第6話

「そ、そんな神様がどうして……」


「あぁそうか、メリウス達には説明してなかったな」


 と、言うことでメリウスとカレン(メアルは気絶しているので後ほど)に説明をする。勿論、二人は邪神の存在を知っていたため、この出来事に大きく驚いた。


「……俺としては本当に心苦しいんだが、二人にもこの戦いに出て欲しいんだ」


「私達が……」


「邪神討伐に……」


 俺がそう言うと、流石の二人の顔にも不安が色濃くでる。その反応になるのも当然だろう。


 どんなにアテナ様の加護があろうと、本能的な恐怖は拭えないものである。俺だって、本当のところは怖い。


 だって、態々神が出張ってくるほどである。完全に討伐して消し去りたいというのもあるかもしれないが、神が出てこないといけない状態にあるのか、ということも勘ぐってしまう。


「無理にとは言わない。だって、二人はまだ学生――――子供なんだ。本来は庇護されるべき存在だ」


 そんな二人に、戦場に立ってくれとお願いする俺は教師失格なんだろうな。


「―――私は」


 しばらくの沈黙の後、メリウスが胸の前で両手を組む。


「私は、先生と出会ってから沢山後悔をしました。どうして、私はこんなにも弱いのだろうと」


 組んだ手に力が篭ったのを感じた。


「ですが、私は今本当に先生の役に立つ時が来ています………この後後悔しないためにも――――私の力、使ってください!先生!」


「わ、私も!私も参加する!」


「カレン………」


「無力感を感じていたのはメリウスちゃんだけじゃない……魔神の時だって、結局私は何も出来なかったし――――私だけ、何も無い一般人」


 カレンは実力がない。一般人目線で見たら充分なのだろうが、俺たちというこの世界でも特殊な人種と関わりあっているせいで、人一倍無力感で苛まれていることだろう。


 だけど、それを感じさせることなく、ひたすら努力をし続けるその姿は非常に魅力的だ。最近は兄さんに一本とったって聞いたし。


「私、ここで逃げたくありません!だって私……先生のことが好きだから……!ここで逃げたらきっと、私は全てから逃げることになっちゃう……!」


 カレンも力強い目線で見つめてくる。そっか、俺のことが好きだから――――――


「………ん?」


「あれ?」


「―――――あっ」


 一瞬、俺たち三人の間で謎の空白が生まれた。というより、カレンが言った言葉に思考を一旦停止せざるを得なかったとも言う。


 自身が何を言ったかに誰よりも先に気づいたカレンは、急激に顔を真っ赤にして――――


「にゃ、にゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 一瞬で教室の端にテレポートした。あいつ、いつの間に使えるように……。


「か、カレンちゃん!?」


「ふふ、大変なことになってるね、い・ろ・お・・こ」


「ちょっと一発叩いても?」


 カレンへ駆け寄るメリウスを横目に、俺はアテナ様へアイアンクローをかますのであった。


「その……カレン」


「は、はひ……」


 その後、やけにニンマリとしたメリウスに連れてこられたカレン。完全に上がっている。


 しっかりと目線を合わせるために、俺は片膝を着いた。結果的に、告白の形がどうあれ、返事は返さなければならない。


「その………なんだ……責任は取る」


「~~~~っ!」


 カレンは再度、真っ赤になった顔を両手で隠した。


「あ、それじゃあ今のうちにやる事やっとけば?」


「やる事?」


「そりゃ勿論、キスだよキス」


「キッ!?」


 その言葉に反応したカレンが変な声を上げた。


 何故。何故一体この場でその単語が出てくるのか。


「ほら、じゃないとカレンちゃんのファーストキッスは私が貰うことになっちゃうから」


「あー」


 昨日のルーナぶっちゅー事件を思い出して納得する。あの後すっごくルーナがキスを強請ってくるから凄かった。あれよりも濃厚なやつをさせられた。


「え……先生?その、ここ……人の目が……メリウスちゃんが見て――――どっ、どうして私の腕をっ!?あ、あのあの!私まだ心の準備が――――んんっ!」


 カレンの腕を取り、素早く抱きしめてから唇を奪う。最初は空いている右手で俺の胸を押していたのだが、五秒後には服を掴んでくる。


「ほら、我が愛し子。あれが大人のキッスだ。参考にするといい」


「あわわ……カレンちゃん……先生……大胆です……!」


「せ、先生……」


 とろん、とした目で俺を見つめるカレン。上気した顔と相まってすごく可愛くて――――とてつもなくエロい。


「絶対カレンの事は守り抜くからな」


「先生………んっ」


 そしてもう一度、俺とカレンはキスをするのであった。

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