第21話 帰路それと
堺則友「岡本中尉、ご苦労だったな。長田中尉と加古川少尉も、
今夜はゆっくり休め」
岡本晃司「ありがとうございます、堺大尉」
高砂一基「岡本中尉、本当にお疲れさまでした。
長田中尉と、加古川少尉もです」
晃司「いえいえどういたしまして、まあ緊張はしましたけどね」
長田仁志「どういたしまして、堺大尉、高砂軍曹」
加古川小成「我々は通訳したくらいですから」
高砂「いえいえ、しかし先ほどレーダーで電波を拾った時と、
浮上してお三方をお見つけしたときは嬉しかったです。
これで日本の将来は、ある程度保証されましたね」
晃司「高砂軍曹、まだまだ気が早いですよ。
戦いは始まったばかりなんですから」
高砂「そうでした、まるで和平が成ったかと思いました」
晃司「まだまだこれからですよ。今回の提携が成っただけなんですから」
高砂「はい、そうですよね。あちらさんにも頑張ってもらわないと
いけませんね」
堺「高砂軍曹、そんなことでは鬼軍曹が仏軍曹になってしまうぞ」
高砂「でしたね、気を引き締めます、堺大尉」
晃司「高砂軍曹、我々3人は一足先に寝室へ向かいます」
高砂「了解であります、ついて参りましょう」
晃司「いいですよ、場所は分かりますし。それではおやすみなさい」
高砂「わかりました、おやすみなさいませ」
晃司達3人は寝室に入った。ちょうど中は誰も
いなかったので、少し会話をした。
晃司「ちょうど3人だけになりましたね。にしてもこれで
長田さんは陸軍大尉、加古川さんは陸軍中尉ですね。
おめでとうございます」
長田「あれもこれも岡本さんのおかげですよ、ありがとうございます」
加古川「ほんとですよ岡本さん、ありがとうございました」
晃司「お二人が機転を利かせてくれたり、正確にかつ堂々と通訳して
頂けなければ、とっくにお陀仏でした」
加古川「いえいえ何の、あのくらい。それにしても、何年も未来が分かる
なんてうらやましいですよ。
でもほんとこの先の大日本帝国の戦争はどうなるんでしょうか?」
晃司「それは申し訳ないのですが、永野総長に聞かれた以上のことは
言えないんですよ。
それに僕も完全に、正確に分かるかというと、
そうでもないんですよね」
長田「そうなんですか?でもあんなに先が分かるなんて、すごいですよ。
あれ史実なんですか?」
晃司「ええまあ、そうなんですよね。だから永野総長以外、
他言無用に願いますね。
園田さんなら僕よりもっと詳しいですよ、
歴史、戦史に関しては」
長田「園田さんも、少しお話しをしましたが、すばらしい見識を
お持ちになってる所がありますよね」
加古川「と言うことは、彼女も岡本さんのようにできると?」
晃司「それは良く分かりませんが、僕の場合普段からよく考えていること
ですからね」
長田「それにしてもあの度胸、感服しました」
晃司「ありがとうございます。しかしお二人もあんなところで平然と
通訳出来るとは」
長田「私たちはこれが仕事ですから。」
晃司「そうでしたね。それにしても、今夜は流石に、疲れました。
ちょっと早いですが寝ましょう」
長田「はいそうですね、おやすみなさい」
加古川「おやすみなさい」
晃司はその晩疲れたのか、ぐっすり寝たのであった。
そして数日後、潜水艦は広島港に着いた。
このころ山本の旗艦は完全に大和に移され、
晃司たちは大和に向かうのであった。
堺「じゃあな、岡本中尉、簡単にその年で俺を抜くなよ」
晃司「出世欲がもう少し強ければ永野総長にお願いして、もう少し高い
階級を要求してましたよ、堺大尉」
堺「なんと恐ろしい奴だ、今のうちにごますっておこうか」
晃司「ご冗談を。高砂軍曹も色々お世話になりました、
また機会があればいつか」
高砂「はい岡本中尉、心よりお待ちしています」
晃司「それでは我々は行きます、皆さんお元気で」
堺「じゃあな、またな」
高砂「またいつか」
晃司「失礼致します」
長田「失礼します」
加古川「失礼します」
晃司たちは潜水艦を後にした。
そして晃司たちは大和に到着した。
晃司「じゃあ、本当に申し訳ありませんが、こちらでお待ち願えますか?
