9 夢幻郷《むげんきょう》

蒼天そうてん幻月げんげつ輝き

昊天こうてんは遙かに星辰せいしんを抱く

虹霓こうげい立つ月の丘

星涙 蒔く芥子の谷

我はただ晩風ばんぷうに耳をそばだてる


玄天げんてんに七星 きらめき

炎天えんてん淡月たんげつ溟海めいかいを照らす

星 眠らす蒼竜そうりゅうの山

うお 眠らす揺籃ようらんの海

我もまた深更しんこうの夢に沈む


  (1999 H11年 10月)


**************

蒼天……あおぞら。東の空。

幻月……空中の氷晶による光の屈折でおこるかさの一種。

昊天……西方の空。広い空。

星辰……辰は天体(日・月・星)の意。

虹霓……二重の虹。

晩風……夕風。

玄天……玄は黒で北をさす。北方の天。

炎天……南方の空。(夏の焼けつくような空の意味も勿論あるけれど)

淡月……光の薄い月。朧月。

溟海……青海原。大海。

揺籃……ゆりかご。

深更……よふけ。深夜。

芥子は栽培禁止植物だけれど、星空の下の谷間に赤い芥子が咲き乱れる幻想的な風景は、高校生の頃には絵にも描きました。

蒼竜は、遠くに青く連なる山々を、揺籃の海は、ゆれる波を魚のゆりかごに見立てました。

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