野生と現代が鉢合わせた
徳丸。
YouTuberになるまで
第1話 猟師免許と俺
俺の名前は
幼いころに両親を亡くし、気が付くころにはじっちゃんとばっちゃんの元で暮らしてた。
詳しいことは聞いていないが、事故だったんだそうだ。
幸いにして、両親の保険金がそれなりにあったため、俺一人が生きていくためのお金は十分にある。今は俺の通帳の中に入っていて、ばっちゃんが管理してるから、俺の独断で散財することはできない。
母方の祖父母であるじっちゃんとばっちゃんは、熊本県のかなり田舎の方に住んでいて、じっちゃんは集落を取り囲む山々一帯の山主だ。彼は昔、なにかの偉い人だったみたいだけど、今は畑耕して、猟師なんかやってる。
山に囲まれて、秘境みたいになってる集落だけど、50人くらいの人口で和気あいあいとした生活を送っているんだ。
平均年齢は60歳なので、かなり高齢・過疎集落なんだけどね。暗い空気なんて一切ない。
ここの集落を出て行った奴もいるが、そいつらもたまに帰ってきてお土産を渡すついでに、郷土料理を食って帰る。
この集落が恋しくなるんだってさ。
山から流れる川は細いけどたくさんある。だから、大雨が降ったときでも大丈夫なように、大きめの水路がいくつか掘られてる。
さらに、溢れてもいいように家は石垣の上だ。
1世帯当たりの居住スペースがめちゃくちゃ広いから、昔の人はすごい頑張って石垣を積んだんだな。
俺の家は他の家と同様、家と、めちゃくちゃ広い庭が石垣の上にあって、四季折々の果物の木が植わってる。
ただ他の家と違うのは、家の後ろは山になってるんだけど、直接山に行けるように、なだらかな坂道が作られてること。
これは俺の家が猟師だから、すぐに山に入れるようにってのと、家で飼ってる猟犬がすぐに山で遊べるようにする為だ。
田舎で、山に囲まれてて、熊本民ですら、こんなとこありました?って感じの場所だけど、しっかり電線引かれてるし、電波だって圏外じゃない。
こないだなんかは光回線?ってのを引いたってじっちゃんが言ってた。
もちろん、集落の中のものだけで生きて行けるかっていうとそうじゃないから、足りない生活用品は車で1時間かかるところに買いに行ってる。でも、皆めんどくさいから、買い出し係っていうのを月毎で決めて、買い物に行ってもらってる。
俺は免許持ってねえからここ1年街には出てねえけど、流石にスーパーとかは知ってるぜ。
基本的に、ばっちゃんとじっちゃんに勉強教わって、畑仕事して、俺の家族の猟犬たちと山で遊びまくる生活を毎日送ってるわけだけど、これがなかなか飽きねえのな。
あと、小学校にも中学校にも行ってねえ俺だけど、そんなに無知ってわけでもない。高校2年生くらいまでの学力はついてるってばっちゃんが言ってた。
ばっちゃんは何とか大学ってところの教授をやってたから、勉強に関しては結構厳しかったんだ。
つまり何が言いたいかって?俺は何回も山に逃げ出してたってことだな!!
そんな生活をかれこれ20年近く続けてる俺はある意味ニート。秘境ニート。
だからさあ、急に外に出たら死んじゃうよ?死んじゃうんだよ??
・・・なんて。こんな感じで、住んでる集落の説明をしている俺は、現実逃避をしているわけだけど、今目の前に広がる現実はどんなに物思いにふけろうと逃れられない。
ねえ。じっちゃん。
「俺、家帰るううううう!!」
巣穴はどこでしょうか。
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