長田さん、加古川さん」
長田「わかりました。我々はもともと密偵ですし、そもそも陸軍です。
深入りはしません」
晃司「ありがとうございます。では念のため忘れないうちに、
提携文を二通とも預かります」
長田「はい。どうぞ」
晃司「それでは行ってきます」
晃司は旗艦大和の艦橋に入って、山本に帰りの報告をした。
晃司「山本長官ただいま戻りました」
山本五十六「おおー岡本、よくもどった。交渉は成立したか?」
晃司「はい、まず大成功と言っていいでしょう」
山本「そうか、よくやった」
晃司「山本長官、ちょっと場所をうつしませんか?二人になれる場所へ」
山本「いいだろう、こっちへ来なさい」
2人は誰もいない作戦室へ移った。
山本「ここなら二人っきりだ今は、どうした」
晃司「まず、フーヴァーからの提携文を、自筆でもらいましたので、
これをお読みください」
アメリカに留学経験のある山本五十六は、英語の文章の
読み取りは、問題なくできた。
山本「間違いなく、フーヴァーからの直筆の文面だ。母音まで押してある。
本当によくやった、礼に約束通り俺の実質上の腹心、
参謀の席も用意するぞ」
晃司「ありがとうございます。それとあつかましいようですが、
もう一つお願いしたいことがあります」
山本「なんだ言うてみい、もうちょっとくらい褒美はやらんとな」
晃司「それでは山本長官、園田香織を少尉待遇に置くことを、長官の直筆で
嘆願書を、永野総長に書いてもらっていいですか?
私も名前を添えたいと思います」
山本「なんだそんなことか、お安い御用だ、今書いてやる待っていろ」
山本は直筆で園田香織の少尉の昇進を嘆願文にしたためた。
そして山本と晃司は、直筆でサインした。
晃司「僕いや私の正体を、この艦隊で知っているのが、山本長官だけでは骨を
折ると思います」
山本「俺の前だけでは僕でいい。かたっ苦しくするのはそれ以外で
いいぞ。それで誰に正体を明かす」
晃司「はい長官。宇垣纏参謀長には知らせといたほうが宜しいかと」
山本「宇垣か、いいだろうが黒島はだめか?
あいつは俺の片腕のようなものだ」
晃司「やっぱりこの世界でも僕らの史実通りなんですね、わかりました。
黒島首席参謀もそうしましょう。南雲中将はおられないんでしょうか?」
山本「南雲は作戦行動中の司令官として、任務に就いているから今は居ない」
晃司「分かりました。では早速お二方をお呼び願いますか?」
山本「分かった、二人を呼びだす」
晃司「では僕は、この文面を、交渉に一緒の任にあたった二人に、
嘆願書、そしてもう一通のフーヴァーからの書面を手渡してきます。
後程、この部屋で4人で話し合いましょう」
山本「わかった」
晃司は預かった二通の書面を、長田と加古川に手渡しに、
行き、山本は宇垣と黒島を呼び出した。
晃司「お待たせしました、長田さん、加古川さん。ここに先ほど一旦預かった、
フーヴァー所長からの書面一通と、山本長官から永野総長宛ての嘆願書
一通があります。嘆願書には僕の名前も直筆で添えました。
これを預けますので、永野総長に手渡して下さい。園田さんには
僕が無事戻った事を伝えてもらえれば結構です」
長田「分かりました、必ず任務完了まで責任持って行います。
岡本さん、ありがとうございました」
加古川「ありがとうございました、岡本さん」
晃司「いえ、こちらこそお世話になりました。ありがとうございました、
お二方。お二方、陸軍にもどっても、ご活躍を願っております。
できましたら今回の件で、お気持ちありましたら、
満州派についてほしいと、思っている所存ですが」
満洲派は、大日本帝国陸軍にかつてあったとされる派閥。
陸軍中将の石原莞爾とそれに近い陸軍内支持者の
板垣征四郎、辻政信などで構成されている。
満洲派は中国からは手を引いて満洲を固めるべきという独自の
見解をもっていた。
つまりは満蒙生命線論、満蒙領有論に端を発するものだったが、
石原の考えは純粋なものである。
長田「私はこれより、満州派につきたいと考えていた所です、岡本さん。
加古川少尉いや、中尉とお呼びすべきかな?君はどうだ?」
加古川「長田中尉、私はまだ少尉ですよ。私も今回のことで、
満州派に気持ちが変わりました。
出来る限りそちらのほうに、つきたいと思います」
長田「では二人協力し合ってそちらにつくことを実行しよう。
ということです、岡本さん」
晃司「お二方には苦労をおかけします。書面の件も含め宜しく
お願いいたします」
長田「このくらいどうということはありませんよ。
色々お世話になりありがとうございました、岡本さん」
加古川「ありがとうございました、岡本さん」
晃司「こちらこそ今までありがとうございました、長田さん、加古川さん。
では僕はこれで失礼します」
晃司はお辞儀をし、長田と加古川は敬礼をして、別れた。
晃司は大和艦橋の作戦室へ戻り、再び山本と再会した。
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