第2話 坂城健吾 10歳の質疑応答

 そこにいた全員が拍手をした。

 10歳の彼は照れたようにうつむいてしまう。


 いや、彼というのはやめよう。


 10歳の私が、うつむいて恥ずかしそうに照れている。


 年若い私が、ぽつりと言った。

「そっか・・そうだったなぁ」

「あの・・・また友達と会えるでしょうか?」

 10歳の私が聞いてきた。

 それに対して年若い私が言った。

「ほんとは、美樹ちゃんに会えるか気になってるんだろう?」

 10歳の私は顔を赤らめる。

「年賀状はやり取りしていたんだけどね・・・。美樹ちゃんは八丈島に引っ越したそうだよ」

「八丈島?」

 それは、遠い地の果てのようなイメージであろう。


 実は、そのあと美樹ちゃんと会うことはなかった。

 大学時代にでも、会いに行けばよかったのか?

 でも、高校くらいの時に年賀状のやり取りもなくなっていた。


「そうですか・・」

 残念そうな10歳の私。気持ちはよくわかる。


「そういえば、いい機会だから教えておきたいことがある」

 もう少し年上の私が10歳の私に話しかけた。多分30歳くらいだろう。

「はい・・・?」

 ちょっと引き気味の少年。

「二つ話しておきたいことがある。一つは食べ過ぎないこと。小学生のうちに食べ過ぎて太り始めたんだ。若いうちに太るとそのあとは痩せにくくなるんだ。

 もう一つは・・・スキンケア。あとでしっかり教えるからね」


 実は、関東に来て母親が教育熱心になった。多分近所の影響だろう。

 そこで、中学受験をすることになった。

 結果が大失敗ではあったのだが。

 その際に、母親は毎日夜食を出してきた。

 それが太る結果につながったのだが。


 また、中学から高校にかけて、ニキビで悩んだ。

 後年、スキンケアの仕方を覚えたが若いうちはそんなことも知らなかった。


「スキンケア・・ですか?」

 まぁ10歳の少年にはピンとこないだろう。

 それでも、後々後悔することになる。早いうちに知っておくのは良い事だと思う。


 ところで、タイムパラドックスとかは起こったりするのだろうか?


 そもそも、現在の自分には過去にここに来た記憶はない。

 ということは、この部屋を出たら忘れてしまうということか・・・

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