第14話 見つけた手段と行動 その4

    誠吉は年明け、海軍兵学校にもどり晃司と一花を学校長草鹿任一に

    引き合わせた。


岡本誠吉「校長今戻りました。お心遣い感謝いたします。その代わりと言っては

     なんですが校長にいい人材を会わせたく連れて参りました」


草鹿任一「ほういい人材とな、会ってみよう」


誠吉「二人とも入りたまえ」


    校長室の外で待機していた晃司と一花が入ってきた。


岡本晃司「失礼します」


園田一花「失礼致します」


誠吉「校長、こちら私のひ孫の岡本晃司君と、その後輩の園田一花君です。

   晃司君、一花君、こちらが草鹿任一海軍兵学校学校長や、挨拶したまえ」


晃司「お初にお目にかかります草鹿学校長、岡本晃司と申します」

       

一花「初めまして草鹿学校長、園田一花と申します。

   お見知りおきください」


    草鹿はしれっと言動を行う3人に対してどうしてそんなに普通に

    言うのだと思い問いただすのである。


草鹿「ん?ひ孫じゃと?君にそんな子孫がいるのか?小さい息子さんが

   危篤と聞いていたが容態はよかったのか?どういうことかな?」


誠吉「はい校長、息子は至って元気でした。怪我も病気もしておりません。

   あれは女房からの嘘の知らせでした。校長も騙(だま)されたようで

   謝罪のしようが分かりません。

   とにかく申し訳ございませんでした。お詫(わび)びに重大な情報を

   提供致します。この二人から伺いました」


    誠吉は今まで晃司と一花から聞いた話を全て草鹿任一に話した。


草鹿「な、何としたことじゃ。にわかには信じがたい。

   しかし岡本教官が信じて連れてきたことじゃ、信じてみるとしよう。

   でまだ何か知っていることがあったら、教えてくれんか?」


誠吉「私が聞いたのはここまでです。あとはこの2人にお聞きください」


草鹿「わかった。まず岡本教官のひ孫の晃司君といったね。まだなにか

   話せることがあったら話してくれんかね」


誠吉「校長、私は席を外しましょうか?どうかな晃司君?」


    誠吉は3人に気を使い草鹿に言ったのである。


晃司「いえ場所が場所ですし、これも話せます。ひいお爺ちゃんも聞いて

   おいてください。

   しかしお二方、これも含めて、必要外は、必ず他言無用にお願い

   いたします」


草鹿「わかった話してくれ」


晃司「はい。まず日本の暗号についてですが、この時代、日本の暗号は、

   外務省暗号と海軍暗号と陸軍暗号がありますよね。

   そのうち外務省暗号は全て既に、連合国側に解読されています。

   これは我々の時代の定説です。

   そして海軍暗号、いわゆるD暗号も一般には今から半年程後に解読される

   ということになっていますが、既に解読されているという見方もなされて

   います。

   陸軍暗号は終戦まで解読されなかったという見方がなされています」


草鹿「なんじゃと外務省暗号が筒抜けじゃと?我々海軍暗号まで解読

   されている可能性が大きいじゃと?こりゃ一大事じゃ」


晃司「あとこれも曾祖父(そうそふ)には話しそこなっただけですが、

   ルーズベルトのことについて、ルーズベルトの前任の

   ハーバード・フーヴァーがルーズベルトの狂気がこの戦争、

   世界大戦まで引き起こしたと言っており、戦後アメリカ陸軍元帥

   ダグラス・マッカーサーもこれに同意しています」


    草鹿はつくづく驚いたような感じで言うのである。


草鹿「そんなことが・・わかった。私の名義で軍令部総長に掛け合ってみる」


晃司「草鹿校長、くれぐれも軍令部には総長以外には内密にお願いい致します」


草鹿「わかった暗号はダメじゃったな。軍用電話で直通でつなげてみる。

   まっちょれ」


    草鹿任一校長は海軍軍令部総長永野修身に直通の緊急電話で

    この内容を告げた。

    永野は早速、晃司と一花に会って話が聞きたいということで、

    草鹿任一に軍令部まで連れてくるように命じた。


草鹿「岡本晃司君、園田一花君、軍令部総長永野修身大将から出頭命令が下りた。

   我々3人はすぐに軍令部へ向かうぞ」

 

晃司「了解しました」


一花「了解です」

         

草鹿「岡本教官、私がいない間、実質次官へ任せるが、君はこのことを決して

   他言しないように」


誠吉「了解であります、校長」


草鹿「疲れているだろうが、すぐ行けるかね二人とも?」


晃司「行けるよね園田さん」


一花「問題ありません」


晃司「我々2人すぐにでも出立可能です、学校長」


草鹿「ああ女性に服のサイズを聞くのは失礼かもしれんが、君たち二人の

   服のサイズを教えてくれ。その制服では返ってまずかろう」


晃司「ありがとうございます、草鹿校長」


一花「お気遣いありがとうございます、草鹿校長」

               

    晃司と一花はしばらく軍服の新調を行い戻った。             


草鹿「よし、では今夜も君たちは列車の中で眠ってもらうが出発するとしよう」


    草鹿任一兵学校長は晃司と一花を連れて一路、東京の

    軍令部まで向かった。列車の中。


晃司「校長、これは僕の曾祖父にも言わないでもらいたいんですが、

   海軍軍令部と海軍連合艦隊は折り合いがうまく行かず連合艦隊は

   独自の行動をとることが多くなります。

   なので僕と園田さんは別々に任に当たろうと考えています。

   両者の斡旋(あっせん)のためにも」


草鹿「わかった。君たちに任せる。しかし意見具申はしても命令には

   従うのじゃぞ」


晃司「はいわかりました。ということや園田さん、わかってくれるね

   以前から話していた内容も含めて」        


一花「覚えていますよ、承知しています、先輩」


晃司「うん。校長、じゃあ僕らは眠ります。校長もゆっくりされて下さい」


草鹿「そうじゃの今夜は眠ろうか」


    3人は列車の中で眠りについた。そして翌朝。


草鹿「二人とも起きたかね」


晃司「僕は今起きました」


一花「私もです」


草鹿「私は一時間ほど前に目が覚めたかのう」

 

晃司「早いですね」


草鹿「老人は朝早いからのう、東京駅までもしばらくある。朝食をとろう」


    3人は社内朝食をとり到着に備えた。


草鹿「ぼちぼち東京駅じゃ、そろそろ降りる準備をしよう」


    3人は列車を乗り換え軍令部まできたのである。

      

草鹿「連日の長旅ご苦労さん、疲れたかな。特に女性にはきつかったかな」


一花「私たちは身体的にも訓練を積んできております。女性といっても少々の

   ことでは問題ありませんよ」


草鹿「それは頼もしい、岡本君、君もかね」


晃司「全く平気ですよ」


草鹿「そうか、それを聞いて安心した。

   思ったより二人とも強靭な心身を持っとるようじゃのう。

   それでは行こう。ついてきなさい」


    草鹿任一は晃司と一花を連れて軍令部の建物に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る