第10話

「カレン、メリウス。終わったぞ。アンナ達も護衛ありがとな」


「先生!」


「お疲れ様、ティルファ」


 尋問もつつがなく終わり、引き出せるだけ情報を引き出して俺はメリウス達を迎えに保健室にやってきた。部屋に入ると、カレン達がこちらによって来て服を掴んできたので、頭を撫でてみる。


「それで、なにか分かったの?」


「まぁ、色々とな……」


 あの二人から引き出した情報で、バックにいるレオ様――ガレオンとかいう虎人族ライカンスロープがとんでもない欲望でメリウスを付け狙っていることが分かった。


 その話を聞いた時は勝手にやっとけ!と心底思ってしまった。ほんと、俺からしたらくだらない理由だよ。下手したら、世界を戦争の渦にまきこもうとしていたんだから。


「それで、ティルファ。次の作戦は決まったの?」


「あぁ、バッチリと決まったよ」


 尋問をした後に、姉さんとちょっとだけ話し合って決めた。姉さんも同じようなことを思ってくれていたようで、安心した。


「メリウス、カレン」


「はい」


「なんですか?」


「行くぞ、殴り込みに」


「「………へ?」」













 フォレストキシニョフの邸宅にいるガレオンは、それはもうイラついていた。自制心から暴れるとまでは行かないが、指先で肘掛をトントンと忙しなく叩き、足は小刻みに震えている。


 理由は当然、ガレオンの部下が未だにメリウスのことを始末できていないから。今まで何回も襲撃者を送り、そのどれもがキシニョフ内では相当な実力を持つものなのだが、ガレオンの元に帰ってくる反応はことごとく全部が失敗。いくらガレオンでも、イラつきがおさえきれなくなぅていた。


「クソっ……」


 イラつきを飲み込むように、手に持っていたワイングラスに注いであるワインを飲み干す。


(……いざと言う時は)


 チラリ、とガレオンはテーブルの上にある巻物へ目を移す。これはある時、どうやって侵入したのか知らないが、マントで体全体を覆ったどことなく小物臭がプンプンする仮面を被った闇商人が置いていった物に目を向ける。


(……いや、ダメだ。あれを使うのは俺の流儀に反する……御せるかどうかも知らない未知の存在を頼る訳にはいかない)


 そしてその時、ガレオンの元にまたもや失敗の報告が入る。ティルファに捕まった二人は、ガレオンの部下でも一位二位を争うほどの実力者。ガレオンでも運が悪ければ負けてしまうほどの部下がやられてしまったことに、顎をあんぐりと開けてしまった。


(……仕方、ないか)


 ふらり、とガレオンは立ち上がり歩き出す。その方向は、謎の闇商人から受け取った魔法陣が描かれている巻物の元へ。


 既に、視界に写ってしまった時点で、ガレオンがこれを使わないという選択肢は実はない。


 なぜなら、という存在は欲に取り付き、己を使わせようとせんがために、使用者となる心をゆっくりと、毒のように変えてしまうからだ。


 ガレオンが勢いよく巻物を開くと、魔法陣と、それを呼び出すための文言と、悪魔の名前が記述されてあった。


「……グラシャラボラス」












「―――っ!!!」


「っ……!」


「せ、先生……?メリウスちゃん?」


 突如として足を止めて身体を震わせた俺たちを不思議がったカレンが、俺たちの名前を呼ぶ。


「せ、先生……な、なんですかこの邪悪な魔力……わ、私……」


 初めて『負』の魔力をその全身に感じたメリウスは、恐怖から俺の腕を無意識に両手で掴んでいる。かく言う俺も、経験ないことは無いが、少しだけ額から冷や汗が零れる。


「おいおい……勘弁してくれよ………」


「先生……」


「あぁ、二人とも聞いてくれ」


 ――――悪魔が降臨したぞ。




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昨日はルームマッチに来てくださってありがとうございました!ということで、今日もルームマッチ開きます!


今日も芝2400で行います。名前は『かーっ!卑しか女杯!』です。デバフスキルてんこ盛りな愛が重馬場なウマ娘の皆さん、こぞって参加ください。


昼12時15分、Twitterにて先行受付


12時20分より公開

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