第10話 友達と俺

 俺は彼らから、東京の話を聞いていた。


「へ~。有名人?俺テレビ昨日家に来たから、知らねえんだよな。」


 <マジンガーZ>

 <Σ(・ω・ノ)ノ!それは本当か!?!?>

 <現代という名の波にもみくちゃにされてるわけか・・・草。>


 ちなみに顔はさらさない方がいいと言われたので、10人ほどの段階でカメラに布をかぶせてある。

 今はサムネイルにつられたと言ってきた人、最初からいる人合わせて18人。


「あれすげえよな。電車?あれがうちまで来てたらなあ~・・」


 ピピピピ!!


 話を続けようとしたとき、持っていたタイマーが鳴る。


 <おん?宅配便??>

 <↑ちゃうやろw>


 このタイマーは先ほど、シュヴァルツとクレイのためにセットしたおやつのタイマーだ。

 骨の解凍が終わったらしい。


「あ、クレイたちのおやつができたんだな。ってかもう20分もたったのか。おやつもできたことだし、そろそろ録画・・・じゃなくて配信?も終わりにすっかな。」


 拙い俺と会話をやり取りしてくれた人、俺を見守ってて?くれた20人ほどの人には感謝しかねえ。もし誰も見てくれなかったら、気づかないまま永遠にこの方法で動画を投稿しようとしていたかもしれないからな。

 最初はかなり疑って悪かった!!


 <なんか・・・すごい癒された・・・何かはわからんけど。>

 <そう。なんか、あまりにも知らなさ過ぎて心配になるっていうか。>

 <あと、あんま触れられる雰囲気じゃなかったから言えなかったけど、美人であの口調っていうのにやられました。>

 <↑え?俺知らねえんだけどそれ。>

 <↑フッ最初の最初に顔出てたんだぜ。でも見ていた我々により、注意させてもらった。>

 <な・・・ぬぅあに!?!?>

 <すごい新鮮なリアクションで、聞いてて心地よかった・・・。あと、彼自身の嫌味に気づかないくらいの純粋さ?>

 <またやってほしい!!!>



 もう終わりにすっかと言ってから急にコメントが加速した。

 俺はただただ、すげえ。やべえ。しか言ってなかったんだが、皆はなぜか癒されたらしい。

 またやって欲しいということだったのだが、今回は間違いだ。

 しかも、これからはゲーム実況というものをやろうと思っているからなんだかなあと思ってしまう。


「まあ、とりあえず、癒されたってのはよくわかんねえ。次はゲーム実況っつーの?をやろうと思ってっけど、まだ全然だから当分の間はこれみたいのやるかあ。」


 歓喜の声が上がる。こんな風に喜ばれると、やってみてよかったなと思った。


「あ、でもしっかり教えろよ。俺、今日も間違えて配信?をやっちゃったからな。」


 <次は間違えんなよwww>

 <うい~っす。>

 <次はいつやるの?ていうかuwatwitterとかは?>

 <え~どーしよっかなあ~。>


「uwatwitter???・・・俺横文字苦手。」


 <草。>

 <ないってことらしいwww>

 <( ´∀` )・・・心が洗われるようだ。>

 <癒される~>


「次は明日の10時ってことで!!はい。解散!!かいさーん!!」


 俺は問答無用で配信終了のボタンを押した。見ていた人の反応も見ずにぶった切ってやった。癒されたとかよくわからんことで褒められるのが恥ずかしかったとかそういうわけではない。

