第3話

 マイの案内に従い、無事にヒヒイロカネを確保することが出来た俺。ヒヒイロカネは悪魔を封印できる唯一の金属なため、主要な街や都には必ず一つは置いてある。


 そして、先程の余波で吹き飛んでいなかったヒヒイロカネを使い、錬金術の応用で封印武器を作成。それをアクタへと刺すために奴をふん縛っている場所へと戻ってくる。


 悪魔ならこのまま封印される。悪魔じゃないとしてもこの汚物は領主を襲ったという犯罪者。しかも、悪魔の力にも手に出していたため死刑は確実だろう。


 ……まぁ、王都がそこまで腐っていなければの話だが。


 封印武器に聖の力を流し込み、そのまま神をも縛る鎖エルキドゥで縛られているアクタに向かって刺した。


 人の肉を断ち切る感触。気分がいいものでは無いが、こいつを確実に殺すか封印をするため、肉の奥深くまでこいつを突き刺さなくてはならない。


「あっ………がっ……」


 拘束していた神をも縛る鎖エルキドゥを解く。ジャラララ!と音を立てながら虚空へと消えていく鎖の中から、刺した場所から血を流すアクタが白目を剥いて倒れた。


 ……石化しない。となると、完全な悪魔ではなかったのか……それなら、どっかの悪魔の力を借りてこんな事をしでかし―――――


「……マイ?」


「ご、ごめんね……?その、少しだけこうさせて貰えないかな……」


 考え事の沼に落ちようとしていた俺をすくい上げたのは、青い顔で震えるマイだった。背中に抱きつき、何かをこらえるように俺に縋る。


 ……多分、彼女は人の死体を見るのが初めてだったのだろう。見ていて気持ちがいいものでは無いのは確かだ。


 俺は、彼女に死体を見せないように、この体でマイのことを隠すのであった。







「こほん。ごめんなさい、情けないところを見せたわね」


「別に、あれは仕方ないと思うが……」


「わ、忘れて忘れて!あんなのキャラじゃないから!」


 あれから数分後。死体となったアクタは王都へと吹き飛ばしておいた。目標地点は王がいるであろう謁見の間だ。


 つい先程、メルジーナ様からアレシオンから宣戦布告を受けたとの報告が飛んできたため、ならこちらも意趣返しに。ということでアクタの死体を魔法速達したのである。


 もちろん、周りをパニックにしないためにアクタの死体は隠蔽をかけてるし、血が吹きでないように傷穴も塞いだ。ヒヒイロカネは勿体ないので回収済み。


 そんな諸々の事を終わらせ、俺は天井が吹きさらしとなったマイの執務室へと招待された。ちなみに、この館の被害は建築物だけで、人的被害は一切ないとの事。


 なぜなら、この時間帯は基本的にマイしかこの館にいないからである。そういう点では運が良かった……良かった?


「こほん!それじゃあ、改めてだけど本題を聞こうかな!」


 赤くなった顔を誤魔化すように咳払いをして、俺に話題を促そうとする。まだ若干顔が赤い気もするが、本人が触れられたくないのであれば、スルーをするか。


「それじゃあ、改めて自己紹介を。ディルクロッドの魔法三家ディルソフ家次男のティルファ・ディルソフです」


「うん。じゃあ私も改めて自己紹介。ジャパニカ14代目領主のマイ・サクラよ。よろしくね、ティルファくん。さっきの通り、私のことはマイでいいわ。後敬語もなしね」


「分かった。マイがそう言うなら」


 本人の許可も出たので、軽い口調で話す。


「それじゃあ早速本題だけど、もう既にディルクロッドとアレシオンの戦争は始まってしまった。もし良かったら、ディルクロッドに付いてくれないか?」


「うん、いいよ」


「……軽くない?」


 あるいみ街の命運を分ける選択だぞこれ……。そんな簡単に決めていいのか?マイがSOSを出したとはいえ。


「別に、元々アレシオンにはいい気持ちは持ってないし、ディルクロッドが独立したーって聞いて、ずっとディルクロッドの領地にされたりしないかなーって思ってたもん」


「ぶっちゃけるなぁ」


「事実でしょ?それに、今日の一件でかんっぜんに怒った……私の貞操も奪われそうになったし」


 ニッコリと笑うマイ。だがしかし、その顔からは真っ黒いオーラが隠しきれていない。


「それに、ティルファくんは恩人だもん。恩人の頼みは断れないよ」


「いや、別に恩人になったのはたまたまなんだが……」


「いいのいいの。私が救われたのは事実なんだから」


 そして、マイは徐に立ち上がると、ぴょーんとジャンプして執務机を飛び越えて俺の目の前に着地する。


「だから、これからよろしくね?」


「……最初は約束を取り付けるだけだったんだけどなぁ……まぁいいや、よろしくな、マイ」


「うん!」


 そして彼女は、俺の手を握って笑った。


「所で、この館どうする?」


「言わないで。今必死に現実逃避してるから」





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おはようございます。12月ですね。


今日からカクヨムコンが始まります。私も4作ほど出したいと思ってますので、応援よろしくお願いします。


出すのは、RTAと、ヒロイックと新作二つです。宜しければ読んで星でも置いていって下さい。

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