編集長が編集長でなくなるまで
第16話 緊急要請と俺
今回の配信と動画の投稿で大分登録者数が増えた。
今の登録者数は61人。元々は21人だったのでおよそ3倍に増えたことになる。
しかもuwatwitterを早速フォローしてくれた人がいたらしい。10人フォロワーというものがいた。
聞いたところによると、フォローが俺、フォロワーが俺以外がするもの。やることとというと、日記帳みたいな感じ。
個人情報がばれないようにすればとりあえず大丈夫と言われた。
最近は駅の写真や、飲み物を撮った写真で、その人がどんな顔をしているのか特定する人もいるとのことで、思わず自分の取った写真も確認してしまった。
恐ろしい・・・。
まあ、駅から車で1時間以上かかるし、飲み物は基本湧水なので、俺は大丈夫だと思うが。
「日記帳みたいにやるって言ってたな・・・。早速やってみるか!!」
バキボキッ。
凝り固まっていた腰を鳴らし、もう一度深く椅子に座った。
ネットというものの恐ろしさを感じつつ、俺はねっとのたみになる為、作業を進める。
+のマークを押してみると、文字を入力する部分と、バーが出てきた。どうやらここから写真も追加できるようになっているらしい。
|←これがチカチカして、俺が文字を入力するのを待っている。
え~と。絵日記だと、今日の出来事を書くよな??小さいとき夏休みの日記帳とか書いたわ。
じゃあ、今日の出来事っていうと、配信をしたってこと??
「・・・・ふむ。は・い・し・ん・を・し・ま・し・た・・・こんな感じ???」
写真もついてない、文字だけの画面だが、試にこれでやってみることにした。
「ツイートするっと。」
ボタンを押すと、ポンッという軽快な音とともに書いた文字が俺のチャンネルで表示される。
下の方には家のマークや、虫眼鏡のマーク、鈴のマークなど、不思議なものが出ていたので、何だろうと思い画面をスクロールしてみた。
「あ、なんかおすすめの人とか出てきてる。」
画面に勝手におすすめとかいうものが出てきた。
顔写真が貼ってあったり、お花の様子だったり、人形の写真だったりと多種多様だ。
ネットの恐怖を教えられた俺からしたら、話が違うじゃないか!!と思ったけど。
それに比べて、俺のは丸の何か。
味気ない、寂しい。
「これは変えたいな。」
変更するにはどうしたらいいのか。とりあえずいろんなところを触ってみることにする。
丸の部分を押してみるが、拡大されたり、縮小するばかりで、全然変更できる気配がしない。
「うん。無理だな。」
俺は説明のサイトを検索して、アイコンというらしい。の変更方法を知る。
もっと粘れよ??答えが横にあるのに、まだ粘るの??俺は答えを知って勉強するタイプなんだ!!応用はそのあと!!
ってか俺の勉強方法なんてどうでもいいんだよ。アイコンに使う写真はどれにしようかな・・・・。
「あ、これとかいいんじゃないか??」
春の訪れを感じさせるつくしの写真。
小さな奴と大きな奴が寄り添っているのがなんかいいなあと思って撮ったんだったな。
「これも好きだな。」
庭の木にとまった鳥たちの写真。
早咲きの桜の花をつついてたんだよ。腹いせに撮ってやった。
スマホのライブラリをスクロールして写真を流しで見ていく。
こうしてみると、スマホを買ってからというもの、たくさんの写真を撮ったなあ。しかもどれも最高傑作だ。
色とりどり。どれひとつとして同じものはない。
最近撮ったものも、その時どんな様子で撮っていたのかを思い出すと、また味の違ったもののように感じた。
「あ。」
スクロールしている指を止める。
「これがいいな。」
一つの写真が俺の目を引いた。
うん。これがいい。むしろこれ以外じゃしっくり来ねえ。
早速設定からアイコンの変更をしてみた。
ーーーー設定の変更が完了する。
「やっぱり俺は秘境のカルマだからな!!!」
分かりやすくかつ、俺も見ていて心が温まるものを採用した。
うんうん。これが俺だ!!って感じ。なんて言うのかな。作った作品が予想外にとてもよくできたような感覚に近いな。
じっちゃんが勝手に撮って、勝手に送ってくれた写真なんだけど。
庭で寝そべる俺とあごを乗せる3人の家族。顔は尻尾で隠れていて、じっちゃんのサンダルがちょろっと入ったあたりまえの日常。
仁はスマホを握りしめ、口を隠すようにしてクフフと笑った。
