温泉に浮かんでいる西瓜
みお
第1話
最近、芸能人の自殺が相次いでいる気がする。
その度に、悲しい気持ちになる。
自殺以外に、逃げる道はなかったのかなって。
何もしなくていいから、生きていてほしかったなって。
温泉に西瓜がぷかぷかと浮かんでいた。
温泉に西瓜!? と驚く人も多いだろう。現に、わたしもびっくりした。
でも本当に浮かんでいるのだ。
「西瓜が浮いてるなんて珍しいわね」
と隣にいた年配の女の人が友達らしき人と話している。
直径1メートルくらいの大きな西瓜が一つと中くらいの西瓜が一つ、小さい小ぶりの西瓜が一つの合わせて三つ。
わたしの目の前に大きな西瓜がきた。
西瓜の重みで5分の3くらいは、温泉の中に沈んでいた。
湯から出てる部分は、かなり汗をかいていた。
西瓜も暑そうだった。
人が湯船に入ってくると、波で西瓜が押し流される。
「この西瓜みたいに波に抗わず、ぷかぷか浮いてたら、人生もっと楽なのかなぁ」
なんて、考えながら西瓜を見つめる。
この西瓜、今日一日の仕事終わったらどうなるのかな。
食べられるのかな。それとも捨てられるのかな。
今日一日は、人々の話題に上がるけど、今日が終わったら捨てられる運命。
西瓜がわたしのところにもっと寄ってきた。西瓜の香りがほんのりした。夏の終わりのにおいがした。
窓の外を見ると、露天風呂があった。
「行ってみよ」
露天風呂は、透き通っていてきれいだった。露天風呂の壁の色が温泉に移り、無色透明というよりちょっとだけ緑がきれいに移っていた。
外を見ると、温泉のすぐ下は谷になっていて、その向こうには、木がたくさん生い茂っている。
高い山がそびえ立っていた。
「明日から仕事かぁ」
今日は4連休の1番最後の日。きれいな水と山々を見ながら、4連休を思い出す。
ふと、温泉に目をやると、水面にハエが二匹死んで、ぷかぷかと浮いていた。
「なんで、このハエは死んでしまったんだろう」
水が見えなかったのかな。
水に着くと死ぬということを知らなかったのかな。無知って、罪だな。
や、それとも、ハエは自分から死のうと思ったのかな。
この人生に飽き飽きして、もう死んじゃえって思ったのかな。
そいえば、最近、また芸能人が自殺したな。
あんなにキラキラして、みんなが羨むもの全部持って、多くの人に愛されていたはずの芸能人。
なんで、死んでしまったのか。わたしは、こう思う。
「光が強い人ほど、影が強いんじゃないかって」
多くの人から愛されている人。
人より、高いコミュニケーション能力身につけて、
人より、たくさん働いて
人より、かっこよく可愛くなるために身なりや美容にに気をつけて
人より、周りに気を遣って
人より、周りを思いやって
だから、そんな人物になるまでには、想像できないほどの苦難があって、それを維持するのにも、想像できないほどの試練がある。
時には、それが、死を招くことになるまで追い詰めてしまう。
西瓜のようにぷかぷかと何も考えずに、流されるままに流されていたら、人生、楽なのかもしれない。
余計なことは考えずに、みんなの意見に賛成し、反発はしない。
自分の意見は、表には出さず、ただ静かにしている。
そしたら、嫌われることもないだろう。
果たして、本当にそれが1番楽な生き方なのだろうか。
それでいいのだろうか。
あなたは、温泉に浮いていた西瓜のように、ぷかぷかと生きる人生を選びますか?
温泉に浮かんでいる西瓜 みお @mioyukawada
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