第2話 牢屋 男のハートは胃袋から 1

ハワードは目覚める。


目を開き ハッキリとしない視界を鮮明にさせ、ゆっくりと起き上がり自身の状況を確認する。


牢屋の様だ、中にはワシの他に1名。


自身を看護したのであろう寝床周りに道具が転がっている。


(あれは看護者か?)


牢の中にいる男は疲れ眠っているようだ。


牢屋の外には2名の監視役。


(声を掛けるべきか?)


(第一声なんと声を掛けるべきか、、)


(ワシはペンギンで現在牢屋の中 )


(相手は人間。)


(牢屋の中という事は害意がある動物と考えられている)


(しかし看護された形跡をみるところ直ぐに殺してしまおうとは考えなかったようだ)


おそらく看護する理由があったのだ。


「看守の者よ!」


コレが第一声であった。


「腹が減った何か食う物はないか?」


ハワードは座した姿で看守に問う。


看守は 一瞬誰に声を掛けられたのかわからない様子だったが声の主に目を向け驚きが先に立ったのであろう数秒の間の後、


「待っておけ」と言い放つ。


看守の一人がもう一方の看守と話をし報告に向かわせた。


もう一人はと言うと無言で此方を睨みつける。


ハワードは口を開く。

「人と初めて話す。少し話をせぬか?」


看守は黙ってこちら睨みつける。


「ワシは何故、牢に囚われておるのじゃ?」


看守からの返答はない。


「そう気を張らんでもペンギン如きが人間を食らったりせんわ」


「ペンギンとはなんだ?」


「主はペンギンを見た事がないのか?」


「だからペンギンとはなんだ!」


「声を荒げぬともよい、説明してやろう。ペンギンとは北国の様な寒い場所で生息する鳥類で空は飛べぬ。かわりに氷海に潜り魚などを捕食していきる動物の種の名称じゃ」


「むしろ愛らしい姿じゃろ」

ハワードは自身の尻を振ってみせる。


警戒している様子の看守は答えず無言でこちらを見る。


「面白みの無いやつじゃのぉ」


もう一人の看守が数人の警備兵を連れもどる。


「怪鳥の様はどうだ?」


「ああっコイツはどうやらペンギンというらしい。」


「ハワードだ」

看守達の会話の間に入る。


「ではハワード少しの間お待ち頂こう」


「現在当主屋敷まで伝令を飛ばしている当主到着までの間大人しくしてもらいたい。希望された食事の手配は今から行う。そなたの様な獣の食事には疎くてな、どの様な食事がお好みか?人脳などと言われても我々には用意しかねるがな」


ハワードの好物はステーキだ 焼いた牛の肉を表面に軽く火を通し塩コショウで味付けしたレアが好みだが牛と言う動物が存在しているのかもわからない異世界では、

「動物の肉を焼いたものと」注文した日にはいったいどんな動物の肉がでてくるのかわからない。


「人が普段口にしているもので構わない味付けは少し薄めで頼む」


「他に不自由な事はないか?」


「そなたらから見たら魔獣のワシにやけに親切ではないか」

ハワードは微笑する。


「我々は知りたいのだ、君について」


扉から登場した看守というよりも身なりがよく精錬された装いの初老が声にする。


「はじめましてハワードくん」


「この領地を治める男爵家当主 クラウザー シュトロハイム という」


「まずは牢に拘束する非礼を詫びよう、しかしながら君は我々からみて異形の魔獣」


「どのような事態が起こるかわからぬ故、調書を作成する間は拘束させて頂く形になる」


時は過ぎ、、


「なぁ、ビリーこの食事どうにかならんか?」


ハワードは器用に羽でスプーンを持ちながら鉄格子の向こうにいる男に言う。


頭に巻いた紅白のバンダナが特徴で概ね金髪を短く刈った髪型の男


ハワードはビリーと呼ぶが実際はビー・リー

リーと呼ばれることが主の調書を受け持つ警備兵だ。


「俺の名はリーだ!ビー・リー」


「外出もままならぬ牢生活、食事くらいの楽しみしかゆるされるのにコレではなぁ」


ハワードは器用に持ったスプーンんで皿を指す。


皿に盛られたマッシュポテト

潰して塩で簡単な味付けをしただけ、、


コレが朝晩繰り返しでてくる。


元現代人のハワードには耐え難いものがあった。


「メシなんて腹に入りゃクソになるだけのそれだけのもんだ」

リーはあっけらかんと言い放つ。


それがこの世界の一般であり文明レベルなのだ。


「なぁビリーよ!提案があるのだが、コレと同じ材料で美味い食べ物の作り方を知っている。一度作らせてくれぬか?」


「ハワードあんたにゃ同情するがその格子から出す訳にはいかない、 わかるだろ?」


案外このリーと言う男は良い奴なんだろうワシの事を魔獣とは考えておらぬようだ。


「ではリーよ、お主 金持ちになりたくないのか?」


「はぁ?金持ち?慣れるもんならなりテェよ」


「ではワシが教えてやろう」


「まさか魔獣のあんたに心臓を捧げよ!とか言うんじゃねーだろーな悪魔契約は遠慮だぜ。そんなもんは調査団に頼め」

リーの軽口に(コイツ現代サブカルに通じてる奴なのか?)と錯覚する。


「ワシ、君にお願いがあって来たんだ

ワシと契約して、金持ちになって欲しいんだ」と可愛らしく言うハワード


作者が強引にハワードに言わせてみた。


「見た目可愛い地球外生命体みたいな事言ってんじゃねーよ」

リーにも作者の悪意を言葉にさせる。


ハワードは思った。

(ワシよく考えればこの姿(見た目可愛い地球外生命体リーの言葉は間違って無い気がする

それを説明する必要もないかと、、)


「ならば作ればよかろう!」

「御当主!!」


このやり取りをどこから聞いてた?

ご都合ラノベ的にやってきた当主にハワードもなんとも言えない表情をする。


「この施設にも厨房くらいあろう?」


男爵領の警備兵詰所には昼夜問わず周囲周辺の監視の任がある。


当然、在籍する兵の数もかなりの人数がおりまかない婦も数人存在している。


しかしながら警備兵の食事というのもやはりこのマッシュポテトなのだ。


「ではハワードよ 今宵の食事は自身で作るが良い、ただし私も同席させてもらう」


クラウザーシュトロハイム は、にこやかに言った。



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