 決して。


 俺は終了ボタンを押した右手をマウスからどかし、ふう~と息を吐く。終わって初めて気づく。少し気を張っていたらしい。


 明日の10時・・・。なんかこういうの友達みたいでいいな・・・。


 俺はいつの間にか弧を描いていた口に、ハッとなって、一発頬を叩く。


「よし!!おやつだなおやつ!!シュヴァルツ!」

「ヴァフッ!!」

「クレイ!!」

「グル」

「行くぞ!!」

「「ヴォフ!!」」



 *******



 ”秘境に住むカルマ” 登録者数11人



 *******





 2回のYouTubeでの配信を終えた俺は、7日後にもう一度やると約束をして、その間に動画の技術を磨くことにした。

 見ていてくれた彼らは、いつも真っ黒な画面の俺と話をしてくれていた。なぜだかいつも和む・・・癒される・・・と言ってくれる。

 そんな彼らのためにもっといいコンテンツをお届けしたいと相談したところ、シュヴァルツやクレイ、虎徹の様子が見たいという要望が多く届けられた。

 もちろん、ゲームはどれが良いのか、なども教えてくれたが、まずは編集する必要の無いものからあげてみようというアドバイスからそうなった。




 なので今、新しい動画の撮影のために俺は・・・


「今日は、3時間くらい遊ぶかあ~。」


 山にいた。


「ほいほい。サッサと遊べ小僧ども。わしが協力してやるんじゃ。気張っていくんじゃぞい。」


 しかも今日はじっちゃんの協力の元で、だ。じっちゃんカメラと、俺視点のカメラ。今回は2つでとることにした。

 参加者は俺、じっちゃん、虎徹、シュヴァルツ、クレイ。

 遊びの内容は、尻尾取りゲーム。


 俺の腰に巻き付けた紐に、金具で取り付けた茹でた猪肉つける。それを尻に持ってきたら、俺専用のしっぽの完成だ。


「じゃ、俺が3分で隠れるから、皆は俺を探して、追って、尻尾をとったら終わりな!」


 相手は狩猟の血が流れている犬だ。タンマは通用しない。万が一を考えて、手には嚙まれてもいいように手袋を装着している。


「じゃ、そろそろ行くぞい。スタート!!」


 俺は掛け声とともに走り出す。毎日毎日駆け回ってるから、山道もすいすいに上って行ける。傾斜も何のその。

 風下はこっちだから・・・・。

 風の向きも考慮して移動を行う。最後は丈夫な木に登って敵が来るのを待つ。


「そろそろ3分立ったか??」


 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・ガサッ。


「(右か??・・・いやこれは野生の動物だな。)」


 神経が研ぎ澄まされ、森と一体になる感覚。生き物や水の気配を感じる。


「(来たな。)」


 僅かに周囲を囲むようにして、獣の呼吸音が聞こえた気がした。察知した瞬間、俺は囲いから逃れられる方向に走り出す。


「(きっとこれも誘い出しだな。この先は竹藪・・・俺の動きが鈍くなる場所・・・。避けていくか。)」


 俺は誘い出された方向に向かいながら、緩やかにカーブ描いて、彼らの視界から消える障害物の陰に一瞬入る。

 彼らが俺を超えて、俺が向かっていったと思われる方向に走っていった。


「ハッハッ・・・(だがすぐに気づく。早く登らねえと。)」


 今来た道を上る。こうすることで鼻のごまかしが少しだが効くだろう。


「ハッハッ・・・。クソッ」


「ヴァフ!」「ウォン!!」


 左右後方から「来たよ!!」の合図である、声掛けが行われる。

 だが俺もこのままで終わることはしない。


「さいしゅうしゅだんん・・・・!!!木登りいい。」


 をしようと思ったら、前から来た虎徹が視界に入った。

 ああ・・・これは・・・避けられない・・・。


「わおーん!!」


 俺に向かってジャンプしてきた虎徹。

 宙を舞う虎徹。山を駆け上がる俺。追いかけるシュヴァルツとクレイ。この構図から導ける、俺の行動の選択肢は・・・。


「ハッハッ・・・あ~負けたよ~。ふう~。よくやったな虎徹。」


 虎徹を受け止めるのみ。

 虎徹は俺を止める最善の手段をよく理解している。避けてケガさせるなんてことできるわけないんだもの。


 腕の中の虎徹を抱き直し、なでなでする。尻尾はすでに食いしん坊に取られてしまった。

 こういうときに、餌に見向きもしない虎徹は本当に大人なんだよなあ。あとでおやつあげよ。


「お~い。ここら辺にいるんか~??」


 遠くからじっちゃんの声がした。


「ここだぞー!!じっちゃん撮れたあ~??」


「お~途中までなあ。」


 よっこいしょと俺の元まで登ってきたじっちゃんはいい笑顔でカメラを渡してきた。

 素早い彼らを途中まででも撮れたじっちゃんはやっぱりすごい。


 もうゲームは終わりだが、もう少し山を散歩してから帰ることにした。

 2つのカメラで撮っちゃって。編集とか出来るのかって?・・・できるできないじゃないんだよ。やるのさ!

 取り敢えず2つをくっ付けられたら万々歳かな〜。

 またサイト探さなきゃ。

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