KACから始まる短歌練習帳「かきつばた2」

小余綾香

令和3(2021)年

KAC20211:『おうち時間』

お :楝色おうちいろ

う :薄紅うすくれない

ち :ちりばめて

し :しずけき春よ

かん:邯鄲かんたんの夢



【雑記】

 ステイホーム=おうちいろ。


 ということで、楝色がステイホームの象徴色のように私には感じられます。


 淡い紫系統は好きな色合いの為、個人的には何処かの自治体で駄洒落として使われないか、と期待したのですが、今のところ、その話は聞きません。少なくとも私の地元近辺では。

 綺麗だと思いますが……パンチのない色調ですので、アピールするカラーには選ばれ難いかもしれません。家でリラックスするカラーコーディネートには使えそうですが。尤も、紫系は落ち着かない、という方もいらっしゃいますね。



 梅が咲き、桃がほころび、桜がもう開こうか、という薄紅の季節。

 ですが、勧められるのは、ステイホーム=お家いろ。


 そこから、薄紅に楝色が差し交じるさまがイメージされました。

 ピンクの匂い立つ花やかさが、少し落ち着いた薄紫に静められ、程良い穏やかな春となるのも良いのではないでしょうか。

 在原業平は桜がなければ『春の心はのどけからまし』と詠んでいますが、のどけき春の心は人が自力で作れるかもしれません。


 我が家のベランダの鉢の隅では淡紫のタチツボスミレが蕾を膨らませています。楝の花にも似た、白みがちな花びらに紫の差し入るタイプの雑種です。

 ですので、桜の気配に浮つく心に、

「私がいるでしょ」

 と、可愛い警告をしてくれるようでもあります。



 楝色のような控えめな紫は色喪にも使いますよね。

 喜びや若さを感じさせる薄紅と、鎮めや老いの気配もある楝色。この2色は老若、慶弔、盛衰、或いは生死、そんな対照性も含む彩りだと私は感じます。

 2つの色が合わされて尚、美しいように、対照性が綺麗に調和する世の中であれたら良いな、と思います。


 人の世は一瞬の夢とも言います。

 こうして新型ウイルスや災害に揺れるのも、世の彩りも、桜に酔うのも、同じように刹那のことなのかもしれません。ウイルスの栄枯盛衰もまた。


 ならば尚のこと、一瞬を美しく彩色出来るものでありたい、と願います。

 桜は美しいから、千年経っても、デジタル化しても、現代人も心乱すのでしょう。儚い美しさが集い、ひたすらに繰り返せたなら、そこに永久の気配を覗き見ることが出来るかもしれません。



邯鄲の夢:人の世の栄枯盛衰の儚いことの例え。「一炊の夢」「邯鄲の枕」「盧生ろせいの夢」などとも。唐時代の『枕中記ちんちゅうき』の故事による。



 ……歌や詩を自分で説明するのは野暮ですが、今回は『KAC2021 ~カクヨム・アニバーサリー・チャンピオンシップ 2021~』のルールに則り、文字数が1200字に到達する仕様にしました。

 歌は20分で出来たのですが、雑記の方に2時間以上かかっております……。


 カクヨムを始めたら数日でジェットコースターな生活になりまして2年。何とか去年、一昨年と参加出来ましたアニバーサリーなだけに、これを逃すと完全に戻って来られなそうな予感がして、ちょっと頑張ってみた次第です。





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