第5話

 様々な疑問は残ることとなったが、まぁあんまり気にしないことにして俺は教師陣に当てられた部屋を出て観客席の方へ向かう。


 アリスとルーナは何やら二人で見ると言っていた。何でも、たまには二人っきりで行動したいとかなんとか。仲睦まじく離れていった俺の心境を答えよ。


 答えは普通に寂しいだった。いや、嫁さんの仲が良好なのはいい事だよ?うん……でも、一人残されるのも寂しい……。


「せんせーい!こっちです!」


 カレンの魔力反応を頼りに近くに来た俺。事前に一緒に見ましょう!と言われていたので、この七日――――いや、六日間はメリウスとカレンと見ることになるだろう。


 ブンブン手を振るカレンに手を振りながら近づく。キチンと二人分の席を確保しているみたいだった。


 周りから先生?あれで?とか、まじ?見たいな目を向けられる。まぁ俺は見た目も実年齢も若いしな。


「席取りお疲れさん」


「えへへ、先生のためですから!」


 むん!と胸の前で両手を握りこんだカレン。その姿を見て笑い、目線を会場へと移す。


「さて、こういうのは競い合い場でもあるが、勉強の場でもある。他人の魔法を見て、どんな感じに魔力を使っているか、どういう風に魔力を節約しているかを見れる絶好の場所だからな。どんどん視て盗むように……まぁ、カレンの参考になりそうな選手はあまり居そうにないが………」


 全学校の参加者は合計400人。そして、今日の魔法コンテストに参加するのは大体60人程度か?


 さて、魔法コンテストはこの前説明したと思うが、魔法の威力を競い合う競技である。使用魔法は自由。得点上限はなしで、立っている場所から20mほど先にあるあの石――――魔鉱石に当てることで点数が出る仕組みだ。


 魔鉱石は魔法を吸い取ることが出来て、その強度は超一級。メルジーナ様の本気の魔法を吸い取ってもビクともしないという耐久力を誇る。世界に一つしかない人工鉱石なのだが、一体どうやって作ったんだあれ……。


「あ、始まりますよ」


「どれどれ……最初はアイセーヌのとこか」


 真っ白なローブが標準制服であるアイセーヌの所は非常に分かりやすい。


「――――参ります!」


 ハキハキとした声が耳に届く。なるほど、彼女はなかなかな使い手だな。


「彼女、よく見ておけ」


「はい」


 !と一番手の彼女の手から、紫色の閃光が弾け飛び、次第にそれは槍の形となっていく。


天翔る雷の槍ブリューナク!」


 そして、彼女が魔法の名前を叫ぶと、雷の槍が一直線に魔鉱石へと向かっていき、爆散。当たった衝撃が観客席まで届き、髪が揺れる。


「わっ!威力すごい!」


「しかも天翔る雷の槍ブリューナクの使い手か……やるなあの子」


 俺があのクソ勇者としたくもない再会をして、なんか流れで共闘することになった時に、勇者を巻き込みながら悪魔にぶち刺さった、俺の十八番でもある魔法。使用難易度は特級になり、それを使えるのは十分に才能がある証拠だろう。


 まさかの特級魔法の登場に会場が盛り上がり、プラチナロンドの髪を靡かせ、ドヤ顔をする彼女。まぁ、これだけ会場を沸かせたのならドヤ顔したくなるよね。分かる。


 そして、気になる点数の方は――――357点。


「おぉ。いきなり300点越え」


「あの人、凄いですね……」


 点数が表示されると同時に、会場の上空に浮かんでいる画面に、先程の点数を取った彼女の名前が一番上に表示される。例年、この魔法コンテストの平均は100~200の間となっているので、この357点がどれだけ凄いか分かるだろう。


「先生はこれ、何点だったんですか?」


「んー……確か1000は超えてたような」


「え"っ」


 こら。乙女がなんて声を出すんだ。






 それから、ドンドン出番進み、残りの挑戦者と残り10人となっている。この間にも中々な魔法を見せてくれた生徒もいたが、一番最初の記録を塗り替えれておらず、現在もずっと一位は彼女のまんまである。


 二位と三位はディルクロッドの生徒で、点数は352点と348点。どちらも僅差で惜しい闘いとなっているが――――神童はそれすら全て捩じ伏せる。


「――――行きます」


 ここでついにメリウスの出番である。最初は、エルフなのにディルクロッドにいることに興味の視線を向けられていたメリウスだったが、定位置に着いた瞬間、無意識に漏れ出す魔力の圧によって会場には静寂が産まれる。


 バチッバチッ!とメリウスの手から紫色の閃光が弾け飛び、その事に一位のあの子が「嘘っ!?」と叫んだ。


 魔法は全く同じ。だがしかし、違うところがあるとすれば威力、出力、数。全てにおいてメリウスの方が数段も上である。


「――――天翔る雷の槍ブリューナク


 2m程の巨大な雷の槍が三本、魔鉱石へと向かって弾け飛ぶ。いやぁ、いくら神童とはいえよく特級をこの制度で完成させたよな。練習し始めたの五日前なのに。


 ドンッ!と目も開けられないほどの衝撃が会場中に響く。暫く砂埃が舞うが、試合委員会で雇われている魔法使いが風の魔法を使いそれ晴らしていく。


 そして、砂埃が晴れた中、魔鉱石に浮かぶ点数は――――


「……863点。ま、及第点か」


「え、あれで?」


 カレンが隣で呟いた。次の瞬間、会場が大いに盛り上がった。



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新作の方投稿してます!やっとこさヒロインが出てきました!

『トンネル抜けたら異世界だった~訳ありエルフと異世界チャリ旅~』

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