お家と結婚しました!!

ネオン

声の主と話してみた

…はじめくん、おーい!はじめくん!きこえてるでしょ?返事してー、わたし無視されて悲しいんだけど、おーい!はーじーめーくーん!!


うるせぇ…

さっきからこの家には俺以外誰もいないはずなのに声が聞こえてくる。

無視をし続けたいが、うるさすぎる。

これじゃあ仕事できねぇ。

…取り敢えず返事してみるか、…気は進まないが。


「あの、誰です?うるさいからちょっと黙ってくれません?」


『やっと、返事してくれた!聞こえてたんならもっと早く返事してよ…。うるさいってひどいな〜、もう。えっと、わたしははじめくんが住んでいるこの家です!』


元気いっぱいにかわいい感じの女の子の声が答えた。


「は?何言ってんの?」


『…やっぱり伝わらないか〜。一応もう一度言うけど、わたしはこの家そのものなの。いつのまにか家に自我が芽生えたって感じかな?まあ、どうせ信じてもらえないだろうから今から証拠を示そうと思ってるよ!』


そういうと、少しの間声がしなくなった。


『おーい、聞こえる?わたしは今天井から話しかけてるよ〜』


静かになったのかと思っていたら上から声がした。

まじで上から声がする。


『おーい、今度は床からだよ〜』


…まじで下から声がする。本当にこの家が話しかけてきているのだろうか。いや、家が話しかけてくるってなんだよ。付喪神か?そもそも、家に付喪神ってつくのか?

あー、もう、わけわからん!!


『ねえねえ、信じてくれた?信じてくれた?あっ、ちなみに今は最初と同じように壁から話しかけてるよ〜』


「…はぁ、取り敢えず信じるしかねぇな。わけわからないけど。で、なんで俺にはなしかけてきたんだ?」


『信じてくれて嬉しい!』


とても嬉しそうな声色だ。


『えっとね、はじめくんに話しかけた理由はね…その…えっとね…。はじめくん、わたしと、付き合って下さい!』


「ごめんなさい無理です」


はじめは家が勇気を出してした告白を一瞬でバッサリと切り捨てた。


『え?なんで?わたし、ずっとはじめくんのこと好きなのに…』


とても悲しそうな声色だ。


「…だって、人間じゃないし…そもそも、君のこと何も知らないし…」


悲しそうな声にちょっと罪悪感が湧いたのだろうか、先ほどよりも歯切れが悪い。


たとえ人間だとしても、知り合って当日の人とは付き合えないな…。あと、やっぱり俺は、人間の、女の子(出来れば可愛い子)と、付き合いたい!ここ数年彼女いないし、彼女(かわいい)が欲しい!

でも、この一年で完全リモートワークになっちゃったし、しかも、外出も出来ないから出会いもないからな…。


人間じゃ無くてもいいかな、と一瞬思った。でも、人間とじゃないと出来ないことが色々あるんだよな〜。


『…なんで?ニンゲンじゃないとダメ?なんで?わたしは他の人よりもはじめクンのコト知ってるよ?誕生日も、好きな食べ物も、いつどんなことをしてるのか、生まれてから今までどんなことを家でしていたか全部知ってるよ?…たしかにはじめくんが今まで付き合ってきた女の子はニンゲンだったよ。でもさ、振られてたじゃん!わたしは、はじめくんのことしか見てないよ。だからさ、付き合ってよ』


こわっ。前半全く声から感情読み取れなくてマジで怖かった…。俺のこと全部見てるとか怖すぎるわ。

…いや、家だから全部知ってるの当たり前か。

あと、後半の要らないよな。確かに今まで付き合った二人には振られた。1人目は、ほかに好きな人ができたから、2人目は、つまんないから、という理由で振られたな…。

思い出さないで良いことまで思い出して悲しくなってきた。…俺ってそんなに魅力ないのか…。


でも、やっぱりかわいい女の子と付き合いたいかな。


「ごめん、俺、やっぱり君とは付き合えない」


『そっか…』


そう悲しそうな声が聞こえたあと、ピタリと声が聞こえなくなった。


「おーい、聞こえる?」


はじめが問いかけてもなんの反応もなくなった。もう諦めたのだろうと思いはじめは気にせずに、仕事に取り掛かり始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る