いざ、ディルクロッドへ

第1話

 国一番の美食街として知られる街、『ジャパニカ』に向かっている俺たち。馬車の中には、朝イチということもあり、客は俺らしかいないため、堂々とアリスの膝枕を堪能していたんだが………。


「へっへっへ……荷物と嬢ちゃんをおいて、男は去りな」


 と、持っているナイフを舌で舐めてる盗賊たちに囲まれました。


 いや、そんなことある?


 事態は突然起こったのだ。ジャパニカについて説明の終わった俺は、もう一度アリスに頼んで膝枕をしてもらい、そのついでに寝ようと思っていたんだが………今更だけど、この二人にいつ告白しよっかなぁー的なことを考えていたのだ。


 別に、この世界では、きちんと養える程の器と財力があれば、妻を何人も娶っていいし、そのまた逆も然り。まぁ基本的に男の独占欲が強いため、一夫多妻制が多いことは否めんが。


 そんな俺は当然、この2人がそばにいないと落ち着いて寝れないくらい、アリスとルーナのことが好きだ。それはハッキリと言える。


 だが問題は、それをいつ二人に対して告白するか、だ。


 勘違いじゃないから言うけど、二人は俺のことが好き。普段見てればそんな態度は顕著だし、そもそもこうして膝枕とかしてくれないだろうし、手も握って自身の頬に持って行ってスリスリなんかしない。なにそれ可愛い。


 だから問題は、俺がいつこの2人に対して告白するかなんだが………今思えばあの勇者、なかなか凄いことしてたんだな。初対面の女口説いて、そのまま宿にお持ち帰りも確定だろ?


 やば……あいつ、色んな意味でやばかったけどまた一つやばいのが増えたわ。


「そういえば、ですけど……」


「ん?」


「あの………勇者が私達に対して復讐……とか考えてたりしないでしょうか?」


「あぁ……あのクズ勇者だったら有り得そうね……無理やり私たちを取り戻そうとしてくるかも……」


「……いや、それはないだろう」


 俺は、奴からどうやって追放されるか考えるために、奴をよく見ていたから分かる。理解したくはないが………分かる。


「あいつは曲がりなりにも勇者だからな。勇者になるための儀式も突破してるし、聖剣にも認められている」


 あいつはクズでファッキン色欲勇者で、本性の周りにイケメンの外面を被っているだけのクソ野郎だが………あいつの正義の心だけは本物だ。それだけは言える。悔しいけど。


「勇者は単なる職業じゃない。何時、いかなる時も民の希望であり、国の守護者だ。あいつ自身の正義である『女は必ず守るが、そのついでに国も守る』という信念は変わりはしない……だから、ルーナ達が心配するような事態はない」


 まぁ?あいつ自身クズだから、俺たちから土下座させるまでが復讐だー!とか言ってそうだけど。


 ……よし、絶対土下座しねぇ。あいつが世界救ったとしても絶対に土下座なんかしねぇ。


 そんなことを言ったせいか、アリスとルーナがありえないようなものを見つめる目で俺の事を見つめてきた。


「………なんだよ」


「……いえ、その……意外だ、と思って」


「ティルファさんが、あの勇者のことをそんなにも評価していたなんて……」


「評価じゃない。単なる事実だ」


 俺があいつを評価?そんな身体が寒くなるようなこと言うの辞めて?ちょっと吐きそうになってくるから。


「ま、結論を言ったらあいつは本性がどれだけクズでファッキンで腐っていようが勇者は勇者だ」


 だから、俺たちに関わらないところでしっかりと勇者やっててください。ディルクロッドにはお抱え勇者が二人いるので二度と来なくて結構です。


 ………はぁ。あいつ、なんであんなに正義の心は本物なのにまともじゃないんだよ……。


 とか思っていたら、馬が嘶く音が聞こえ馬車が急停止しする。そのせいで眠気が覚めた俺は、ルーナとアリスに武装するように指示をしてから御者台へ行くとーーーーさっきの光景になっていたということだ。


「………この道は安全だったんじゃないのか?」


「……その筈なんですけど」


 馬車が毎日のように行き来している街道は、国が安全を管理するために騎士団が毎日盗賊や魔物が居ないかどうかの点検をしているはずなんだがな……一体どこから湧いて出てきやがった?


 しかも、盗賊にしては何やら武器やらなんやらがそこそこいい品物を持っているような気がする。太陽に反射している鉄の輝きが鈍ではないと分かる。


「ティルファ!」


「ティルファさん!」


 そして、中から完全武装したルーナとアリスが出てくる。それを見た盗賊はヒュ~と唇を鳴らす。


「ははっ!、なかなかの上物が揃ってるじゃねぇか!」


 ………何?


「おい野郎ども!気が変わった……女は傷つけるなとの事だったが……男は皆殺しで、女に傷をつけなければ好き放題やっていいぜ!」


「「「「「ヒャッハー!!!」」」」」


 ふーん………なるほどぉ…………そっかそっか……。


「おい」


 俺は御者さんの肩に手を置いてから馬車を飛び降りる。


「ちょ!?お客さん!?危ないですよ!?」


「テメェら………誰の女に手を出そうと思ってる?」


 決めた。こいつら全員情報を吐くだけ吐かせてから地獄送りだこの野郎。


「全員、もう陽の光を浴びることはないと思えクズ野郎ども」


 裁きの時間だ。俺がそう呟くと、まるで俺を祝福するかのように天からの光が俺を照らし始めた。




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週間総合2位ですって!本当にありがとうございます!こんなん何番煎じなんだよとか思ってるだろうけどありがとうございます!

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