第12話 坂城健吾 60歳の質疑応答

 何人かが拍手をした。

 だが、衝撃的な話に唖然としている10~50歳の私。


 60歳の彼は急に年を取ったよう。しわが増えている。

 表情は、無表情。

 相変わらず、髪はきれいに切りそろえられている。

 服装は、アイロンのきいたシャツにスラックス。


 50歳の私が聞いた。

「妻は・・どうしたんですか?」

「戦争で・・・死んだんだよ」


 50歳の私はまた衝撃を受けた。

 事故や病気ではなく、戦争で・・とは。


「相手の国はどこなんですか?」

「戦争の相手はいろいろなんだよ。ちょっと複雑な戦争でね。

 いろんな国がお互いを攻撃しあった。

 ただ、妻が死ぬ原因となったのは日本のせいだったがね」

「え・・・」

「表向きは戦争ではなく事故となっているがね」


「戦争は、終わったんですか?」

 20歳の私が聞く。

「あぁ。終わったよ。大変だったがね」

「そうですか・・・」

 その一言で、みんな察した。


 30歳の私が聞いた。

「これからどうするんですか?」

「さあな・・ただ、お前の話を聞いて思ったよ」

「はい?」

「また、あてどなく旅をするのもいいかもな。時間もできたし」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る