さっき投稿した、配信のお知らせには既にハートがついている。
********
初めて動画を投稿してから、2週間がたった。
その間、3日に1回のペースで動画を投稿し、5日に一回編集長から編集の技術を学んだ。
動画の内容は主に俺とじっちゃんの日常を写したものだ。猟をしている様子や、犬を引き連れてタケノコを掘ったり。
結構反応が良かったんだぜ。
もちろん家で、畑の仕事もしたし、小林とも話をしてやった。
ちょこちょこファンキーレッドの様子をアップしていたら、みんなも愛着を持ってくれて、最後の最後にカラスに食われたときは発狂してた笑
1つ変わったことをあげるとすると、俺が東京で服を買ったのをいいことに、「前々から私も選びたいと思ってたのよ~。」と無理やり街に連れていかれたことだな。
俺が「もう買ったしいらねえよ」と言ったことで、余計に火が付いてしまったらしい。
「これとこれかしら。」
「こっちとこっちもいいわね。」
「靴はこれがいいんじゃない??」
「あ、今もうよくねって顔したね?買いますから。」
今までで一番洋服持ちになってしまったよ・・・俺。
これじゃもうシティボーイだ!!
この2週間で大分編集の技術も向上し、次はようやく念願のゲーム実況に入ろうというところまで来た。
ゲームはuwatwitterで聞いたら、ホラー?をやってほしいと言われので、操作が簡単そうなものを選んでいくつかピックアップしてある。
その成果もあり、登録者数は210人になったし、フォロワーは100人を超えた。
そして今日は編集長から編集の技術を学ぶ日。
俺の技術がしっかり付いてきてるって実感できるから、楽しみなんだぜ。
プルルルル・・・・
プルルルル・・・・・
プルル「はいもしもし。」
「あ、編集長??俺だよ~オレオレ。」
「あら。私よ私私。」
こんなおふざけも御茶の子さいさい。よく帰ってくる同郷の知り合いよりも、親しみを感じるようになった気がするぜ。
現在19:00。
普段21:00には寝る身としては結構きついものがある。
しかしこれも自分のため。ひいては集落のためだ。
30分ほど頑張ろう。
この30分をより良いものにするために!!全集中!!
「今日もよろしくお願いしますっす先輩!!」
いつものようにパソコンを立ち上げ、教えを乞う準備をする。
確か今日は、テロップの種類と、出すタイミングだったかな・・・。ソフトウェアの使い方、画面録画の方法、動画のカット、効果音の付け方などなど。振り返ってみると今まですごく頑張ったなあと思う。
「任せてちょうだい!!」
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーー
30分ほど、編集の技術を学んだ。俺が「そろそろ時間だ」と言ったことで、この勉強会の終わりがやってくる。
最後に今日やったことを復習して、お別れの挨拶をしよう。
「よし!じゃあ今日の復習だな!!」
「ちょっといいかしら??」
「はえ??」
今日やったことを事細かに言おうと思ったら、話の腰を折られた。ちょっと食い気味だったし。
「どうしたん??」
あれ、なんかこれデジャヴュだな。前もやったことがある気がすると脳裏にいるもう一人の俺が問いかける。
「ちょっと言いにくいんだけど・・・」
「うん。」
あ、これ俺が前やったな確か。なんだっけ?確か、仕事を受けてもいいよって言うのを編集長に伝えたときだったっけ??
「その・・・・。」
俺の言葉のパロか?わざとなのか?
本当に相談事があるのか分からなくなってきたぞ。
そして、そんなの俺を内心で笑っているのかも知れないとさえ思えてきた。
「お・・・おう。」
「実は・・・・。」
溜めるじゃねえか・・・。これはあたりか???
「モデルさんが一気に体調を崩したり、ケガをしたりで足りなくなっちゃったのよ~。ちょっと早いかもしれないんだけど、東京来れない???」
ごめんね~と申し訳なさそうに俺にお願いをする編集長。正直そんなに溜めるほどの内容だったかと思わんくもない。
お世話になってるし、ぶっちゃけ当初は翌日にでも東京に行くつもりだったので。
・・・・そんなこったろうと思ってたぜ!!!
正直拍子抜けした。
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