勇者暗殺

スエコウ

1 勇者暗殺

魔王城、最上階。



ほとんど瓦礫の山と化した大広間で、一人の戦士がボロボロの姿で立っていた。



「お見事です。勇者ダイチ」



凛とした声に戦士…勇者ダイチが振り返ると、勇者の仲間たちがやってくるところだった。



魔王との一騎打ち。



圧倒的な力を持つ魔王に対抗できるのは、同じく圧倒的な武勇を誇る勇者一人。迫りくる魔物の軍団を仲間たちが食い止める間に、大広間で一対一の決戦に挑んだダイチは、見事勝利を収めたのだった。



ダイチは仲間一人一人の顔を見ながら、笑いかける。



「俺一人の力じゃない。君たちのおかげだ」



『聖女』レミス。

『闘姫』モイラ。

『魔女』ウルハ。



この三人の美女が、禁呪によって異世界から召喚されたダイチを長年サポートしてきた勇者のパーティメンバーである。



「ダイチ、ひどいケガです…このポーションを飲んでください」


「ありがとう」



聖女から受け取った霊薬を飲み干して一息つくと、勇者は再び三人に微笑みかけて言った。



「さあ、帰ろう」


「待ってください、まだ仕事が残っています」聖女が言った。


「そうなのか?」


「ええ」



そう言うと、聖女の両手に神々しい光が宿る。そして、ダイチの足元から輝く鎖がいくつも飛び出し、その身体をからめとった。



「ぐっ、これは一体?」


「これが私たちの最後の仕事」


レミスが氷のように冷たい表情で言う。


「お命いただきます」



聖女の後ろに控えていた闘姫が、愛用の大剣を構えて前に出ながら、言った。



「魔王が倒された今、残る戦乱の火種は…お前だ、勇者」


ダイチは必死で鎖を引きちぎろうとするが、なぜか力が入らない。


「力を弱める霊薬が効いたようね。お手柄ですウルハ」


「全員グルだったのか?俺たちの関係は、そんなものだったのか?」


「私たちが選ばれたのは、実力だけではない」魔女が俯きがちにいう。


「あなたを篭絡し、油断させるため」


そして、闘姫の剣が、勇者の首を刎ね飛ばした。

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