」 


    晃司は寝室に行き早めに寝た。軍人も仕事ばかり

    じゃないんだなと思ったのであった。

    そして翌朝。


晃司「おはようございます、長官」


山本「おう晃司、高橋宛ての書面だ。必要以上のことは書くのを避けた。

   お前が口頭で補足しろ。

   暗号文で士官を一人そちらへよこすと電文した。あとはこの書面を

   見せればいい。お前の言うことを聞くはずだ」


晃司「ありがとうございます。極力味方の犠牲を出さないよう、

   必ず勝利してきます。これが初陣(ういじん)ですが」


山本「そうか、お前まだ実戦経験がなかったんだな、それでも頼んだぞ」


晃司「はい、では行って参ります」


    2月中旬、晃司は偵察機に乗り空母:龍驤(りゅうじょう)を経て

    第三艦隊旗艦に移りた。

    そして艦橋へ上がった。

    艦橋内で晃司は高橋伊望中将の元に行った。


晃司「初めまして高橋伊望中将、山本五十六大将より遣(つか)わされた、

   岡本晃司中尉であります」


高橋伊望「君か、山本司令長官の遣いというのは」


晃司「はい、高橋長官。山本長官より高橋長官への命令書を預かって

   参りました。

   つきましては長官と二人だけで誰もいないところで

   お話ししたい事があります」


高橋「誰もいないところでか?まあいいだろう、来なさい」


    高橋は晃司を作戦室へ連れて行き二人だけになり、

    晃司から、山本からの命令書を受け取り読んだ。


高橋「な、なに?何だ?これは。ほんとかね?これ。信じられんのだが。

   我が大日本帝国が、そんな結果になってしまうとは、

   そして君が未来人等とは・・その他にはこんなことが。

   また別に、命令が聞けなければ軍法会議にかけるとある、

   これについては従わねばならぬ。

   一応信じたことにしてみようか。岡本中尉、このことは他に

   誰が知っているのだ?」


晃司「連合艦隊では高橋長官以外は、山本長官と宇垣参謀長と黒島首席参謀

   だけです。

   軍令部では永野総長だけです」


高橋「それだけか。しかし永野総長と山本長官が知っているということは、

   戦局全体に影響を及ぼすな。

   書面には山本長官は作戦は、君の作戦を全面的に用いるようにと、

   命令文にある。勝算はあるのか?」


晃司「はい。実はすでに私がこの世界に来て、しばらく干渉したせいで、

   少し史実と違ってきております。

   なので場合によって、複数の作戦を考えてきております。

   今からその説明をさせて頂きます」


    晃司は高橋に考えてきた作戦の全てを説明した。


高橋「どれもよく練られた戦術だ。見たところ若いが、君の実戦経験は?」


晃司「ありません。これが実戦においては初めての経験です」


高橋「本当かね、こちらも作戦参謀はいるんだがなあ。山本長官の命令と

   あらば、仕方がない。

   それに君は山本長官の腹心とある。更には考案された作戦もすでに

   左官並み、いや将官並みといっても過言ではないくらいだ。

   またまた更には、未来がわかるんだろ?君は。これからの状況に

   応じ、君の考案した作戦の中で、見合った作戦をあてよう。

   他に何か言いたいことはないかね?」


晃司「私は史実との食い違いが、どこにどれだけあるか、確認して調整する

   ことが必要と考え、それも踏まえてここに参りました。

   それは今後の作戦を立てるために必要な情報を得て、

   最終的にこの日本を負けさせないための手段の一つです、高橋長官」


高橋「そうか、具体的にはどういったものだね?」


晃司「一つは付近の敵味方の動きと状況についての確認、もう一つは暗号解読、

   特に海軍暗号の解読についてです。

   前者は私の干渉のために、敵軍及び、味方の陸軍の動きが少々変わって

   きているところです。

   そして後者いついては、私の時代では諸説、解読についてありますが

   既に海軍暗号は解読されていると考えるべきで、そのほうが効果的で、

   またある程度違っていたとしても、臨機応変な対応がとれ、無難です。

   今回は、暗号は解読されているものとして、それを逆手にとります」


高橋「わかった。では君の作戦の初期行動をとろう。我々第三艦隊はこれより、

   スラバヤ港に向け出港する」


     第三艦隊は初期段階として、スラバヤ港へ向けて南下した。

     1942年2月20日、事前に、晃司の指示により飛ばされていた、

     第三艦隊偵察機隊は、バリ島上陸船団を攻撃するための、

     カレル・ドールマン少将指揮下の連合軍艦隊を発見した。

     その報は、日本軍セレベス島ケンダリー基地と、

     スラバヤ港北東150浬を南西に進んでいた第三艦隊に、

     届いていた。それとともに連合軍にも解読されたのであった。

     (1浬、約1.85Km)


