小学校 その1

「今日から一週間、スクールカウンセラーとしてこの学校に来ていただくことになった、鬼村ルミ子先生です。みんな、先週は悲しい事故もあったので色々不安に思うこともあるでしょう。なにか悩みや聞いてほしいことがあったら鬼村先生に相談してみてください」


 鬼村ルミ子は相変わらず赤いYシャツ姿で襟を立てている。それは小学校であっても変わることはない。


「よろしくね、何でも気兼ねなく来てちょうだい。別に大した悩みじゃなくても、話し相手くらいにはなってあげられるから」


 教室の中にいる20人ほどの生徒は、この女がただのカウンセラーではないということはピリピリと肌で感じていた。







 ――――それは、三日前。


「久しぶりね、片桐。少し痩せたわね」


 午後の三時、子どもたちはおやつの時間に心を躍らせる中、ルミ子は大学時代の友人に突然呼び出されて若者向けの喫茶店に来ていた。


「ごめんね、ルミ子。急に相談に乗って欲しいなんて無理言って」


 ルミ子はコーヒーを飲みたかったが、店内が禁煙のため、仕方なくキャラメルフラペチーノを注文した。片桐と呼ばれた細く顔色の悪い女性は、既に注文を終えており、カフェモカを飲んでいる最中だった。


「野暮なこと言わないの。アタシたちの仲でしょう。あ、あんた、小学校の先生やってるんだっけ? なに、仕事の悩み?」


 片桐はいきなり核心を突かれたようで、頷いたのか俯いたのか分からない動きで下に目をそらした。


「やっぱり、分かるんだ。それも霊感ってやつ?」


「こんなのは霊感じゃないわよ。あんたも持ってるでしょ、女のカンよ」


 数年ぶりに会ったにもかかわらず、何も変わらないルミ子を見て、片桐は幸薄げに笑った。


「相変わらずだね、ルミ子は」


「森羅万象、鬼村ルミ子は永久不変にして不滅よ。さあ、話しなさい、あなたの悩みを」


 片桐はルミ子を見つめた。黒い瞳の奥が濁って揺れている。


「私が受け持ったクラスの男の子が、先月、死んじゃったの。事故か自殺か分からないの。分からないんだけど、最近、クラスの子が、いたって言うの。花を置いた机に座っていたって。みんなが見たっていうの。お願い、ルミ子。私と一緒に調査してほしいの。そして、もし彼の霊がいるというのなら、聞いてほしいの。死の真相を」

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