第6話

「――――!」


「キャッ!?」


「え!?な、なんですか!?」


 メアルも新たにこの特例クラスに参加することになり、新体制で迎えた俺のクラスだが、午後の授業の途中で、突如として街中に響くアラームが鳴った。


 その音を聞いて、俺はすぐさま意識を切り替えて三人の元へ向かい、すぐさま教室に転移。その後にラミュエールもしっかりと拾った。


「せ、先生!これは――――!」


「アラームだ。この街に危機が訪れた時になる、とびきり危険なやつだ」


 この街には、危機が突如として迫った時に鳴り響くアラームが存在する。


 普段から、メルジーナ様は外に目を向けており世界の情勢を見つめている。その中で、ディルクロッドが危険なことになるとメルジーナ様が判断した時だけ鳴らし、住民に危機が迫っていることを伝える。


 種類は三種類あり、それぞれ長さでタイプが違う。


 一番短いのが『モンスターの襲撃』。この世界でトップクラスに強いドラゴンとか、モンスターが大軍を作ってこの国に押しかけようとしている時になるアラーム。


 普通くらいなのが『悪魔の襲撃』。前回のラプラス騒動や、グラシャ=ラボラスがここに来た時と鳴っていた。


 そして、最後に『戦争』。この街が巻き込まれる、若しくはこの街が狙いの時に鳴るアラーム。


 今回は、一番長かったので『戦争』だ。全く、誰が最強の『氷の女帝』が指揮するこのディルクロッドを攻めようとしているんだ?バカにも程がある……。


 そんなことを考えていると、頭上にポンッ!と手紙が現れる。それをキャッチすると、封にはディルクロッド家の紋章が象られていた。


「お前ら。俺はちょっとメルジーナ様のとこに行ってくる。ラミュエール、三人を頼んだ」


「はい。お任せ下さいティルファ様」


 メリウス達のことはラミュエールに任せ、俺はすぐさまメルジーナ様邸に転移をする。既に、この手紙に転移の魔法陣が仕込まれていたため、メルジーナ様が予め指定していた位置に転移をした。


「ティルファ!」


「ティルファさん!」


「!アリス、ルーナ」


 勿論、そこには俺以外に呼ばれた人もいて、ねぇさんにルドルフ兄さん。父さんやマリナ様などなど、この国に所属している強者ばかりが集められていた。


 アリスとルーナが俺を見つけ、こちらにやってくる。それを見て俺は内心ホッとした。まだ何も起こってはいないが少し心配した。


「ねぇティルファ。これって――――」


「シッ。もうすぐ、メルジーナ様から説明がある。今は静かに」


 俺が指を唇に持っていく仕草をすると、ルーナは口を閉じて頷いてくれた。


 そして、件のメルジーナ様は、執務室でいつも仕事の時に座っているイスで、ジッと手を見つめている。


 その手に何があるのかはこちらから見て分からないが、ほんの少しだけ、水色の光が見えた。


「――――ごめんなさい。そして、急に集まってくれてありがとう」


 そして、見るのをやめて、ギュッとそれを握ると俺たちを見るメルジーナ様。


「先もアラームで知らせたとおり、この国を標的とした戦争が起ころうとしているわ。今回みんなに手紙で招集したのは、その事について話そうと思っているからよ」


「メルジーナ様。一体どこの愚か者がこの街を攻めようとしているので?」


 そうメルジーナ様に問いかけたのは、魔法三家であるマックイーン家現当主であるマルクス・マックイーンさんである。


 普段は、すっごくニコニコとしており、趣味は子供たちと触れ合うこと。めちゃくちゃ優しく、子供たちからも『マルクスおじさま』という名で親しまれている。


 実際、俺もあの人のことは子供の時にすっごいお世話になった。あの人がくれるお菓子がすっごい美味しくてよくねぇさんと一緒にねだりに行った思い出がある。


 しかし、今のマルクスさんはそんな雰囲気は消え、目を鋭くしている。いかに温厚なマルクスさんであろうと、この街を狙うのは許せないようだ。


「そうね。勿体ぶらずに言うわ。今回の敵はアレシオンよ」


『………………』


 部屋を静寂が満たした。え、まじ?メルジーナ様もなんとも言えない顔をしている。


 アレシオンは、元々ディルクロッドが独立する前に仕方なく所属していた国の名前だ。


 ………え、これまさかアレシオン王が鬱憤を晴らすためだけに起こしたの?

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