晃司「高橋長官。日時にずれはあるものの、史実通りの事が、

   この段階で起きています。最初に述べた作戦をとりましょう」


高橋「うむ、そうすべきだろう。この作戦の第一目的は、敵艦隊の行動の

   戦略的行動の自由を奪う事、第二に、陸軍のバリ島上陸、及び飛行場他の

   占拠の促進、第三に、日本海軍の航空戦力の戦力集中により

   可能な限り、敵艦隊戦力を事前に削りとること、であったな」


晃司「はい長官。日本艦隊がスラバヤ港の留守を狙うと考えた、

   ドールマン少将は、急ぎスラバヤ港付近に戻ります。

   そのためバリ島上陸戦団は悠々と上陸をし飛行場他の占拠にあたります。

   そして今の報を傍受した、日本軍セレベス島ケンダリー基地は、

   敵艦隊にむけ、日本海軍第十一航空艦隊を差し向けます。

   これとともに、我々の航空部隊も発進し合流して、敵艦隊の背後をつき、

   戦力を出来る限り、削りとります」


高橋「うむ、そういうことだったな。我が艦隊航空部隊も第十一航空艦隊に

   適時合流して、敵艦隊の背後を襲う。岡本中尉の進言内容と、

   報告によると、敵艦隊の中に空母は無かったとのことだが、

   念のため戦闘機を発進させる」


    ケンダリー基地から、陸攻60機、日本海軍第三艦隊、

    第四航空戦隊の空母:龍驤から、九〇式戦闘機15機、

    艦攻33機が時を合わせて発進した。         

       

    (陸攻:陸上攻撃機 艦攻:艦上攻撃機)


    2月21日昼頃、連合軍艦隊は突然の、日本航空部隊の

    出現に驚いた。

        

    背後より突然現れた、日本航空部隊は、連合軍の砲撃による

    応戦も少なく、簡単に各艦の頭上に接近した。


    晃司の進言及び報告通り、連合軍艦隊には空母の様子は

    伺(うかが)えなかった。


    龍驤の艦攻は二手に分かれ、一方は重巡洋艦エクセターを

    襲い、もう一方は駆逐艦ジュピターを襲った。

 

    全機爆装していた龍驤の艦攻は次々にエクセターに

    急降下爆撃を行った。


    そのうち4発が命中、エクセターは艦橋には被害が

    なかったが、爆炎をあげ炎上し、艦各部に大きな傷を残し、

    各砲門もほぼ破壊され、戦闘は不可能となった。


    もう一方の艦攻は、ジュピターに急降下爆撃を行い、

    そのうち3発が命中、艦船は大きな爆発を伴い、

    炎上しそれは艦底まで及び、次第に沈んでいき、

    ついに沈没した。


    ケンダリー基地の、第十一航空艦隊の陸攻は、三手にわかれ、

    重巡洋艦ヒューストン、駆逐艦ポープ、軽巡洋艦ジャワに

    それぞれ襲い掛かった。


    ヒューストンを目掛けて急降下する陸攻の爆撃のうち、

    3発が命中、主砲2門を破壊した。


    ヒューストンは、これにより攻撃は不可能となり、

    戦闘不能となった。


    ポープを狙い急降下爆撃を行った、艦爆の爆撃は3発が命中、

    艦上は火の海に包まれ、爆発を起こした。


    (艦爆:艦上爆撃機)


    各砲門も破壊されたポープは、戦闘が不可能となり

    大きく傷ついた。 

          

    さらにジャワを狙った艦爆も急降下爆撃により2発の

    命中弾を当てた。


    ジャワは後部に大きな爆発が起こり、航行が不能

    となった。 

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